予告状 8枚目 闇のオークション
某日の深夜・王都の某所のオークション会場にて。
サーカス会場のようなきつい傾斜に、各スペースが設けられており、仮面をつけた参加者が豪華な椅子に座っている。
何処の席からも商品がよく見えるように会場は広く、照明もたくさん備え付けられている。
次々と出てくる商品に値段を競り、大盛り上がりする者、負けて悔しがる者が出てくる。
「さぁ、今日の最終商品で大目玉。人族には施せないマナを帯びたイヤリングだ!妖精の職人が作ったと考えられています!開始は100万リラから!」
スタッフがステージに持ってきたものは、大粒の宝石が惜しみなく施されたペアのイヤリング。
魔法エネルギーを鑑定する装置に設置され、マナがイヤリングを覆っているのが参加者にも理解できた。
「150万」
「230!」
「500!」
参加者が次々に値段を張り上げていく。
3000万に差し掛かった時、会場の空気が一変した。
「10億」
仮面をつけた一人の男が手を挙げた。
参加者もオークションの役員も驚きの金額に皆静まり返った。
「10億!10億!それ以上はありませんか!?」
ざわつく会場。
1分経ち、司会者が強くガベル(槌)を叩いた。
「10億で落札です!!おめでとうございます!!落札者様は裏手へどうぞ。」
落札者の男は係りの者に案内され、イヤリングと交換に持ってきたカバンをテーブルに置いて、カバンを開けた。
中には大量の札束。
このオークションのオーナーと思われる男と係りの人間が金を確認していく。
「本物ですね。確かに10億ありがとうございます。それではお休みください」
「!?」
落札者の男が振り向くとがたいのいい男が棍棒をもって振りかざしていた。
ごっと鈍い音が響いた後、どさりと落札者の男が地面に倒れた。
「金とイヤリングをすぐさま持ち出せ。」
「この男はどうしましょう」
「檻に閉じ込めておけ。警察を呼ばれたらたまらん」
オークションのオーナーと雇われた男たちは10億の金を見て笑いながら奥の部屋に入っていった。
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同日・数時間前の午前・魔法学校学校
「素敵な男性と出会ったの…」
キャーと騒ぎ出すクロエ達。
「どんな御方!?身長は?顔は?性格は!?」
クロエ達はエマに行きつく間もなく質問を浴びせた。
三人が幸せそうに話しているのに対し、ルーシーは絶望的な顔をしていた。
「(怪盗126号の計画が進んでしまっている気がする。このままではエマが危ない…)」
たった数時間の事でエマはクラウスに心を囚われてしまった。
怪盗が前世で言うホストのように女性をトークだけで気持ちよくし、ハートを掴むことができてもおかしくない。(大じいちゃんも爺さんなのに若い女性に人気だった)
怪盗126号は強敵なのかもしれない。
「(エマのためにも騎士団の隊長を調べ上げないと!)」
レイヴンが連れてきたのだから、レイヴンもクラウスの事をよく知っているだろう。
今日は花嫁衣裳の捜索でお休みしているから今度聞こうと忘れずにメモし、今日も授業に集中した。
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「あれ、親父。仕入れた鉄材は?」
学校から戻って、防犯具を作るための鉄などの材料を確認していたルーシーは、今日の朝に届く分がないことに気が付いた。
「まだ届いてねぇぞ?」
「ええー?なんで?」
「ああ、そうだ、なんか今日街に入るための検問所が閉鎖されてるって、飯食いに行ったとき商人がぼやいてたな。早朝にたどり着いて入るのに6時間。出るのは今日できないらしい」
「検問所で足止めされてるのか…。親父ちょっと見に行ってくるね」
「おう!」
店を養父に任せ、ルーシーは検問所がある下町の城壁へ向かった。
検問所にたどり着くと、先が見えないほどの行列があった。
ルーシーは店に材料を運んでくれる馴染みの商人を探そうとしたが、検問所の兵士に外に出るのはだめだ!と止められてしまった。
「出たいわけじゃなくて、今日店の材料届けてくれる人がどのあたりか知りたいの」
「だめだ!一人っ子街の外に出してはならぬと王家からの命令なのだ」
しっしとあしらわれ、ルーシーはとりあえずそこから離れた。
「(閉鎖なんてどこかで大事件が起きたのかな。脱獄とか…)」
それならいったん帰って家で大人しくするかとも思ったが、外で待っている馴染みの取引先の身の安全がないと悩んだ。
「暗くなったらこっそりご飯とか持って行ってあげよう」
太陽が地平線に隠れるにはまだ時間がかかる。
ルーシーは食料を買いに市場へ向かうと、途中の建物の陰で男たちが愚痴をこぼしていた。
「早朝のうちにずらかる予定だったのに、なんで足止めされなきゃならねえんだ」
「…まさか、オークションの開催日がばれていて、事前に閉鎖予定だったのか?」
「俺たちははめられたっていうのか!?」
「まあ落ち着け。1週間もすれば大商人や貴族たちからも不満が出て門を解放しなければなくなる。それまで各所で待機しておけ」
オークションとは何ぞやと事件のにおいをかいで、ルーシーは彼らの会話をさらに聞こうと思って一歩足を出したら、ちょうど寝ていた猫の尻尾を踏んでしまい、猫がギャアンと叫び飛び上がった。
男たちはルーシーの方を一斉に見た。
「…あのガキを捕まえろ」
男たちはルーシーの方に近づいてき、やばいと思ったルーシーは全速力でその場から逃げ出した。
怪盗業で鍛えている身のこなしで人込みでもすいすいと避けて走り続けるルーシーの姿に、男たちは困惑した。
「あのガキ逃げ足はえぇ!!」
「お前らは回り込め!」
もう少しで検問所…というところで、ルーシーは魔法の気配に気付いて上の方を見ると、屋上で男がこちらに向かって詠唱をしているの見つける。
とっさに避けようと身構えたが、避けると通行人の子供に当たると思い、通行人の子供を吹き飛ばしてわざと直撃し、勢いよく倒れてしまった。
人に向かって魔法を放つのは武闘大会か戦争下以外に許されてはいない。
ルーシーはやはり犯罪者かと読みは当たっていたと思うと同時に、こんな大勢の前で大胆に魔法を打ってくるとは思ってなかったため、拳を握り締めた。
「(足が痺れて動かない…!)」
「嬢ちゃん、悪いが話を聞かせてもらおうか」
「私は探してた猫をふんじゃっただけだよ!動物愛護で怒られると思ったの!!」
「じゃあ大人が叱ってやらないとな」
男はにやにやしながらルーシーの身体を持ち上げた。
逃れるために男の腕を思いっきりルーシーは嚙みついた。
「このやろっ!」
「ぐふっ」
ルーシーは吹き飛ばされ、壁に激突した。
「ちょっと痛い目に合わないと礼儀正しくできないか、ガキ」
追ってきた男の一人が剣を抜き、ルーシーにめがけて振り下ろした。
「ルーシー店長!!」
目を開けるとレイヴンがルーシーの前に庇うように切りかかろうとした男の剣を己の剣で受け止めていた。
レイヴンはマントを翻しながら華麗に剣で戦い始めた。
ルーシーに魔法を打った屋上の男も加勢しレイヴンを狙うが、彼の素早い身のこなしに暴漢たちは翻弄された。
圧倒的な力を見せつけるレイヴンが優勢かと思ったが、レイヴンは左肩の痛みが走り動きが一瞬鈍ると、悪漢はその隙を見逃さずレイヴンを切りつけた。
「レイヴン!!」
ルーシーはうずくまったレイヴンに駆け寄りたかったが、まだ足は動かない。
男がレイヴンに止めを刺そうとした時、遠くから馬車が走ってき、馬を走らせている男が叫んだ。
「ダン!警察に見つかっている!強行突破で街を出るぞ!!」
「ふん、嬢ちゃん命拾いしたな」
レイヴンを切りつけたダンと呼ばれた男とその他の仲間たちは馬車に飛び乗りその場から立ち去った。
ルーシーは動けるようになると急いでレイヴンに駆け寄り、状態を確認した。
彼は意識が朦朧としており、切られたところの肉が普通ではありえない色に変色していた。
「なにこれ毒…!?どうしよう」
治療魔法は高度な技術で、扱える人がとても少ないと授業を受けていた。
だからルーシーは治癒魔法など一つも使えなかった。
応急処置をして血が出るのを抑えるも、どんどんレイヴンの脈が弱くなっていき、ルーシーは必死に救助を呼んだ。
「お嬢ちゃん、お水使って!」
隠れて様子を見ていた女性が水をもってきてくれた。
ルーシーは患部を洗ってみるも、毒なのかを判断できず対処がこれ以上できなかった。
ルーシーは女性に硬貨を渡し、これで急いで医者を連れて来てと頼むと、去っていた暴漢たちの後を追った。
すべてはレイヴンを助けるために。
「そこの馬車止まれっ!うわああああ!!」
先ほどの男たちを乗せた馬車が検問所を攻撃し、無理やり突破して門を出ていく。
検問を待っていた人々が巻き込まれ怪我する者、荷物をぐちゃぐちゃにされて大惨事だった。
「レイヴンを傷つけて…許さない!」
ルーシーは城壁にたどり着くと、壁の上に登って馬車の逃げる方角を見た。
小さな鍵を取り出し、いつものロッドサイズに巨大化させ、銃を構えるポーズで逃げていく男たちの馬車を狙った。
「絶対に逃さない!ロックオン・シューティング!!」
鍵の先から光が集まりラインを描きながら馬車に飛んでいく。
「何か飛んでくるぞ!」
「大丈夫だ、こんな弱い魔法かき消せる!」
男が豪語した時と同時に、馬車の中のイヤリングが突然光り始め、男の魔法を消し去った。
「なっ」
「おい!早く防御魔法を――」
対応が間に合わず、馬車は大きな音を立てはじけ飛んだ。
ルーシーは飛んで、意識がまだ飛んでいなかったダンの襟首を引っ張ってレイヴンの容態について尋ねた。
「あんたに切り付けられたレイヴンの身体がおかしくなってる!解毒薬があるなら出して!」
「へっ、そんなのねぇよ。あれは妖精の呪いだ。人間には解けねえ。残念だったな」
ダンは魂が抜けたように意識がそこで落ちて、ルーシーが何度叩いても目覚めなかった。
ぼろぼろになった馬車と、気絶している馬ではもう逃げられないだろうと判断し、ルーシーは急いでレイヴンのところへ戻った。
まだ医者は着いてはいなく、レイヴンの容態が悪化していた。
「レイヴン死なないで。レイヴン!!」
この世界で魔法が使えるのに、大事な人の命を救えない無力感に絶望し、ルーシーは泣き叫んだ。
すると、ルーシーの泣き声に反応したかのように、壊れた馬車の中で、またイヤリングが輝きだし、光が飛び出した。
光はルーシーのいる方向に飛んできて、ルーシーを包むように周りを回る。
ルーシーが零した涙と光が衝突すると、それはレイヴンの身体に落ちて吸い込まれていき、どういうことだろうか、変色している部分が治っていく。
「う…」
「レイヴン!!」
ルーシーは目を覚ましたレイヴンを強く抱きしめた。
レイヴンは現状がわからず困惑している。
しばらくすると、リチャード王子が編成した騎士たちが到着してすぐ犯人たちを捕縛し、レイヴンの治療と検査のためにお城に運び込んでくれたのだった。




