全国に行きたいか
どうもおはこんばんにちは。
海街真衣です!
そろそろ体育祭シーズンですかね?
雨、降らないといいですねぇ
「だから、紗奈先輩のことが嫌いなんですよっ!」
誰かがこっちに走ってきた。
(あれは…渡辺 瑠奈さん…?)
ソプラノパートでフルートを吹いている2年生だ。
さな先輩が嫌い…?
さなってあの紗奈のことか?
階段を登り着ると、廊下の奥の方でへたりこんでいる女の子がいた。
どうしたんだろうと声をかけようとして、気付いた。
あの紗奈だった。
「おい…紗奈?大丈夫か?」
振り返った紗奈は、涙で顔がぐしゃぐしゃだった。
俺の顔を見るや否や抱きついてきた。
「せんせぇ〜!」
「うわっ!どうしたんだ、らしくない!」
「わたしぃっ、嫌われちゃったっ。」
しゃっくりをしながら泣きじゃくっている紗奈をみて、俺は驚いた。
いつも快活でみんなを引っ張っていた紗奈。
そんな強いひとでも、泣く時はある。
いろいろと、溜め込んでいるのだろう。
「おいで。」
話の核心に入りたいのは山々だが、まずは彼女の悩みを聞くことにした。
準備室に入って30分。紗奈はずっと泣いていた。
俺はひたすら黙って見ていた。
彼女は常に元気で部員のモチベーションをあげてくれるムードメーカーだ。、
涙とは無縁のように思えた彼女が、今俺の目の前で迷子の子供のように泣きじゃくっている。
何を言えばいいのか、俺には分からなかった。
しばらく経って、ようやく泣き止んだ。
「大丈夫か?」
「ぐすっ…うん。」
ようやく話そうとした時、準備室にどんよりした空気を漂わせながら祐也が入ってきた。
流石に泣いている女子をみせるわけにはいかないと、慌てて俺は入口で祐也を止め、要件を聞いた。
「どうした?」
「あの…2、3年が揉めてしまって…。」
さっきの事の続きだろうか。
「おう。それで?」
「みんなが帰ってしまいました…」
俺は頭がクラクラした。
みんなが帰った?嘘だろ。今いないってことだろ?
とりあえず冷静になろう。
考えろ。考えろ俺。
よし。
「とりあえず1年を帰そう。祐也、頼む。」
祐也が頷いて廊下へ走っていった。
しばらく2人で黙っていた。
話そうにも何を聞けばいいのかもわからず、ただ時間が進んでいった。
しばらくして、祐也が戻ってきた。
とりあえず紗奈にあったことを簡潔に告げた。
「一体、何があったんだ?」
「それが…」
2年生の3年生への不満の爆発、だそうだ。
3年生は、1人1人が濃い性格を持っている。
もちろんそれは長所なのだが、一方でその性格が空回りし、誰かを嫌な思いにさせているのも事実。
今回は紗奈だけでなく、2、3学年全体での問題になっていたそうだ。
おまけに両者とも怒りのあまり、無断で帰ってしまったとか。
その上、帰ってしまった人たちを戻すためにほかの人もどこかへ行ってしまったらしい。
今、学校にいる吹奏楽部は祐也と紗奈だけだ。
「紗奈、なんであの時瑠奈が紗奈のことを嫌いっていったんだ?」
「それは…」
嗚咽を堪えつつも、話してくれた。
紗奈は男子以上に気が強い子だ。
普通ならば後に引ける副部長という役職を彼女は買って出てくれた。
沢本先生がこの部を去ることも上乗せして、全国の舞台へまた登ることへの執念も誰よりも強い。
しかしコンクールが始まり、数多くの本番をこなしながらみんなを引っ張っていく中で、後輩にきつく当たってしまったり、自分の意見が通らないとイライラし始めたりしていたそうだ。
パート内でもよく後輩を理不尽に叱ってしまったらしい。
それが、瑠奈やほかの2年生には嫌に見えたそうだ。
瑠奈を含め、ほかの人だって疲弊している。
なのに、なぜ紗奈だけ疲れたオーラを出しているのか。
瑠奈がこれを愚痴として同学年の子達にこぼし、どうせならほかの不満も直接言ってしまおうと、今こういう状況になっている。
話を聞き終えたあと、俺はどうするか少し悩んでから決めた。
「よし、今日はお前らも帰れ。」
ふたりがきょとんとした顔でこちらを見た。
「だからー、帰っていいよって。」
俺は苦笑しながら言った。
ふたりが不思議そうな顔をして帰っていくのを見送って、俺は1人、音楽室で、普段この時間ならここで合奏をしているはずなのに、空っぽで無音の部屋に1人座っていた。
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「ねぇ…」
「うん?」
「なんで私のこと送ってくれるの?祐也の家反対なのに。」
「ん、まぁ送りたいからだよ。」
「なにそれ、意味わかんない。」
私はふふっと笑った。
やっぱ祐也はカッコイイし、優しいし、身長高いし………。
あ、私祐也のこと好きだ。
「どうしたの?黙って。」
「私…」
「祐也のことが好き…」
「ん?なんか言った?」
「いやぁ!なんでもないよ!?」
「そっかぁー。」
少し静かになったところで、祐也が口を開いた。
「みんなが、また仲良くなれるといいねぇ。紗奈も含めて。」
「う…そうだね…」
私か嫌そうに言ったら突然祐也が笑い出した。
「なっなに!?」
「紗奈にも弱いところはあるんだねぇ?」
「そっ…それはあるよ。」
「いいんだよ。お互い支えあってこそ、今はいないけど、涼だっているし。辛い時は僕らも頼ってよ。」
「うん…」
涙が出そうなのをこらえて、私と祐也は帰路へついた。
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翌日、俺は1年を除く部員を音楽室に集め、指示を放った。
「今9時だから…お昼の12時までにはお互いどこを直して欲しいのか、話し合いをしてこい。」
2、3年は返事せずに、一階の視聴覚室へ向かった。
昨日、様々な選択肢から俺はこれを選んだ。
俺が怒るのは簡単なことだ。でもそれだけでは部内のほころびは治らない。
お互い面と向かって話す方が、よっぽど効果があると思った。
それに全国へ行くのなら、どうしてもこの二つの学年の力が必要不可欠だ。
なんとしてでも仲直りして欲しかった。
俺は昨日のように、空っぽの音楽室で一人座ってみんなを待った。
しばらく待っていると、視聴覚室の方から、「絶対全国行くぞ!」
(((オーっ!)))
と聞こえてきた。
上手くいったんだろう。
そして戻ってきた。
みんながいつもの定位置に座った。
「お前ら、よく聞けよ。」
みんなの息を呑む音が聞こえた。
「話し合いを始めて終わったのが11時。俺はここで2時間待った。
2時間の間、ここは無音でなんの温かみもない。
普段なら音楽に溢れているはずなのに。みんながいないと、この部屋は寂しい空間なんだ。お前らがいないと、吹奏楽部は成り立たない。」
幾人のすすり泣きの声が聞こえる。
顔を見回したらみんなが涙をこぼしていた。
気付いたら、俺も泣いていた。
「お前らがいなかったら、俺はいったい誰に指揮を振ればいいんだ!
確かに1年生はいる!でもな、お前らがいなかったら、ここまでくることも叶わなかったぞ!」
みんなのすすり泣きがきこえた。
待たせていた1年も呼んだ。
「1年、入ってきてくれ。」
外から聞いていたのか、1年生も涙をこぼしていた。
俺は、息を思いっきり吸った。
「お前ら!」
(((はいっ!)))
「全国に行きたいか!」
(((はいっ!)))
「まだ嘘だ!全国に行きたいか!」
(((行きたいです!)))
「よし!じゃあ行こう!」
(((はいっっ!)))
かくして俺史上最大の困難を乗り切り、支部大会へとトップギアで練習していった。
そして当日。
年内中に新作を投稿しようと思います!
お楽しみに!




