【第8話】近づく審判の時
異世界に転生してしまった元社畜の主人公が、特別な力を持ちながらも英雄や勇者を目指すことなく、平凡で穏やかな「村人B」としての人生を送ろうとする。
何気ない日常の中で経験値を獲得し、少しずつ成長していく主人公。 しかし、本人はあくまで平穏な生活を望んでいるようで……?
果たして彼は、望み通りののんびりした人生を送ることができるのでしょうか。
どうか、主人公、ミナモ・アステルの第二の人生を温かく見守っていただければ幸いです。
それでは、異世界で始まる彼の物語をお楽しみください!
「そう言えばミナモ!
もうすぐで適正鑑定だな!」
枝を拾い直したダンマが、ふと思い出したように声をかけてきた。
「え…?適正鑑定…?」
聞き慣れない言葉に俺は首を傾げた。
「え?知らないの?そんなに強いのに。」
ダンマが不思議そうに目を丸くする。
「10歳になると村の子供達は皆鑑定を受ける
んだよ!
勉強がどのくらい出来るとか、魔力がどの
くらいあるとか、色々調べるんだって!」
「そうそう!それに合格したら勇者になる為
の学校に行けるんだぜ!?」
フォートは枝を天高く掲げた。
「その名も、バーデンセリア学園!」
「バーデンセリア学園…?」
俺は聞き返す。
「うん!この国でも有名な学校なんだって。
勇者になる為に勉強をしたり、剣や魔法の使い方を習ったりするんだ!」
フォートは目を輝かせながら続ける。
「卒業したら、本物の勇者みたいに魔物と戦ったり、困っている人を助けたり出来るんだ!」
「僕も入って勇者になりたいなぁ…」
ダンマも興奮した様子で口を挟んだ。
「僕、魔法使いになりたいんだぁー。
何だか凄い魔法も覚えられるかも知らないし。」
フォートは笑顔でそう言った。
……ふむ、なるほど。
勇者や魔法使いになる為に行く学校か。
魔法や剣技を学び、将来は魔物と戦い、人々を守る。
夢のある話だ。
前世の俺も子供の頃だったら憧れていたかもしれない。
だが今の俺は違う。
勇者?魔物との戦い?世界を救う…?
どれも平穏な「村人B」としての生活とは正反対の言葉だ。
そう、俺は畑仕事でも手伝いながらのんびりライフを過ごしたいのだ。
危険な冒険だって嫌だし、世界の命運を背負うなんて絶対にごめんだ。
―――そうだ、その鑑定を受けなかったら良いんじゃないか…?
俺はふと思い聞いてみる。
「なぁ、適正鑑定って受けたい奴が受けるのか?」
フォートは不思議そうに首を傾げた。
「は?何言ってるんだよ。五歳になった子供は全員受けなきゃいけないんだぞ。
父ちゃん、母ちゃんが一緒に連れて行くんだって。鑑定を受けるのは決まってるんだよ。
本当に知らないんだな!」
その瞬間俺の頭の中で何かが崩れ落ちた。
受けたい奴が受けるなら、受けなければ良い。
目立ちたくないなららそもそも近づかなければ良い。
そう考えていたのに…
まさかの「全員参加制」。
逃げ道がなかった…
何でこの世界は拒否権だったりそういうものがないのだろうか…
「ち、ちなみに鑑定を受けなかったらどうなるんだ?」
恐る恐る聞いてみる。
するとダンマがあっさり答える。
「まぁ決まりを破った事になるんじゃない…?皆受けなきゃダメってお父さんが言ってたぞ。」
マジか…
俺は勇者になりたいわけでも、世界を救いたいわけでもない。
ただ平穏な日々を過ごしたいだけなのだ。
それなのに全員参加の適正鑑定なんてものが待ち受けているなんて…
確かに母さんがいそいそと何か準備していたのをふと思い出す。
(そうか、あれってそういう事になのか…)
しかも俺には普通に日常生活を送るだけで勝手にレベルアップする妙な固有能力まである。
審査で何を測られるのかは知らないが、普通の五歳児とは大きく離れていることは嫌と言うほど自覚していた。
「はぁ…どうすれば良いんだよ…」
俺は空を見上げ深い溜息をついた。
例の「適正鑑定」が来るまであと数日だ…
俺の平穏な日々も少しずつ終わりが近づいていたのだった。
読んでくださりありがとうございました。
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