予告状 7枚目 仕組まれたパーティ
「私、今度お城でやるパーティの招待状を貰ったの」
「ええ!?すごいじゃん」
「大チャンスじゃん!!未来の旦那を探さなきゃ!!」
教室内でクロエ達はエマの招待状の話にウキウキになっている。
そんな中ルーシーは頭を抱えていた。
怪盗126号がパーティに紛れ込んでエマを騙すかもしれない!!!でも私は平民だから参加できない!言っちゃダメというのもおかしいし、王家が主催のパーティを断るのもエマにとって体裁が悪くなるし、どうすればいいかと悩んでいた。
「いい男性と出会えるといいわね。そうでしょ?ルーシー」
「ウンソウダネ。デモ、ミョウニヤサシスギルオトコニハ、チュウイシテ」
「どうして片言?」
エマが取られちゃうと思って寂しくなってるの~?とルーシーはクロエ達にからかわれる。
「違うってば!ねぇ、皆って怪盗126号ってやつ知ってる?」
「126号って確か怪盗クラヴィスが出てくる前の怪盗じゃなかったっけ」
「そうよ!屋敷に侵入して獲物を盗むことは本命ではなく、民を苦しめる貴族や金持ちの罪を暴き出すために盗みをしている義賊!!どうしたのルーシー!貴方もファンになった!?」
クロエは仲間を見つけたようなキラキラした目でルーシーを見つめた。
「クロエの推しなんだ…」
「私一度彼に会ったことあるの!顔は見えなかったけれど、とてもいい声でシルエットはハンサムだったわ!!下々のために戦う男ってかっこよくない!?ああ、愛しの126号様~♥」
「私はクラヴィスのファンだから」
「エマ、クロエ!どっちも犯罪者だから!!(汗」
3人の話によると、怪盗126号は2年前に姿を忽然と消したそうだ。新聞にもよく載っていたらしい。
「(凄腕の怪盗だったのか…。なんで今怪盗業を再開したのだろう)」
「授業をはじめるぞー」
授業のベルがなり、教師が入ってきて話は止まり、解散となった。
126号の事は後回しにして、ルーシーは授業中も必死に悩んだが、エマが帰宅するまでパーティを止めるいい言い訳も作戦もを終ぞ思いつけなかった。
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「店長、今度王太子殿下が主催のパーティに参加するのですが…」
レイヴンがルーシーにエマと同じパーティの招待状を見せてきた。
「えっレイヴンも参加…いや貴族だからできるか。お願いレイヴン!私の友達も参加するらしくて、変な男がつかないよう見ててほしいの!!」
レイヴンに縋るようにルーシーは頼み込んだ。
「えと、店長も参加すればいいのでは?」
「え?」
「はい、私のパートナーとしてパーティにお誘いしようと思いまして」
ルーシーはパートナーに誘われるとは全く思っていなかったため、頭では処理ができず固まった。
「私、平民だよ?」
「実は店長が開発した防犯具のおかげで下町や商会区の窃盗件数が大幅に減った功績で王太子殿下がご招待したいと伺っています。」
「えっそんなことで呼ばれるの!?」
「そんなことではありません。はっきり言って爵位を頂いてもよい功績です」
レイヴンは下町の治安の現状をルーシーにわかりやすく説明した。
ルーシーは自分の家と、今まで親切にしてくれた人たちが安心して暮らせたらという気持ちで仕事をしていたため、そこまで大きい話だったとは思わずへーと目を丸くしていた。
「私がルーシー店長のパトロンという盾になりますから、他の貴族からやっかみはないでしょう。このパーティに便乗して店の宣伝、そのついでにご友人に悪い虫がつかないよう監視もすればいいのではないでしょうか」
「わかった!パーティーに参加する!……あ、ドレスってどこで買えばいいのかな。パーティっていつ?間に合うかな」
「パートナーに衣装を負担させる男はいません。こちらで準備していますよ」
レイヴンが大きな箱を開けるとそこにはきらびやかなドレスが入っていた。
靴も髪飾りも別の箱に丁寧に入れられている。
学校から帰宅して部屋の隅に積んでいた箱は何だろうと思っていたが、まさか自分用のドレスセットとは思ってもいなかった。
「これいくらなの…?経費で落ちる?」
「これは私からの日々の感謝ですよ。気にせず無償でお受け取りください」
キラキラした笑顔で答えるレイヴン。
レイヴンに促されてルーシーは試着してみたが、サイズはぴったり。
ルーシーはやばい男だ…と冷や汗が流れるのを感じながら、とりあえずありがたく使わせてもらうことにした。
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数週間後、王城のパーティ会場にて。
「ルーシー!貴方もパーティーに?」
入口でエマはルーシーを見つけて驚いた。
「私も招待されたんだ。エマ、こちらが私の店を助けてくれてるレイヴンさん。」
「あら、あなたは…」
「先日ぶりですエマ様。私はレイヴン・ノックス。ノックス伯爵家の者です。」
レイヴンはエマに丁寧に頭を下げた。
「あれ?顔見知りだった?」
「ルーシー店長、パーティの前にご挨拶しなければならない方がいますので、少しお待ちいただけますでしょうか。休憩室を準備しておりますので、後で飲み物も運ばせます」
「わかった」
レイヴンに案内され、城の一室に入った。
今までの貴族の屋敷よりもはるかに壁の装飾や絵画などが桁違いに豪華だった。
レイヴンはエマにまた一礼し、扉を閉めていった。
「たまに聞いていた助手さんってあの人だったんだ。…大丈夫な人なの?」
「家業丸ごと奪われそうって震える時はあるけど、とっても頼りになる人…」
「もし、ルーシーを嵌めようとしたなら私に言ってね。絶対助けてあげるから!」
エマはガッツポーズをしてみせた。
出会った当初の力なくおどおどしていた表情は今はなく、しっかりしたお姉さんの雰囲気を出しているエマ。
妹の後始末や、家の経営を手伝っているという。
継母のいびりがあるらしいが、笑顔ではねのけているらしい。
「たくましい女性に成長したなぁ…」
「お待たせしました。」
ノックオンがした後、レイヴンと共に知らない男性が入ってきた。
「こちらは王太子殿下がご紹介いただきました、今日のエマ様のパートナーとなります」
「えっ私の!?」
「大事なご令嬢を一人パーティで過ごさせるのは王家の汚名になります。護衛として扱ってくだされば」
栗色の髪の、身体ががっしりとした長身の男性がエマの前に跪いて挨拶をした。
「お初にお目にかかります。私は、侯爵家の長男クラウス・フレン。現在近衛騎士団第二部隊隊長をを任されております。」
「よっよろしくお願いいたしますわ…」
エマは手の甲にクラウスからキスを送られ真っ赤になっていた。
「(まさかこいつ…怪盗126号!?いやでもあいつより身長がはるかに高いな…)」
ルーシーはクラウスの靴を観察してシークレットブーツでないかと疑ったが、ブーツの構造的に底上げしてないように思える。
「そろそろ始まりますので、会場に向かいましょうか」
レイヴンに促され、エマと一緒に会場に向かうこととなった。
会場のホールは豪華なシャンデリアが吊り下げられ、部屋を明るく照らしている。
「(火はついてないからあれは魔法で光らせているのか)」
ちらつきがない高度な照明魔法にルーシーは感心した。
「店長、王子に挨拶に行きましょう」
レイヴンはルーシーの腕を引いてリチャード王子の御前までエスコートした。
ルーシーはかつてないほどの緊張で手足が震え出し、よろよろとレイヴンについて行く。
「ココココノタビハオマネキイタダキアリリリガトウゴザイマス」
「やあ、ルーシー。私はこの国の第一王子リチャードだ。この度の功績、いずれは我が父から何か与えてくださるだろう。個人的に私からも褒美をやりたいのだが…そうだな、もっと人を雇って工場を建てたいなどあったら土地をわけてやってもいいぞ」
THE王子イメージと違わない格好良いスタイルとさわやかな笑顔にルーシーはあてられた。
「いぃいえ!ありがたい話です!!でもいきなり管理できなさそうなものはちょっと…」
「管理はレイヴンにしてもらえばいい。こいつは優秀だ」
「店長がお望みなら領地経営もお手伝いしますよ?」
そんな大きなことをしたいと思ってないルーシーは困惑した。
レイヴンも乗っからないでほしいと心の中で突っ込んだ。
「欲しいものがあればレイヴンに伝えるといい。」
「いえ、恐れ多く…。あ、レイヴンに何か褒美を上げてください!彼のおかげで沢山稼げているので!」
「君は謙虚だな!」
わははと楽しそうに笑うリチャード王子。
相手が王家の偉い人という威厳に慄いているのも理由の一つだが、ルーシーはこの男のペースにかき乱されていた。
「さて、長話は他の貴族たちのも失礼だ。今夜は王子様と出会う日だ。君も探してみるといい」
リチャード王子は笑って去っていった。
ルーシーは意味が分からずレイヴンの顔を見たが、私も何のことだかと困った顔をしていた。
「リチャード王子のどういうこと?」
「たぶんですが、ルーシー店長をこの国にとどめるため、貴族の誰かと結婚相手を探せじゃないかと…」
「ええ!?うーん。私は(大じいちゃんや両親みたいに)恋愛結婚がいいなぁ…」
リチャード王子はルーシーをかってくれたのだろう。
国としては優秀な人材を外に逃がしてしまうのはあってはならないこと。
そのうち見合いを押し付けてきそうでルーシーは怖くなった。
「貴方が最近話題の防犯店の店長さんなの!?ぜひ私の家もお願いしますわ!!」
「いいえ、私が先よ!」
「いえ、俺の家だろう!身分が低いものがしゃしゃり出るな」
王子との挨拶が終わったとたん、わっとルーシーとレイヴンの周りを貴族たちが取り囲み、予約を我先に取ろうと争い始めた。
店の宣伝はするつもりだったが、こんな一気に来られるとルーシーは対応ができない。
「レレレイヴン、ヘルプ」
「皆さま、落ち着いてください。パンフレットをお持ちしましたので、今一度お屋敷で検討され、欲しいものがありましたらお電話ください。」
レイヴンは手を叩くと、バトラー数人がパンフレットを大量に持ってきた。
レイヴンは一人一人に説明しながらパンフレットを手渡していく。
「ルーシー店長は新商品開発の種を得るために、皆様から困りごとや欲しいものを聞いて回ってください」
レイヴンに耳打ちされ、ルーシーは貴族たちに質問をしていった。
貴族たちはこれが欲しいあれが欲しいと次々と要望を出していき、ルーシーは次第に目が回っていった。
1時間後ようやく解放された時、エマたちはエマとクラウスはいつの間にか会場からいなくなっており、ルーシーは急いで探しに行こうとするが、エマはすぐに見つかった。
バルコニーで一人立っていたのだ。
「エマ、エマ?」
ルーシーは目の前で手を振るがエマは頬を赤らんだまま上の空で、しばらくルーシーの存在に気付かなかった。




