予告状 2枚目 魔法学校に入学⁉
「店長、その客は止めた方がいいですよ。クレームが多いことで商人たちの中では有名です。」
「そうなの?」
「最初はに出て商品を手に入れた後大クレームを入れて裁判を起こすんです。腕利きの弁護士を雇って会社ごと乗っ取ったという前例があります」
「やば…」
ルーシーはレイヴンと共に送られてきた依頼書を確認して、納品スケジュールを話し合っていた。
レイヴンは貴族関連の情報を多く持っていて、いつもルーシーと店を守ってくれている。
ルーシーはそのことを感謝し、弟子として雇ってよかったとしみじみ思っていた。
「とりあえず今年のスケジュールは埋目ましたが…、結構空きがありますね。大丈夫ですか?」
「研究もしたいからあまり働きづめはしたくないな~。魔法石を組み込んだセキュリティ構築がもう少しでうまくいきそうなんだよね」
曾祖父の言葉の弱きを救い、強者に挑むということを実行するために事業研究は必須だが、ルーシーには怪盗業がある。
急な事件が起きてもすぐさま動けるようにはしておきたいという意向がある。
「そうですね。新商品開発も大事ですし、従業員も開発のルーシー店長、製造の父君、事務の私の三人だけですから今は無理しないでいきましょう。ルーシー店長、魔法商品の特許書類をあらかた準備しておきますので、魔法使用許可証見せていただきますか?」
「魔法使用許可証?何それ」
「えっ…」
レイヴンが信じられない目でルーシーを見ている。
「まさか店長…魔法学校を卒業されていない?その技術力で?」
「学校なんて貴族やお金持ちが行くところじゃない。魔法学校なんて庶民が入れるわけないわ。全部独学よ」
「しまった……」
レイヴンはテーブルに肘をつき頭を抱えた。
「商売するための許可証はあるよ!」
「それも必要なのですが、魔法商品は法律で厳しく管理されているのです。他国へ貴重な技術を流出させないためとかいろいろありますが、魔法使用許可証がないまま商品を販売すると極刑です。罰金1億リブ以上。最悪死刑です!」
「ししししし死刑!?」
許可証が必要だということを知らなかったルーシーはあまりの驚きに頭が真っ白になった。
「どどどどどどうしよう。もう魔法商品販売するって契約結んじゃってるよ!!」
「もう開発してしまっている商品は私が魔法処理していると書類変更すれば問題ありません。ですがこれから魔法処理を人前で実践しなければならないことが起きるとバレて信用が揺らぎます。私はルーシー店長の精密な魔法処理ができません」
開店1周年記念を待たずに閉業の危機。
ルーシーは想像して泡を吹いている。
レイヴンはルーシーを起こすように両肩をがしりと掴み言った。
「店長、今からでも遅くありません。魔法学校へ入学しましょう!!」
「えっ!?」
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貴族街にある荘厳で大きな建物を見上げ、ルーシーは新しく仕立てられた魔法学生の制服を着てあっけにとられていた。
ここは魔法学校の校門前。
レイヴンがあれよあれよと入学手続きを済ませて、連れていかれた会場で魔法を発動すると、試験官のどよめきがあったのが三日前。
無事入学許可がおりて、ルーシーは今日からここの生徒となった。
「皆、新しい生徒が編入してきた。もめごとは起こさないように、以上HLは終わりだ。」
ざわざわと生徒たちがルーシーを見て何か話している。
このクラスは商家の子供がメインで構成されている。
学校は出生と成績でクラス分けがされており、ルーシーのクラスは下流商家とごく少数の平民出身で魔法適性があってスポンサーに薦められて入った子供だ。
魔法を使える人材は貴重なので魔法が使える平民がいれば金持ちや貴族は教育を施し、将来的に己の下で働いてもらう投資を行う。
「貴女、推薦受けた平民ですって?なめた真似すると潰すわよ」
入学してそうそうルーシーは高そうなセンスを広げ口元を隠しているお嬢様からメンチを切られた。
あの家から依頼来ても無視しよ…。と心の中で決めていると、他のクラスメイトが主人公を慰めるように声をかけてきた。
「レイったら身分が下だからって見下して…。ルーシー?気にしなくていいからね。エマよ。よろしく」
「初めましてわたし、クロエ。宝石店の娘よ」
「私はローラよ。貴族御用達帽子屋の次女!よろしくね。わからないことあったら聞いて!エマが一番賢いよ」
ストレートロングの髪で、庇護欲を掻き立てるような可愛い垂れ目のエマ。
黒髪でマルセル・ウェーブにリボンをしていて、強気そうな釣り目のクロエ。
赤毛のポメラニアンのようなふわふわした髪でそばかすがある子がローラ。
三人の女の子が気さくにルーシーに握手の手を出してきた。
(いい子たちだ…。格安でお仕事引き受けよう)
ルーシーは順に手を取って握手した。
「この時期って珍しいわよね。最近魔法適性あるってわかったの?びっくりしたでしょ」
「えっと、そう。知り合いに魔法学校行って魔法許可証とっていっぱい商品開発しようってことで(魔法はもっと前から使えてたけど…)」
「あちゃ~もう就職先決まってるか~」
「普通平民が入学となったら決まっているでしょう」
「もしクビになったら私のところへ尋ねてみてね!宝石加工には魔法使いが必要で万年人手不足なの!」
ルーシーは自身が社長なのでクビになることはないが、気持ちは嬉しいと思い、笑顔でありがとうと返した。
ずっと研究と魔法訓練と仕事で友達を作ることをしてこなかったため、クラスメイトができたことにとても心が温かくなったのをルーシーは感じた。
初日の学校生活は新鮮さと和気あいあいとしたクラスメイトの会話でとても充実した。
放課後。
「私は馬車で帰るわ。また明日。」
クロエは家からの迎えの馬車に乗って去っていった。
「ルーシーは学校の乗合馬車だよね?私と一緒!案内するわ」
「ありがとう。…あれ?エマは徒歩なの?」
徒歩で校門を過ぎ去ろうとしてるエマを見かけて、ルーシーは声をかけた。
「ええ、いつも私は徒歩だから。さようなら、ルーシー」
そういって一人貴族街の方へ歩いて行った。
「あっちって貴族街よね?エマってどこかのメイドさん?」
「えっと、……あのね、ルーシー。エマは貴族のお嬢様なの。歴史のある侯爵家の長女よ」
「ええ!?」
驚いた。ルーシーのいるクラスは商家クラスだ。
成績が悪くとも貴族の一番下のクラスに入れられるとクラス分けの説明を聞いた。
なぜ侯爵家の令嬢があのクラスにいるのだろう。
「エマが前に話してくれたんだけれど、彼女お母様が亡くなってて、2年前に父親が再婚したんだって。でも新しい母親とうまくいってなくて、連れ子で妹となった子とも仲がよくないって…。」
ローラの説明に、前世で読んだシンデレラのような話だとルーシーは思った。
エマは嫌がらせで現在のクラスに入学させられたのかもしれない。
「早くいい相手を見つけて、家を出れればいいなと私は思ってる。あっ、このことは秘密よ!」
ローラは絶対にばらしてはいけないと慌ててルーシーに念を押した。
その後、中流階級街までの馬車を降り、ローラと別れてから、ルーシーは一人下町の家まで歩いて帰った。
夕日が落ちる空はどこかよどんでいて、これから嵐が起きる予感がした。




