第三話 天空の魔導士
天空への階段を駆け上がる。
一段。
また一段。
果てしなく続くように思えた。
しかしリアンは足を止めなかった。
第四の星核。
仲間たち。
そして神殿を襲う闇帝国。
全てが頭の中を巡っていた。
「待ってて……!」
やがて階段の終点が見えた。
そこは雲の上だった。
巨大な円形広場。
周囲は青空に囲まれている。
遥か下には雲海。
まるで世界の頂上だった。
そして広場の中心には。
蒼く輝く巨大な水晶。
第四の星核。
間違いなかった。
しかし。
その前に一人の男が立っていた。
「ようこそ」
銀髪。
細身の身体。
黒いローブ。
レオスだった。
「また会いましたね」
リアンは警戒しながら立ち止まる。
「何が目的なの?」
レオスは笑った。
「目的?」
面白そうに首を傾げる。
「もちろん星核ですよ」
「嘘」
リアンは即座に言った。
レオスの笑みが僅かに止まる。
「第三の星核の時もそうだった」
「あなたは星核を奪うより、何かを試していた」
レオスは数秒黙った。
そして拍手した。
「鋭い」
その目が細くなる。
「さすが継承者」
「でも、それ以上はまだ教えられません」
リアンは杖を構える。
「なら止める!」
「でしょうね」
レオスが指を鳴らした。
空間に紫色の魔法陣が現れる。
数十。
数百。
広場全体を埋め尽くす。
リアンの表情が変わった。
「こんな数……!」
「私は剣士ではありません」
レオスが微笑む。
「魔導士ですから」
魔法陣が一斉に輝く。
次の瞬間。
光の槍が雨のように降り注いだ。
リアンは結界を展開した。
轟音。
衝撃。
結界表面に無数の亀裂が走る。
「くっ……!」
重い。
圧倒的な火力だった。
レオスは歩きながら魔法を放ち続ける。
「不思議だと思いませんか?」
「何が!」
リアンは光槍を放つ。
だがレオスの障壁に弾かれる。
「皇帝陛下は何故あなたを殺さないのか」
リアンの動きが一瞬止まる。
その隙をレオスは見逃さない。
紫の雷が走る。
リアンは回避するが肩をかすめた。
「っ!」
焼けるような痛み。
レオスは淡々と続ける。
「ヴァルド将軍も」
「私も」
「あなたを何度も見逃している」
確かにそうだった。
何度もチャンスはあった。
それなのに。
帝国は本気で仕留めようとしない。
「なぜだと思います?」
レオスが問いかける。
リアンには答えられなかった。
答えなど分からない。
「知りたいなら」
レオスの魔力が膨れ上がる。
「もっと強くなりなさい」
広場全体が紫色に染まった。
同じ頃。
神殿の別区画。
アルトは巨大な石像と戦っていた。
「これで何体目だ!」
剣を振るう。
石像の腕が砕け散る。
だが次の石像が立ち上がる。
「冗談だろ!」
しかしその直後。
緑色の旋風が吹き荒れた。
エリシアだった。
「助けに来たわ!」
「遅い!」
「感謝がない!」
二人は背中合わせになる。
そこへノアも走ってきた。
「リアンさんが上にいます!」
「分かってる!」
アルトが剣を構える。
視線は天空の光へ向いている。
「行くぞ!」
一方。
天空広場。
リアンは膝をついていた。
息が荒い。
魔力も減っている。
レオスは無傷だった。
強い。
ヴァルドとは違う恐ろしさがある。
知識と魔法だけで圧倒してくる。
「限界ですか?」
レオスが問いかける。
リアンは立ち上がる。
「まだ……」
「ほう?」
「まだ終わってない」
左手の三つの星が輝き始めた。
第一の星核。
第二の星核。
第三の星核。
三つの光が共鳴する。
そして。
第四の星核も呼応するように輝いた。
レオスの表情が初めて変わる。
「それは……」
星核の光が空を満たす。
神々しい蒼光。
まるで天空そのものがリアンへ力を貸しているようだった。
リアンは静かに手を伸ばす。
「私は知らない」
光が集まる。
「世界の真実も」
さらに強くなる。
「皇帝の目的も」
第四の星核が震える。
「でも」
リアンの蒼い瞳が真っ直ぐレオスを見据えた。
「みんなを傷付けるなら止める!」
光が弾ける。
そして第四の星核が、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。
継承者を選ぶように。
その輝きは、これまでで最も強かった。
第三話了




