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素人マエストロ!  作者: 海街真衣
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21/22

怒り

どうも皆さんおはこんばんにちは。

海街真衣です!

突然寒気が押し寄せてきましたねぇ…。

マフラーと手袋が手放せません(笑)

「ふわぁ…ねむ…」

珍しく寝坊した。

いつもは5時に起きるのだが、今日は6時だ。

1週間が終わり、また1日練習がはじまる。

妙に体が重い。

正直部活には行きたくない。

「はぁー…」

ここ最近部活は、ヤバい。

ヤバいとしか言いようがない。

部員の雰囲気も実力も。

いつも雰囲気はどんよりしていて、気分がいいものではない。

その中でも、やる気のある人は少なからず見受けられるが。

「はぁ…嫌だな…」

だらだらと支度をすませ、家を出た。


朝のミーティングを終え、しばらく椅子の上でぼーっとしていた。

午前中は合奏がないから、少し寝ようとしたそのとき。

「いい加減にしてくださいよっ!」

怒声が響いた。

(なんだ…?)

「まぁ、きっと何とかしてくれるよな。」

そう呟き、少しばかり眠りについた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先輩たちの鋭い目付きが刺さる。

痛い。

「なに?佳奈子。」

「おい小原、それは流石にやめとけって…」

「村上は黙ってて…!」

私たちは1年生。

トロンボーンパート1年の小原佳奈子。

ホルンパート1年の村上誠。

私は3年生が引退してから、先輩達の怠けに嫌気が差していた。

今までは我慢していたが、もう耐えられない。

村上も巻き込む形になってしまったけど、村上の先輩もいるからそれはそれでいいと思った。

「そろそろ、真面目に練習してくれませんか!」

トロンボーンパートの先輩、志村 なつ先輩とホルンパートの先輩、紅音 萌先輩がバカにしたような目でこちらを見据える。

「え、真面目にやってますけど。ね、萌?」

「うん。何言ってんの。小原さん。」

小馬鹿にしたような口調が、余計に私をイライラさせた。

「おい小原、もうこの辺に…」

気弱な村上の制止を振り切って、今までの不満をぶちまけた。

「鴨先輩と芦田先輩が用あって抜けているのをいいことに!実力もないくせに先輩風ふかすのはやめてください!」

先輩たちの堪忍袋がぷつん、と切れた音がした。

「…あんたさぁ、誰に口聞いてんの?先輩だよ?ウチら。せ、ん、ぱ、い。」

「…」

こう言われたら俯くしかできない。

「ほんっとこういうしゃしゃってくる奴無理。」

「それな。」

「あとさ、あとさ」

2人が私に対してぐちぐちと理不尽な悪口を言い立ててきた。

そのあいだ、唇を噛み締めながら下を向いていた。

たかだか1年遅く生まれただけで、私の言い分は耳にも入れてくれない。

むしろそれ以上に罵詈雑言を浴びせてくる。

自分の不甲斐なさが悔しくて、涙がぽたぽたと床に落ちた。

「はっ!?なに泣いてんの?」

「マジキショいんだけど。小学生はもう終わってますよ〜?」

きゃははっ!と耳障りな笑いが私の頭を貫く。

その時。

ガラガラ。

入ってきたのはトロンボーンパートのもう一人の先輩、鴨 裕太先輩と、ホルンパートの先輩、芦田 鈴羽先輩だった。

2人の先輩の顔を見た瞬間、萌先輩となつ先輩は教室からそそくさと出ていった。

「…お、おい。小原、大丈夫か?」

私はつい、村上に抱きついてしまった。

「怖かったよぉ…!!」

「お、お前唇血まみれじゃないか!待ってろ、止めてやるから…」

ティッシュが無かったのか、そのまま指で切れたところを抑えてくれた。

「わりぃな。来たねぇ指で。」

「大丈夫だよ…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

数分前の事件からほんの少しあと。

「あの…小原?まさか俺のこと絞め殺そうとしてる?」

小原はずっと俺の胸元に顔を押しつけ、渾身の力で胸を圧迫しに来ている。

「…もう少しお願い…」

身長も僕と同じくらいで、常に勝気だった小原がこんな様子だと、こっちも調子が狂いそうだった。

こんな時に言うのもあれだが、可愛い。

ふと目線をあげると、その先に鴨先輩と鈴羽先輩が真顔で仁王立ちしていた。

「鈴羽先輩…鴨先輩…」

2人はいつも気まぐれで僕達を振り回すが、いざという時は誰よりも頼りになる。

まさに今がその時だった。

「とりあえず、何があったか聞かせてくれる?」

鈴羽先輩の大人っぽい声が耳を包む。

僕はめそめそ泣く小原に絞められながら、事のいきさつを話した。

「そうかぁ…」

今まで口を開かなかった鴨先輩が鈴羽先輩に何か耳打ちした。


「ん!おっけい。よしっ。2人とも音楽室で待ってて。」

「は、はい。」

僕は困惑しながら、先輩を残して小原と音楽室へ向かった。


普段、音楽室で練習しているパーカッションパートに心配そうな目で見られながら、ちょこんと2人で座っていた。

「お前、かっこよかったなぁ。」

「…そんなことないよ。」

「お前はそう思ってるだろうけど、俺は真似出来ないよ。」

「へへっ…」

照れくさそうに小原が少し笑った。

しばらくすると、部員達が音楽室にぞろぞろ入ってきた。

「よし。じゃあパートごとに並んで。」

仕切っていたのは幹部ではなく、鴨先輩だった。

僕にしがみついている小原に驚きながら、並んでいた。

「皆に、話したいことがあるんだ。」

鴨先輩は、さっき起きたことを包み隠さず、すべてを話した。

紅音先輩も志村先輩も、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

鴨先輩はそれに気にもとめず、話を続けた。

「関係ない話に聞こえるかもしれないけど、このままじゃ部活をする意味が無いと思う。」

このひと言で音楽室の空気が張り詰めた。

「僕達は今このままだったら、新人戦で金をとれるかも分からないよ。

3年生仮引退してからずっと雰囲気は悪かったし。

しかも今日それが表向きに出てきてこうなったんだよ。こんな状態で楽器を吹いても楽しくない!」

周りを見たら、ほとんど全員が俯いていた。

それぞれに思い当たることがあったのだと思う。

もちろん僕にも思い当たる節はある。

「これからのことをそれぞれが考えるために、今日の部活はここで終わりにしようと思う。」

これにはみんながざわついた。

「そ、そんなことしていいの…?」

不安げに、副部長の矢島先輩が聞いた。

「今日の事は僕と鈴羽が責任を取るから、気にしないで。」

「うん。わかった…」

申し訳なさそうな顔をして、また俯いた。

「という訳で解散。挨拶しなくていいから、各々速やかに帰ってね。小原と村上は残ってて。」

そう言い捨てて鈴羽先輩と一緒に準備室へ入っていった。

ほかの人はお葬式のような雰囲気で楽器を片付け、あっという間に帰ってしまった。

小原はまだ僕にしがみついている。

「大丈夫。僕がいるから。」

窓の外を見たら、土砂降りの雨が窓に打ち付けていた。

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