怒り
どうも皆さんおはこんばんにちは。
海街真衣です!
突然寒気が押し寄せてきましたねぇ…。
マフラーと手袋が手放せません(笑)
「ふわぁ…ねむ…」
珍しく寝坊した。
いつもは5時に起きるのだが、今日は6時だ。
1週間が終わり、また1日練習がはじまる。
妙に体が重い。
正直部活には行きたくない。
「はぁー…」
ここ最近部活は、ヤバい。
ヤバいとしか言いようがない。
部員の雰囲気も実力も。
いつも雰囲気はどんよりしていて、気分がいいものではない。
その中でも、やる気のある人は少なからず見受けられるが。
「はぁ…嫌だな…」
だらだらと支度をすませ、家を出た。
朝のミーティングを終え、しばらく椅子の上でぼーっとしていた。
午前中は合奏がないから、少し寝ようとしたそのとき。
「いい加減にしてくださいよっ!」
怒声が響いた。
(なんだ…?)
「まぁ、きっと何とかしてくれるよな。」
そう呟き、少しばかり眠りについた。
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先輩たちの鋭い目付きが刺さる。
痛い。
「なに?佳奈子。」
「おい小原、それは流石にやめとけって…」
「村上は黙ってて…!」
私たちは1年生。
トロンボーンパート1年の小原佳奈子。
ホルンパート1年の村上誠。
私は3年生が引退してから、先輩達の怠けに嫌気が差していた。
今までは我慢していたが、もう耐えられない。
村上も巻き込む形になってしまったけど、村上の先輩もいるからそれはそれでいいと思った。
「そろそろ、真面目に練習してくれませんか!」
トロンボーンパートの先輩、志村 なつ先輩とホルンパートの先輩、紅音 萌先輩がバカにしたような目でこちらを見据える。
「え、真面目にやってますけど。ね、萌?」
「うん。何言ってんの。小原さん。」
小馬鹿にしたような口調が、余計に私をイライラさせた。
「おい小原、もうこの辺に…」
気弱な村上の制止を振り切って、今までの不満をぶちまけた。
「鴨先輩と芦田先輩が用あって抜けているのをいいことに!実力もないくせに先輩風ふかすのはやめてください!」
先輩たちの堪忍袋がぷつん、と切れた音がした。
「…あんたさぁ、誰に口聞いてんの?先輩だよ?ウチら。せ、ん、ぱ、い。」
「…」
こう言われたら俯くしかできない。
「ほんっとこういうしゃしゃってくる奴無理。」
「それな。」
「あとさ、あとさ」
2人が私に対してぐちぐちと理不尽な悪口を言い立ててきた。
そのあいだ、唇を噛み締めながら下を向いていた。
たかだか1年遅く生まれただけで、私の言い分は耳にも入れてくれない。
むしろそれ以上に罵詈雑言を浴びせてくる。
自分の不甲斐なさが悔しくて、涙がぽたぽたと床に落ちた。
「はっ!?なに泣いてんの?」
「マジキショいんだけど。小学生はもう終わってますよ〜?」
きゃははっ!と耳障りな笑いが私の頭を貫く。
その時。
ガラガラ。
入ってきたのはトロンボーンパートのもう一人の先輩、鴨 裕太先輩と、ホルンパートの先輩、芦田 鈴羽先輩だった。
2人の先輩の顔を見た瞬間、萌先輩となつ先輩は教室からそそくさと出ていった。
「…お、おい。小原、大丈夫か?」
私はつい、村上に抱きついてしまった。
「怖かったよぉ…!!」
「お、お前唇血まみれじゃないか!待ってろ、止めてやるから…」
ティッシュが無かったのか、そのまま指で切れたところを抑えてくれた。
「わりぃな。来たねぇ指で。」
「大丈夫だよ…」
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数分前の事件からほんの少しあと。
「あの…小原?まさか俺のこと絞め殺そうとしてる?」
小原はずっと俺の胸元に顔を押しつけ、渾身の力で胸を圧迫しに来ている。
「…もう少しお願い…」
身長も僕と同じくらいで、常に勝気だった小原がこんな様子だと、こっちも調子が狂いそうだった。
こんな時に言うのもあれだが、可愛い。
ふと目線をあげると、その先に鴨先輩と鈴羽先輩が真顔で仁王立ちしていた。
「鈴羽先輩…鴨先輩…」
2人はいつも気まぐれで僕達を振り回すが、いざという時は誰よりも頼りになる。
まさに今がその時だった。
「とりあえず、何があったか聞かせてくれる?」
鈴羽先輩の大人っぽい声が耳を包む。
僕はめそめそ泣く小原に絞められながら、事のいきさつを話した。
「そうかぁ…」
今まで口を開かなかった鴨先輩が鈴羽先輩に何か耳打ちした。
「ん!おっけい。よしっ。2人とも音楽室で待ってて。」
「は、はい。」
僕は困惑しながら、先輩を残して小原と音楽室へ向かった。
普段、音楽室で練習しているパーカッションパートに心配そうな目で見られながら、ちょこんと2人で座っていた。
「お前、かっこよかったなぁ。」
「…そんなことないよ。」
「お前はそう思ってるだろうけど、俺は真似出来ないよ。」
「へへっ…」
照れくさそうに小原が少し笑った。
しばらくすると、部員達が音楽室にぞろぞろ入ってきた。
「よし。じゃあパートごとに並んで。」
仕切っていたのは幹部ではなく、鴨先輩だった。
僕にしがみついている小原に驚きながら、並んでいた。
「皆に、話したいことがあるんだ。」
鴨先輩は、さっき起きたことを包み隠さず、すべてを話した。
紅音先輩も志村先輩も、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
鴨先輩はそれに気にもとめず、話を続けた。
「関係ない話に聞こえるかもしれないけど、このままじゃ部活をする意味が無いと思う。」
このひと言で音楽室の空気が張り詰めた。
「僕達は今このままだったら、新人戦で金をとれるかも分からないよ。
3年生仮引退してからずっと雰囲気は悪かったし。
しかも今日それが表向きに出てきてこうなったんだよ。こんな状態で楽器を吹いても楽しくない!」
周りを見たら、ほとんど全員が俯いていた。
それぞれに思い当たることがあったのだと思う。
もちろん僕にも思い当たる節はある。
「これからのことをそれぞれが考えるために、今日の部活はここで終わりにしようと思う。」
これにはみんながざわついた。
「そ、そんなことしていいの…?」
不安げに、副部長の矢島先輩が聞いた。
「今日の事は僕と鈴羽が責任を取るから、気にしないで。」
「うん。わかった…」
申し訳なさそうな顔をして、また俯いた。
「という訳で解散。挨拶しなくていいから、各々速やかに帰ってね。小原と村上は残ってて。」
そう言い捨てて鈴羽先輩と一緒に準備室へ入っていった。
ほかの人はお葬式のような雰囲気で楽器を片付け、あっという間に帰ってしまった。
小原はまだ僕にしがみついている。
「大丈夫。僕がいるから。」
窓の外を見たら、土砂降りの雨が窓に打ち付けていた。




