第十五話 旅の仲間たち
地下神殿から地上へ戻った時には、朝日が昇り始めていた。
ルグランの街を黄金色の光が照らしている。
長い夜だった。
第三の星核。
終焉の門。
星喰い。
そして皇帝ゼルファード。
あまりにも多くの出来事があった。
リアンは街を見下ろす丘の上で立ち止まった。
左手を見る。
三つの星。
継承者の紋章は確かに変化していた。
「本当に手に入れたんだね」
エリシアが隣へ来る。
リアンは静かに頷いた。
「うん」
「でも、なんだか嬉しそうじゃない」
図星だった。
リアンは少し苦笑する。
「分からなくなっちゃった」
「何が?」
「敵が」
朝焼けを見つめながら呟く。
「ゼルファードは世界を滅ぼそうとしていると思ってた」
「でも違う気がする」
エリシアも真面目な顔になる。
実際、地下神殿での出来事を見た者なら誰でもそう思うはずだった。
皇帝はリアンを助けた。
星喰いを倒した。
そして星核を破壊するどころか守ろうとしていた。
敵とは思えない行動だった。
「だからって信用はできないわ」
「うん」
リアンも同意する。
真実はまだ見えていない。
だが確かなのは。
世界が思ったよりずっと複雑だということだった。
その日の昼。
ノアの研究室。
四人は机を囲んでいた。
大量の資料が積まれている。
ノアは昨夜からほとんど寝ていないらしい。
目の下に隈ができている。
「休んだら?」
リアンが言う。
「無理です」
即答だった。
ノアは興奮した顔で羊皮紙を広げる。
「第三の星核を得たことで、新しい記録が解読できたんですよ!」
「聞いてない」
アルトが呟く。
「聞いてください!」
ノアが力強く言った。
そして地図を指差す。
そこに新たな光が浮かんでいた。
「第四の星核です」
全員の表情が引き締まる。
「どこ?」
リアンが尋ねる。
ノアは地図の北方を指した。
「天空都市ルミナス」
「空に浮かぶ都市?」
エリシアが驚く。
「伝説じゃないの?」
「実在します」
ノアは断言した。
「ただし誰も到達したことがありません」
「なるほど」
アルトが腕を組む。
「嫌な予感しかしないな」
「私も」
「私も」
リアンとエリシアが同時に頷いた。
その時だった。
研究室の窓が突然開いた。
風が吹き込む。
何かが飛び込んできた。
「うわっ!?」
ノアが椅子ごと転ぶ。
机の上へ降り立ったのは一羽の鳥だった。
銀色の羽を持つ美しい鳥。
普通ではない。
身体が淡く発光している。
「精霊鳥?」
エリシアが目を見開く。
鳥はリアンの前へ歩く。
そして一枚の結晶片を落とした。
それはアストリアの力を感じる結晶だった。
リアンが拾い上げる。
すると光が広がった。
星竜アストリアの姿が現れる。
『継承者よ』
「アストリア!」
『第三の星核を得たことを確認した』
黄金の瞳が仲間たちを見る。
『だが急げ』
その声はいつになく重かった。
『終焉の動きが加速している』
「終焉?」
『世界の均衡が崩れ始めた』
リアンの胸がざわつく。
アストリアは続けた。
『そして闇帝国も本格的に動く』
『次に現れる敵は今までとは違う』
光が揺らぐ。
『天空都市ルミナスを目指せ』
『そこに第四の星核が眠る』
それだけ告げると幻影は消えた。
部屋に静寂が戻る。
しばらく誰も口を開かなかった。
やがてアルトが立ち上がる。
「行くか」
その一言。
リアンは笑った。
「そうだね」
エリシアも杖を肩に担ぐ。
「大冒険になってきたわね」
「最初から大冒険だったと思うけど」
ノアが言う。
全員が笑った。
旅に出た時は二人だった。
今は四人。
仲間が増えた。
信頼できる仲間たちがいる。
だから前へ進める。
リアンは窓の外を見る。
空の遥か彼方。
見えない場所に天空都市ルミナスがある。
そして第四の星核。
新たな真実。
新たな敵。
新たな出会い。
物語はまだ始まったばかりだった。
リアンは静かに拳を握る。
「みんな」
三人が振り返る。
「行こう」
迷いはなかった。
「七つの星核を探しに」
仲間たちは力強く頷いた。
こうして。
蒼き星の継承者リアン・セレスティアと仲間たちの旅は、新たな舞台へ向けて進み始める。
世界の運命を変える戦いは、まだ序章に過ぎなかった。
第十五話了
第一部 完
(第二部 失われた神殿 へ続く)




