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星詠みのリアン  作者: 雨月 玲
第二部 失われた神殿
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第十一話 氷界巨神



 神殿全体が激しく震えていた。

 氷柱の残骸が次々と崩れ落ちる。

 その中心で、第六の星核は黒い霧に包まれたまま宙に浮いていた。

 そして。

 その前に立つ白銀の巨人。

 氷界巨神。

 全高五十メートルを超える神話級の存在だった。

『排除を開始する』

 低い機械的な声が響く。

 赤い瞳が神殿内の全員を見渡した。

 リアン。

 アルト。

 エリシア。

 ノア。

 サラ。

 ヴァルド。

 そしてルシアたち。

 敵味方の区別なく。

 全員へ向けられていた。

「つまり」

 サラが短剣を構える。

「全員まとめて消すってことね」

 返事の代わりに。

 巨神が右腕を持ち上げた。


 次の瞬間。

 絶対零度の嵐が放たれた。

「伏せろ!」

 ヴァルドが叫ぶ。

 黒い斬撃が放たれる。

 吹雪を切り裂く。

 だが完全には防げない。

 氷の嵐が神殿を飲み込んだ。

 轟音。

 凍結。

 床も壁も一瞬で氷に覆われる。

「きゃあっ!」

 エリシアが吹き飛ばされた。

「エリシア!」

 リアンが結界を展開する。

 蒼い光が皆を守る。

 しかし結界表面が凍り始めた。

「うそ……」

 結界そのものを凍らせている。

 桁違いの力だ。


 ルシアも驚いていた。

「おかしい」

「何が?」

 リアンが叫ぶ。

「本来の氷界巨神はこんな状態ではない」

 ルシアの紅い瞳が細くなる。

「暴走している」

 その言葉と同時に。

 第六の星核から黒い霧が溢れ出した。

 終焉の力。

 星核が侵食されていたのだ。

 ノアが青ざめる。

「まさか!」

「終焉の力が守護者まで汚染している!」


 巨神の拳が振り下ろされる。

 神殿が崩壊した。

 巨大な氷柱が落下する。

 アルトがリアンを庇う。

「危ねぇ!」

 剣で氷柱を弾く。

 だが次の瞬間。

 さらに巨大な氷塊が降ってきた。

 避けられない。

 そう思った時だった。

 白い閃光が走る。

 氷塊が真っ二つになった。

 ルシアだった。

 白銀の剣を構えている。

「今は戦っている場合じゃない」

 リアンを見る。

「共闘しましょう」

 アルトが眉をひそめる。

「信用できるか?」

「できなくても」

 ルシアが巨神を見る。

「死ねば終わりです」

 反論できなかった。


 ヴァルドが前へ出る。

 黒剣を構えた。

「継承者」

 リアンへ視線を向ける。

「第六の星核を浄化しろ」

「でもどうやって!」

「俺たちが足止めする」

 その瞬間。

 ヴァルドが飛び出した。

 黒い閃光。

 巨神の膝へ斬撃が叩き込まれる。

 轟音。

 巨大な氷が砕け散った。

 だが。

 巨神は止まらない。

 むしろ怒りを増したようだった。


 ルシアも動く。

 白銀の剣から光が放たれる。

 幾重もの魔法陣。

 神聖な力。

「封印術式展開」

 巨大な鎖が現れる。

 巨神の腕へ巻き付いた。

 動きが鈍る。

 サラが笑った。

「やっと分かりやすい敵ね!」

 巨神の身体を駆け上がる。

 氷を足場に跳ぶ。

 短剣が光った。

 次々と弱点を切り裂く。


 エリシアも精霊術を解放した。

「風よ!」

 巨大な旋風が発生する。

 吹雪を押し戻す。

 ノアも補助魔法を重ねる。

「リアンさん!」

「今です!」


 全員が戦っている。

 敵だった者まで。

 リアンはその光景を見つめた。

 そして気付く。

 今は敵味方ではない。

 世界を守るために戦っている。

 それだけだ。

「お願い」

 リアンは第六の星核を見る。

 黒い霧。

 苦しそうな光。

「助けさせて」

 五つの星核が共鳴した。

 蒼い輝き。

 夜空のような美しい光。

 神殿全体が青く染まる。

 巨神が咆哮した。

 終焉の力が抵抗する。

 しかし。

 リアンは止まらない。

「星よ!」

 五つの星が空へ昇る。

 そして。

 第六の星核へ一直線に飛んだ。


 轟音。

 閃光。

 神殿を埋め尽くす蒼い光。

 巨神の身体から黒い霧が剥がれていく。

 赤かった瞳が白く変わる。

 巨大な身体がゆっくり動きを止めた。

 静寂。

 やがて。

 巨神は膝をついた。

『継承者』

 今度の声は穏やかだった。

『ありがとう』

 リアンは目を見開いた。

 巨神の胸部が開く。

 そこから。

 蒼く輝く結晶が姿を現した。

 第六の星核。

 ついに。

 最後の一つ手前の星核が継承者の前へ現れたのである。

第十一話了

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