折り返し
どうもおはこんばんにちは!
海街真衣です!
最近は涼しいですねー。ジメジメが嫌ですけど。
高校生は文化祭の方も進んでいるのでしょうか?
息抜きにどうぞよんでください。
「なかなかやるじゃないか。屋上の合鍵を作るなんてな。」
涼がこちらを見た。
「なんだよ…。」
「まぁそんなことはいい。少し話そう。」
「野球応援の練習はいいのかよ。」
「俺がいようといなかろうと、あいつらはちゃんとやるのを知ってるだろう?」
そう言うと、涼は不敵な笑みを浮かべた。
「そうだな。お前は人のことをろくに見ないようなでくの棒未満だもんな。」
こいつ…性格悪いな。
「あぁ、そのことなんだが。」
俺は、さっき花菜と奈津子に伝えたことを話した。
「あの時は、俺の先入観だけでこの先のことを決めてしまった。…ある人から話を聞くまでは、お前がなぜ怒ったかも分からなかったよ。」
ふん、と涼は鼻を鳴らした。
「なるほどな。つまりアンタは、俺に改心しましたごめんなさいってことを伝えに来たわけだ?心変わりの早い大人だな。」
「そういう訳じゃない。お前には頼みがあってここまで探し出したんだ。」
「…なんだよ。」
「お前は、花菜と今までずっと一緒に過ごしてきたよな。花菜の性格、突然のセクションが変わるかもしれない危機、あの子にとってはとてつもなく厳しいだろう。それ故に、お前は俺に怒れたんだろう。」
「…」
「でもさ、サックスパートが、花菜がどんな状況になろうと、お前は新しい仲間と共に支え、支えられての関係を作らなければいけないんじゃないか?」
「…」
寝てんのか?と横を見たら、泣いていた。
それがどんな涙かは分からなかったが、これ以上何か言わなくても大丈夫だと思った。
「お前の『仲間達』は、お前しか出せないテナーサックスの音を待っているぞ。」
俺は屋上から去った。
しばらく準備室で指揮の練習をしていると、テナーサックスの音が聞こえてきた。
海山吹部は専用の練習場所がないから、学校の教室を貸していただいている。
それ故に準備室からは、いろんな楽器の音が聞こえるのだ。
テナーサックスの音が目立って聞こえてきたのは、初めてだった。
いてもたってもいられなくなり、俺はサックスパートが練習している金工室へ走った。
金工室には笑顔を浮かべている涼を囲んで和やかにパート練習をしていた。
彼はもともと有り余る才能があるから、これからよりサックスパートは力強くなるだろう。
しばらく金工室を眺めていたら、涼に気付かれた。
「おいおい、我らが顧問が美少女2人を覗き見か?」
((えっ!?))
女子2人に本気で嫌そうな顔をされた。
「それは人聞きが悪いんじゃないか?」
俺は、苦笑しながら中に入った。
「どうだ?2人は。」
「おう。2人ともいい奴だよ。どんな事があっても2人を支えてやる。」
気のせいか、女子2人が頬を赤らめた気がした。
ここでも一波乱かな?と思ってしまった俺を殴りたい。
「そうか、良かったじゃないか。これから新しいサックスパートを作っていけよ。」
そんなこんなで、サックスパート事件は幕を閉じた。
それからは野球部と共に、快進撃を進めていった。
野球部はより深く練習をし、吹部はそれを見守りつつ、練習する。
その練習が実り、遂に海山野球部は、甲子園出場を果たした。
そこからは、県大会との練習を並行して練習するようになった。
正直キツかったが、みんなより歳が上の俺でもやりがいを感じられた。
野球応援の演奏は、相手の吹奏楽部との弾幕合戦だ。
どれだけ選手達を鼓舞できるような演奏ができるか、吹部にも重要な役割がある。
危なっかしい所はあったが、皆の努力が実り、甲子園準決勝まで勝ち進んだ。
相手は超強豪、桜咲栄光高校だ。
吹奏楽はもちろん、野球でも全国に名を馳せている。
毎年多くの入学希望者がくるそうだ。
この2校の試合は、野球を知らないような人でも、手に汗握るような試合だった。
一進一退のギリギリの勝負。
どちらが勝ってもおかしくなかった。
しかし、惜しくも一点差で海山は敗れた。
敗れてしまったものの、史上最高の大健闘だと野球部の子は涙ながらに言ってくれた。
かつてない壮絶な試合だったからか、海山と桜咲は学校としての交流が深まった。
こうして熱い野球応援は終わり、県大会へ向けて本格的に練習が始まった。
本番までは3日しかなかったが、以前よりもより指導力が上がった涼のおかげで、3日の中に1週間分の練習を詰め込んだような密度だった。
県大会当日。
今年は異例の事態で県大会が8月末に変更になった。
おかげで比較的心持ちには余裕があった。
今回海山は全国15校中2番目だった。
初めの方だと、お客さんの入りも少なく、何より空気が冷えているのでホールに音が響きにくい。
後半の学校と比べたら、コンディションが悪い。
部員はもう慣れきっていることなのか、表情一つ変えずに演奏準備を進めている。
そして早くも本番。
いつもの事ながら俺はガチガチに緊張していたが、以前よりもみんなからの視線が温かく感じた。
まだ終わった訳では無いが、夏休み中に起きたことがフラッシュバックし、涙が出そうになった。
(今日みんなの顔を見て指揮を振ろう。)
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「次に、支部大会への代表校、3校を発表させていただきます。プログラム順に、発表させていただきます。」
「2番。海山高等学校。」
シーン…
「7番。北西高等学校。」
キャーー!!!
「14番。坂江高等学校。」
シーン…
こうして手堅く支部大会へ上がった。
今日一番の驚きは、全国常連校はあまり騒がないんだなーと思った。
優れた成績で選ばれているのだから、喜びを露わにしてもいいと思うけどな。
しかし、ここからが本番だ。
海山が敗れた支部大会。
全国への道は途方もなく長く、辛い。
だが、ようやく折り返しへ来たのだ。
俺もそれなりには指揮を振れるようになった。
もっともっと練習しないと。
「先生ー。」
「ん?どうした涼。」
「一応あんたは指揮を振る立場なわけでしょ?俺がサポートするかるさ、あんたが合奏指導してみたら?」
「ああー。確かにそうだな。明日やってみるか。」
もともと吹奏楽の指導法は勉強していたので試してみたかった。
(よし。明日が楽しみだな。)
翌日。
大体俺よりもみんなの方が部活を始める時間は早い。
俺は音楽室への階段を上った。
今日はやけに騒がしいな…。
突然、怒鳴り声が聞こえた。
「だから、紗奈先輩は嫌いなんですよっ!」




