美女と刺客と
おはこんばんにちは!海街真衣です!
またまた読んでいただき、ありがとうございます!
これからはなるべく安定して出せるよう、努力しますので、何卒よろしくおねがいします!
「ってことでよろしくー!」
「ああ…よろしく。」
とんでもないやつが来た。
転校生の加藤奈津子は、超強豪と名高い坂江高校のアルトサックス奏者だった。
彼女自身、海外のソロコンテストで賞を貰うような強者だ。
是非、海山のバンドでトップにしたい。
現在、海山のアルトのトップは荒木花菜が担当している。
しっかり者で、クール。
いわゆる、イケメン女子にというやつだ。
女子からものすごい人気を誇っているらしい。
ラブレターも届くとか、届かないとか。
実力そのものならば、加藤さんに引けをとることはないだろう。
しかし、問題がある。
彼女は、極度のあがり症なのだ。
ほんの少しでも緊張やプレッシャーを感じてしまうと、最大限のパフォーマンスが出来ないばかりか、体のどこかが震えてしまう。
そのためか、せっかく素晴らしい音色の持ち主なのに、ソロを吹いたことがないそうだ。
そんな子がお調子者の加藤さんと会ったらどうなるか、想像出来てしまう。
「まぁーでも…荒木さんはセカンドに降ろすかな…。」
これが吹奏楽部顧問の嫌なところだ。
いくら前からトップに着いていたとしても、実力でセクション、つまり奏者のポジションは変わる。
後輩からの下克上なんてざらにあるらしい。
その日の部活終わり、荒木さんを呼び出した。
「先生。何でしょうか。」
冷静でどこか魅力を感じる。
こりゃ女子にモテるよ。女子なのに。
「サックスを吹いている子で、転校生が吹部に入るんだけど、その子をファーストにしたいんだけど…」
「え…ということは、私はセカンドになると?」
「まぁ…そうなるのかな。」
「そ、そんな…」
「あ、まって!」
ピシャン。
そのまま準備室を出ていってしまった。
しばらくすると、吹野くんが猛然と準備室に入ってきた。
「おい…花菜になにした!大泣きしながら出てきたぞ!」
戸惑った。普段の吹野くんではない。
とりあえず、理由を話した。
「何勝手に決めてんだよ!そいつの音色も聞いたことないくせに、勝手に決めてんじゃねぇ!」
「加藤奈津子さんは、ソロにしてもアンサンブルにしても実績がある。いくら音楽に疎い俺でも、加藤さんをファーストにするよ。
「何言ってんだよ!音を聞いたこともないくせに!素人がガタガタ抜かしてんじゃねぇ!」
さすがにカッときた。
「悪いが、荒木さんはあがり症だ。奏者のスキルではともかく、メンタル面で荒木さんを上回っている。」
「でも…」
俺は吹野くんの言葉をさえぎった。
「君はテナーサックス。同じパートなら、わかるだろう?まだ吹奏楽部の顧問になって一年もないような俺でも、彼女のことについては分かっている!」
「っ…このクソ顧問!!!」
ドス黒いオーラを放ちながら出ていってしまった。
「…言いすぎたかな…」
部員と激突するのは吹奏楽部ではあるあるなのか…?
どうすればいいんだ…。
とりあえず、俺は年下の大先輩に相談することにした。
「あぁ…もしもし。夜分遅くにすみません。」
電話相手はふふっと笑った。
「ずいぶん早いご連絡ですね。」
「どーもすみません。相談する方が沢本先生しかいなくって。」
「そうですね。それで、どうされたんですか?」
吹野くんのこと、加藤さんのこと。
ついさっき起きたことを、すべて話した。
「なるほど…」
しばらく無言。
沢本先生は、一つ一つのことに妥協をしない。
どんなに小さなことでも悩む。
自分の納得いく答えが出るまで。
時間が許す限り、ベストを尽くそうとする。
年下なのに頭が上がらない。
「そうですねぇ…涼が納得するような方法で、解決すればいいのでは?」
「というと?」
「涼は今の3年生達に強い思い入れがあります。今まで共に歩んで来た仲だからこそ、新しい人を認めたくないんだと思います。」
はっと、あの時の剣幕を思い出した。
「それに、立花先生も一方的ではありませんか?野球応援はかなりの曲数をこなしますし、県大会までは時間があるでしょう。いくらでも丸く収めるチャンスはありますよ。皆が納得のいく答えを、先生が出すんです。」
確かに、ついカッとしてしまったからな。
皆が納得いく方法…か。
「わかりました。ありがとうございます。」
「あぁ…あと立花先生。部員は下の名前で呼んだ方が良いですよ?家族よりも、長い時間を過ごすんですから、互いに思い合うことは大切です。」
「はぁ…やってみます。」
そう言うとふふっと笑った。
「頑張ってください。海山のマエストロは、あなたですよ。」
そうか…俺がマエストロ。
これからの海山は俺にかかっている。
沢本先生に礼を言い、電話を切ると、早速これからどうするかを考えながら家へ帰った。
翌日。
加藤さ…いやいや、奈津子さんが来た。
「来たよーっ!」
「ああ。よろしく。…奈津子さん。」
「あっはっはー!奈津子さんって炭酸ナトリウムじゃーん!奈津子でいーよ!さんいらない!」
すごい笑われた…顔が熱い。
いやいやまてよ。なんで奈津子さんで、炭酸ナトリウムなんだ?
朝のミーティング以降から、奈津子も海山吹部の部員となるので挨拶をさせた。
「初めまして。坂江高校から転校してきました。加藤奈津子です。宜しくお願いします。」
おい。さっきのテンションどこいった。
あれ…ふき…涼がいない。
後でどこにいるか聞いてみるか…。
「よーし。じゃあこれから、野球応援や県大会、多くの本番があるから、みんなでフォローしあってくれ。」
(((はいっ!)))
「えーそれと、今日から俺は君たちのことを下の名前で呼びます。」
(((…はいっ!?)))
ざわつき始めた。そりゃそうか。
「えーまぁ、そういう事だ!よろしく!あと花菜、ミーティング終わったら準備室に来てくれ。」
騒々しいミーティングが終わったところで、奈津子と花菜が入ってきた。
「えーとな。とりあえず握手でもどうだ。これから全国に向けて頑張るわけだし。」
「だね!よろしく!」
テンションが戻った奈津子が手を差し出した。
「よろしくおねがいちます。」
うん…緊張してる。
ここで俺は昨日考えたことを話すことにした。
「それでセクションの事なんだけど、野球応援で演奏する曲は全部で20曲にする。。10曲ずつ2人でセカンドとファーストで分けて欲しい。1、2年生はいつも通りで大丈夫。」
「分かりました。コンクールの方はどうしますか?」
案外淡々としている。平気なのかな?
よく見たら、震えてた。
やっぱり、ちゃんと考えて発言するべきだな。
主役はこの子達なんだから。
「コンクールのセクションに関しては、俺がサックスについて勉強する。だからファーストは、オーディションで決めるよ。2人とも頼れるから各セクションにどっちかが入っていてほしいし。オーディションについては、また連絡します。はい。練習!」
(((はい!)))
ずいぶん花菜はほっとした顔だったな。
ベストな回答を求めること。これほど大切なこととはおもわなかった。
ふたりが出てくると入れ違いで紗奈が入ってきた。
「ふーん…せんせーなんか雰囲気かわったねー。」
「お、そうか?」
「うん。もやしからにんじんになった!」
どうやら紗奈には、俺がもやしに見えたらしい。
「変なやつだな。紗奈は。」
「おかしくないもーん!ま、これからも期待してるぞ!我らが顧問!」
「おう。任せとけ。」
俺も馴染めたのかな。ここにいると自然と顔が緩む。
よし。涼を探しに行くか。
「なぁ真衣。涼を見なかったか?」
「えぇ、吹野先輩?みてませんよ?」
「そうか、ありがとう。」
どこにいるんだろう。
「祐也。涼を見なかったか?」
「あぁ…いつもの所にいると思いますよ。」
「ん?いつもの所?」
「あぁ…学校の屋上ですよ。何故か屋上の鍵持ってるんですよ。」
なんで持ってるんだよ…。
「おぉ。そうか、ありがとな。」
「はい!先生、変わりましたね。いい意味で。」
「おぉそうか?紗奈にも言われたんだよなー。」
「そうなんですか!でも沢本先生に似てきましたよ。雰囲気が。」
「お、そうか!あの先生は俺の師匠だからな。」
礼を言い、俺は屋上へ急いだ。
見てみたら、屋上の鍵は開けられており、覗いて見たら涼がいた。
「なかなかやるじゃないか。屋上の合鍵を作るなんてな。」




