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素人マエストロ!  作者: 海街真衣
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11/22

美女と刺客と

おはこんばんにちは!海街真衣です!

またまた読んでいただき、ありがとうございます!

これからはなるべく安定して出せるよう、努力しますので、何卒よろしくおねがいします!

「ってことでよろしくー!」

「ああ…よろしく。」

とんでもないやつが来た。

転校生の加藤奈津子は、超強豪と名高い坂江高校のアルトサックス奏者だった。

彼女自身、海外のソロコンテストで賞を貰うような強者だ。

是非、海山のバンドでトップにしたい。

現在、海山のアルトのトップは荒木花菜が担当している。

しっかり者で、クール。

いわゆる、イケメン女子にというやつだ。

女子からものすごい人気を誇っているらしい。

ラブレターも届くとか、届かないとか。

実力そのものならば、加藤さんに引けをとることはないだろう。

しかし、問題がある。

彼女は、極度のあがり症なのだ。

ほんの少しでも緊張やプレッシャーを感じてしまうと、最大限のパフォーマンスが出来ないばかりか、体のどこかが震えてしまう。

そのためか、せっかく素晴らしい音色の持ち主なのに、ソロを吹いたことがないそうだ。

そんな子がお調子者の加藤さんと会ったらどうなるか、想像出来てしまう。

「まぁーでも…荒木さんはセカンドに降ろすかな…。」

これが吹奏楽部顧問の嫌なところだ。

いくら前からトップに着いていたとしても、実力でセクション、つまり奏者のポジションは変わる。

後輩からの下克上なんてざらにあるらしい。

その日の部活終わり、荒木さんを呼び出した。

「先生。何でしょうか。」

冷静でどこか魅力を感じる。

こりゃ女子にモテるよ。女子なのに。

「サックスを吹いている子で、転校生が吹部に入るんだけど、その子をファーストにしたいんだけど…」

「え…ということは、私はセカンドになると?」

「まぁ…そうなるのかな。」

「そ、そんな…」

「あ、まって!」

ピシャン。

そのまま準備室を出ていってしまった。

しばらくすると、吹野くんが猛然と準備室に入ってきた。

「おい…花菜になにした!大泣きしながら出てきたぞ!」

戸惑った。普段の吹野くんではない。

とりあえず、理由を話した。

「何勝手に決めてんだよ!そいつの音色も聞いたことないくせに、勝手に決めてんじゃねぇ!」

「加藤奈津子さんは、ソロにしてもアンサンブルにしても実績がある。いくら音楽に疎い俺でも、加藤さんをファーストにするよ。

「何言ってんだよ!音を聞いたこともないくせに!素人がガタガタ抜かしてんじゃねぇ!」

さすがにカッときた。

「悪いが、荒木さんはあがり症だ。奏者のスキルではともかく、メンタル面で荒木さんを上回っている。」

「でも…」

俺は吹野くんの言葉をさえぎった。

「君はテナーサックス。同じパートなら、わかるだろう?まだ吹奏楽部の顧問になって一年もないような俺でも、彼女のことについては分かっている!」

「っ…このクソ顧問!!!」

ドス黒いオーラを放ちながら出ていってしまった。

「…言いすぎたかな…」

部員と激突するのは吹奏楽部ではあるあるなのか…?

どうすればいいんだ…。

とりあえず、俺は年下の大先輩に相談することにした。

「あぁ…もしもし。夜分遅くにすみません。」

電話相手はふふっと笑った。

「ずいぶん早いご連絡ですね。」

「どーもすみません。相談する方が沢本先生しかいなくって。」

「そうですね。それで、どうされたんですか?」

吹野くんのこと、加藤さんのこと。

ついさっき起きたことを、すべて話した。

「なるほど…」

しばらく無言。

沢本先生は、一つ一つのことに妥協をしない。

どんなに小さなことでも悩む。

自分の納得いく答えが出るまで。

時間が許す限り、ベストを尽くそうとする。

年下なのに頭が上がらない。

「そうですねぇ…涼が納得するような方法で、解決すればいいのでは?」

「というと?」

「涼は今の3年生達に強い思い入れがあります。今まで共に歩んで来た仲だからこそ、新しい人を認めたくないんだと思います。」

はっと、あの時の剣幕を思い出した。

「それに、立花先生も一方的ではありませんか?野球応援はかなりの曲数をこなしますし、県大会までは時間があるでしょう。いくらでも丸く収めるチャンスはありますよ。皆が納得のいく答えを、先生が出すんです。」

確かに、ついカッとしてしまったからな。

皆が納得いく方法…か。

「わかりました。ありがとうございます。」

「あぁ…あと立花先生。部員は下の名前で呼んだ方が良いですよ?家族よりも、長い時間を過ごすんですから、互いに思い合うことは大切です。」

「はぁ…やってみます。」

そう言うとふふっと笑った。

「頑張ってください。海山のマエストロは、あなたですよ。」

そうか…俺がマエストロ。

これからの海山は俺にかかっている。

沢本先生に礼を言い、電話を切ると、早速これからどうするかを考えながら家へ帰った。

翌日。

加藤さ…いやいや、奈津子さんが来た。

「来たよーっ!」

「ああ。よろしく。…奈津子さん。」

「あっはっはー!奈津子さんって炭酸ナトリウムじゃーん!奈津子でいーよ!さんいらない!」

すごい笑われた…顔が熱い。

いやいやまてよ。なんで奈津子さんで、炭酸ナトリウムなんだ?

朝のミーティング以降から、奈津子も海山吹部の部員となるので挨拶をさせた。

「初めまして。坂江高校から転校してきました。加藤奈津子です。宜しくお願いします。」

おい。さっきのテンションどこいった。

あれ…ふき…涼がいない。

後でどこにいるか聞いてみるか…。

「よーし。じゃあこれから、野球応援や県大会、多くの本番があるから、みんなでフォローしあってくれ。」

(((はいっ!)))

「えーそれと、今日から俺は君たちのことを下の名前で呼びます。」

(((…はいっ!?)))

ざわつき始めた。そりゃそうか。

「えーまぁ、そういう事だ!よろしく!あと花菜、ミーティング終わったら準備室に来てくれ。」

騒々しいミーティングが終わったところで、奈津子と花菜が入ってきた。

「えーとな。とりあえず握手でもどうだ。これから全国に向けて頑張るわけだし。」

「だね!よろしく!」

テンションが戻った奈津子が手を差し出した。

「よろしくおねがいちます。」

うん…緊張してる。

ここで俺は昨日考えたことを話すことにした。

「それでセクションの事なんだけど、野球応援で演奏する曲は全部で20曲にする。。10曲ずつ2人でセカンドとファーストで分けて欲しい。1、2年生はいつも通りで大丈夫。」

「分かりました。コンクールの方はどうしますか?」

案外淡々としている。平気なのかな?

よく見たら、震えてた。

やっぱり、ちゃんと考えて発言するべきだな。

主役はこの子達なんだから。

「コンクールのセクションに関しては、俺がサックスについて勉強する。だからファーストは、オーディションで決めるよ。2人とも頼れるから各セクションにどっちかが入っていてほしいし。オーディションについては、また連絡します。はい。練習!」

(((はい!)))

ずいぶん花菜はほっとした顔だったな。

ベストな回答を求めること。これほど大切なこととはおもわなかった。

ふたりが出てくると入れ違いで紗奈が入ってきた。

「ふーん…せんせーなんか雰囲気かわったねー。」

「お、そうか?」

「うん。もやしからにんじんになった!」

どうやら紗奈には、俺がもやしに見えたらしい。

「変なやつだな。紗奈は。」

「おかしくないもーん!ま、これからも期待してるぞ!我らが顧問!」

「おう。任せとけ。」

俺も馴染めたのかな。ここにいると自然と顔が緩む。

よし。涼を探しに行くか。

「なぁ真衣。涼を見なかったか?」

「えぇ、吹野先輩?みてませんよ?」

「そうか、ありがとう。」

どこにいるんだろう。

「祐也。涼を見なかったか?」

「あぁ…いつもの所にいると思いますよ。」

「ん?いつもの所?」

「あぁ…学校の屋上ですよ。何故か屋上の鍵持ってるんですよ。」

なんで持ってるんだよ…。

「おぉ。そうか、ありがとな。」

「はい!先生、変わりましたね。いい意味で。」

「おぉそうか?紗奈にも言われたんだよなー。」

「そうなんですか!でも沢本先生に似てきましたよ。雰囲気が。」

「お、そうか!あの先生は俺の師匠だからな。」

礼を言い、俺は屋上へ急いだ。

見てみたら、屋上の鍵は開けられており、覗いて見たら涼がいた。

「なかなかやるじゃないか。屋上の合鍵を作るなんてな。」


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