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転生したらレベルアップが止まらない  作者: とま坊
幼少期編

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【第9話】適性鑑定 

異世界に転生してしまった元社畜の主人公が、特別な力を持ちながらも英雄や勇者を目指すことなく、平凡で穏やかな「村人B」としての人生を送ろうとする。

何気ない日常の中で経験値を獲得し、少しずつ成長していく主人公。 しかし、本人はあくまで平穏な生活を望んでいるようで……?

果たして彼は、望み通りののんびりした人生を送ることができるのでしょうか。

どうか、主人公、ミナモ・アステルの第二の人生を温かく見守っていただければ幸いです。


それでは、異世界で始まる彼の物語をお楽しみください!

―――適正鑑定当日になった。

いや、正しく言えばなってし(・)ま(・)っ(・)た(・)。


「ミナモー、準備は出来た?」


母さんの声が聞こえてくる。


「……出来てるよー」


出来れば今日という日が永遠に来なければよかった。

だがそんな願いが叶うわけない。

俺は小さく溜息をつき、母さんと一緒に家を出た。


村の広場にはすでに大勢の人が集まっていた。ダンマ、カミル、フォート、いつもの三人の姿もある。


「ミナモ!こっちこっち。」


ダンマが元気よく手を振っている。


「今日はどんな適性があるか、学校に入学出来るかわかるんだよね!楽しみだなぁー!」


「僕は剣士が良いなぁ…目指せ勇者だ!」


フォートもカミルも気合十分だ。


……皆随分楽しそうだなぁ。

俺はと言うとそんな三人を横目に、心の中でひっそりと祈っていた。


――頼む…。普通の結果であってくれ…

俺は勇者になりたいわけでも、特別な才能を持ちたいわけでもない。

俺は普通に暮らしたいだけなのだ。


「それでは、これより適性鑑定を始めます!」


広場の前方からよく通る声が響いた。

魔法使いだろうか…。

白いローブを纏った鑑定士が三人並んでおり、その中央には透明な球体が置かれている。


「この水晶に触れることで、皆さんの能力値、適性の有無を鑑定します。

落ち着いて順番に受けて下さい。」


鑑定士の説明に子供達がざわめいた。


しばらくして一人目の子供が水晶に手を置いた。

水晶は淡く光り、鑑定士の手元にある用紙へ結果が浮かび上がった。


「剣士適性有り!入学を許可する!」


「やったぁー!」


男の子が嬉しそうに飛び跳ねた。

続いて別の子供が鑑定を受ける。


「……。剣士、及び魔法使いの適性無し。」


泣き崩れる子供。

なるほど、この鑑定は正直で残酷な物だと改めて分かった。

鑑定は順調に進んでいく。

……この調子なら俺も問題なく終わるはずだ。(そうだよなぁ…?)


そしてダンマの順番がやって来た。


「えいっ!!!」


ダンマが水晶に手を置くと、柔らかな光が広がった。

鑑定士が結果を確認する。


「ふむふむ、これは俊敏性の値が高いですねぇ…

弓使いに非常に向いているかもしれません。

合格です。」


「やった!弓かぁ…そっかぁ!」


ダンマが嬉しそうに笑った。

次はフォート。


「魔法使いの適性有り!魔力はなかなかなもんです。合格!」


嬉しそうなフォート。

カミルは剣士適性を認められ飛び上がって喜んでいる。

皆、ちゃんと自分にあった適正が出てくる。

そう、鑑定というのはそういうものなのだ。

「特別」な才能があるのかどうかを調べるだけ。

なら…俺だって――。


「次ぃ!ミナモ・アステル君!」


「……はい。」


ついに来てしまった。

俺は出来るだけ自然な足取りで前に進み、

水晶の前に立った。


目立つな…目立つなよぉ…俺!

ただ水晶に手を置くだけだ。

難しい事は何もない。

俺はそっと、水晶に手を触れた。


その瞬間(とき)。


―――パァァァァ!


水晶がこれまで以上に誰よりも強く光り輝いた。


「……え?」


鑑定士の一人が目を見開く。

光はすぐに消えるかと思われたが、消えるどころかますます強くなっていく。


「な、何なんだ、この反応は!?」


中央にいる鑑定士が慌てて用紙を確認した。

そしてその表情が凍りつく。


「……待てよ」


「ど、どうでしたか?」


隣の鑑定士が用紙を覗き込む。

次の瞬間、その目が大きく見開かれた。


「こ、これは!?な、馬鹿な…」


周囲の大人達はざわつき始める。

俺は嫌な汗を流した。


おい、ちょっと待ってくれ。

俺はまだ何もしてないぞ。

ただ水晶に触れただけだ。

それなのに鑑定士達は用紙を何度も確認をしている。


「い、いや。間違いない!

剣士適性、魔法使い適性、弓…いや、それだけではない!武闘家、聖職者…全ての適性がある!」


広場が静まり返る。


「全適性持ち…?そ、そんな人間が実在するのか…?」


村人達の視線が一斉に俺へと集まった。


―――おいおい、やめろやめろ…

        頼むからこっちを見るな。


俺はただ普通に楽しく暮らしたいだけなんだから…

そんな俺の願いを踏みにじるように鑑定士は高らかに宣言した。


「ミナモ・アステル!

 君のバーデンセリア学園首席での入学を、

 今ここに認める!」

       

         △


鑑定士の声が広場に響き渡る。

広場が静まり返った。

誰もが今の言葉を理解するのに少し時間がかかったようだ。

やがて…


「しゅ、首席だってぇぇ!?」


「あの名門バーデンセリアの首席とは!」


「しかも全適性だと…初めて聞いたぜ…」


広場は瞬く間に大騒ぎだ。


鑑定士が何度も確認をしても結果は変わらなかった。

「剣士」「魔法使い」「弓使い」「武闘家」等あらゆる職業への適性が認められており、能力値も同世代の子供とは比較にならないほど高い。


いやいや、待ってくれ。

俺は普通に鑑定を受けただけだ。

勇者なんぞ、英雄になるなんてどうでもいい。

何よりも俺は「村人B」として平穏に生きたいだけなのだ。

なのに、現実は俺の願いを嘲笑うかのように最悪な方向へと転がっていく。


「ミナモー!凄いよ、ミナモ!首席なんて。」


聞き慣れた声がする。

振り返るとダンマが目を輝かせながら駆け寄ってくる。


「…あぁ、うん。」


「しかも全ての職業に適正があるんでしょ!?そんなの聞いた事ないよ!」


ダンマは興奮した様子で俺の周りを

ぴょんぴょん跳ねている。

悪気のないのは分かる。

心の底から俺を祝福してくれてるのも分かる。

だからこそ何も言い返せなかった。

カミル、フォートも自分の事のように喜んでくれていた。


嬉しいかと言われれば、嬉しいのだか…

(頼むからそんなに期待しないでくれぇぇ)

俺は心の中で叫んだ。


――学園か…

そうか。入学が認められたということは、

勇者を目指す子供達が集まり剣技や魔法を学ばなくてはいけないのだ。

目立ちたくない俺にとっては出来たら避けて通りたい場所だったのだが…

―やれやれ、どうやら逃げ道は無さそうだ。


「…ミナモ。」


母さんの声が聞こえる。

振り向くと母さんが少し驚いたような、

それでいて嬉しそうな顔で俺を見つめていた。


「まさか、首席になるなんてね…」


母さんは俺の前にしゃがみ、目線を合わせた。


「お母さんもびっくりしちゃったわぁ!

 でもあなたが頑張ってきたことちゃんと認  

 められたのねぇ…」


そう言って母さんは優しく微笑んだ。

その表情を見ていると胸の奥が温かくなる。

母さんが喜んでくれている。

それは俺にとっても嬉しい事だった。


「……うん。」


俺は頷くと、母さんはそっと頭を撫でてくれた。


「学園に行っても無理はしないでね…

困ったことがあったら、いつでもお母さんに相談してね!」


「……ありがとう。母さん。」


その言葉は素直に口から出た。

けれど俺の心の中には別の問題が残っていた。

母さんもダンマ達も村の人達も俺の事を祝福してくれている。

皆が喜んでくれるのは嬉しい。

だからこそ言い出せなかった。

俺が目指しているのは「村人B」のような平穏な日常を過ごすことだったのに…


こうして俺は望んでいた平穏とはかけ離れた未来へと歩みだしたのであった。

読んでくださりありがとうございました。

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