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素人マエストロ!  作者: 海街真衣
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17/22

それぞれの舞台

どうもおはこんばんにちは!

海街 真衣です!

皆さんテスト期間の頃ではないでしょうか?

私は赤点回避で精一杯です(笑)

沙奈と2人で名古屋を回っていたら、気付けば時計は6時を回っていた。

「おぉ、もうこんな時間かー。沙奈といると時間が経つのが早いなぁ。」

「うん…そうだね…」

ぱっと顔を見ると、何やら沙奈は深く思いつめた表情をしていた。

「沙奈?どうしたの?」

「あ、あのさ!」

ポニーテールをゆさっと揺らして沙奈がこちらに振り向いた。

「明日、金賞とったらお願いしたいことがあるの!聞いてくれる?」

「え…?う、うん!もちろん!」

沙奈の顔がぱぁっと輝いた。

「約束ねっ!明日がんばろ!」

お願いごと、何なんだろう。

「うん!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

翌日。

(結局、昨日のはなんだったんだろう…)

ぼーっと涼を叩き起しながらずっと考えていた。

「痛っ、ちょっと、痛いっ!ゆーや!」

「あ!ごめんね!」

「まったくーそんなグーで殴るなよなぁ…」

(まぁ、考えても仕方ないか…)

海山は2017年の吹奏楽コンクールの大トリを飾る。

名だたる吹奏楽部の演奏を初めから聴きたいのはやまやまだが、チケットの都合上、それと自分たちの調整に時間を当てることにした。

ホテルと海山吹部以外のお客さんのご好意で、朝6時という早い時間から音出しをしてもいいということになった。

立花先生曰く、ホテルのお客さん一人一人に挨拶しに回ったとか回ってないとか。

割と世間体を気にする先生だから、多分夜通し回ったのだろう。

…そっちの方が迷惑だろうな。


ミーティング。

僕は前に立っているから、みんなの顔がよく見えるけど、今日ほど顔が強ばっている日はなかった。

「いよいよ今日だね…。僕達は先生や先輩、いろんな人の想いを背負ってここにいる。最後は僕達次第だよ、全力で楽しもう!」

(((はいっ!)))

「じゃあ沙奈!」

「はーい!っと…んとねー?3年生は今日で仮引退だね!3月4日まではお別れになる!悔い残さないように、今日は妥協なしで吹こう!」

(((はいっ!)))

「りょーう!」

「朝からうるさいなぁ…。はい。えーっと。本番が終わったら後悔するよ。絶対。」

みんながざわついた。

「でも、後悔はどんなに上手くいってもするものだから。いい後悔しよう。」

みんながにやっと笑って頷いた。

「あ、あと本番終わったら祐也朝の分殴らせろ。」

みんながどっと笑った。

情けないかもしれないが、僕ら幹部は3人揃っていないと何も出来ない。

でも3人揃っていれば、どこの幹部にも負けないと自負する。

今日が終わったら、しばらくこの2人とは会えない。

再び出会った時は、吹奏楽部に入れるのもわずか。この2人と会うのも数える程度。

涼も言ってたよな。

いい後悔しよう。

最後の最後まで。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いやぁー。最後なんだなー。

弓道部に入ろうとしたけど、綾加先輩に無理やり引っ張られて来たんだっけな。

ウェルカム演奏の時のフルートにベタ惚れして、フルート頑張ったんだったね。

ここまで来たんだよね。

「おい沙奈、何泣いてんの?」

苦笑いしながら涼が話しかけてきた。

「はれっ?私、なんでないてるのぉ?」

「知るかよ。」

「えへへっ!ごめん!」

1年の頃、私ずーっとオロオロしてたっけ。

何回も何回も涼に怒られたよなー。

その度祐也に慰められて…

私の音楽が私の3年間だ!

よしっ。

私の「音楽」、聴かせてやる!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ついにここまで来ちゃったか。

「あ!いた!」

「ねぇー!りょーう!」

「お、花菜、奈津子、どした?」

「ほら!腕出して!」

「ん?うわっ!くすぐった…」

腕を見たら、(FIGHT SAX!)と書かれていた。

つたない字だが、ここまでの思いが肌越しに伝わってきた。

俺はつい頬が緩んでしまった。

「あっ!字が汚いからって笑ったなー!?」

「そんなんじゃないよ!」

「ほんとかぁー?」

「花菜、涼と付き合っちゃえばー?仲いいんだし。」

「あぁー!もう!本番前なのに奈津子はー!」

ほっぺたをぷくーっと膨らませて怒る花菜をみて笑ってしまった。

あぁ、楽しい。

立花が来てからか、こんなにこいつらといるのが楽しくなったのは。

たかだか数ヶ月でどこまで変わったんだろうな。俺。

「よっし。お前らかますぞ!」

((おおっ!))

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「平凡」が「音楽」に溢れた。

なんでもない、ただ淡々と授業を進めるだけだったはずの俺。

家には申し訳程度のゲーム機。

今はどうだろう。

頭の中はいつでも部員のことだらけ。

家は楽譜やらCDやらで埋め尽くされた。

たったの6ヶ月。

家にいるとムズムズして、早く音楽室に行きたいと思うようになった。

彼らは不思議だ。

音楽のことを何も知らない人が来ても受け入れて今こうして同じ釜の飯をつついてる。

彼らの熱意が俺に移り、ありとあらゆる人と御縁を繋げた。

すっかり忘れていたが、今日をもって3年生は仮引退だ。

定期演奏会が最後にあるから仮がつくのだが、ほとんど引退したも同じだ。

ここまで来れたのは一概に3年生のお陰だ。

1、2年生で挑む新人戦は、それこそ俺の力が試される。

俺も、後輩も3年生から巣立つ。

(それよりも、今が大事だな。)

ホテルでの練習を終え、お昼をとったあと遂に高校吹奏楽の頂上、名古屋国際会議場へ向かった。


「うぉぉ…でかい…」

調べていたとはいえ、実物はでかかった。

周りには坂江高校や、聖菜女子高校など高校吹奏楽の代名詞となるような高校があちこちにいた。

何より、吹奏楽ファンの方々が数え切れないくらいいた。

全国大会のチケットは抽選で決まる。

下手したら、有名アーティストのチケット並の価値にもなる。

俺も初めて聴く高校ばかりだから、内心ワクワクしていた。

午後の部が始まった。

自由曲は昨年海山が演奏した「トスカ」だ。

(な…!!)

ぞわぞわっと鳥肌がたった。

音の厚み、音程、歌い心。

プロとまではいかないが、学生が演奏しているとは思えない。

(素晴らしすぎる…)

しばらく呆然と聴き入っていた。

あっという間に海山もチューニング、舞台袖準備の時間になった。

俺の心臓はそろそろ爆発しそうだ。

あの舞台に立つのか…。

まだ指揮棒を握って6ヶ月の素人が…。

チューニングも終え、みんなの目線が俺に来る。

あの時とは違う、優しい目線。

「今日が、いろんな節目だな。3年生はそれぞれの道を決めに、1、2年生は新しいステージに踏み出す。お互いの門出を祝うために、必ずこの舞台、成功させよう!」

(((はいっ!)))

「行くぞぉー!うみやまぁー!!!」

(((おおおーっ!)))


舞台に上がった。

まだ指揮台からのみんなは数える程しか見ていない。

でも今まで見てきた中で最高にいい顔だ。

さぁ、やろう。

俺たちの音楽を。

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