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転生したらレベルアップが止まらない  作者: とま坊
幼少期編

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【第6話】日常成長《ルーティン・グロウ》

異世界に転生してしまった元社畜の主人公が、特別な力を持ちながらも英雄や勇者を目指すことなく、平凡で穏やかな「村人B」としての人生を送ろうとする。

何気ない日常の中で経験値を獲得し、少しずつ成長していく主人公。 しかし、本人はあくまで平穏な生活を望んでいるようで……?

果たして彼は、望み通りののんびりした人生を送ることができるのでしょうか。

どうか、主人公、ミナモ・アステルの第二の人生を温かく見守っていただければ幸いです。

それでは、異世界で始まる彼の物語をお楽しみください!

昼過ぎ。

父さんは家の裏手で木材の整理をしていた。

俺達が暮らしている村では農作業の他にも、簡単な木工や修繕を自分達で行うことも多い。

父さんもまた、畑仕事の合間に壊れた柵を直したり家具の修繕をしている。


俺は母さんに抱かれながら、その様子を見ている。


「ミナモ、あれがお父さんのお仕事よ!」


母さんが優しく教えてくれる。

なるほど、あれが父さんの仕事なのか。

父さんが働く姿は初めて見る。

木材を運び、形を整え、道具を使って加工する。

前世の俺は事務作業ばかりだったのでこういう仕事を見るのは新鮮だ。

父さんは木材を一本持ち上げ作業台に置き、床に落ちた木片を拾いまとめて箱に入れた。


……ふーん。

こういう仕事もあるのか。

俺は何となく、父さんの動きを目で追っていた。

すると、


「おぅ、ミナモ!

お父さんの仕事が気になるのかぁ?」


父さんがこちらを見て笑った。

……まぁ興味がないわけではない。

俺は小さく声を出した。


「あいっ…!」


「ガハッ!そうか、そうか!」


父さんは俺の前に小さな木片を一つ置いた。

勿論角が取れており手で触っても危なくない物だ。


「これはだなぁ、あの木材の切れ端だ。

お仕事をしてるとなぁ、こういうのも出るんだぞぉ。」


なるほど…

俺はそれをじっと見つめ、手を伸ばし掴む。


『経験値を獲得しました』

『器用さの訓練:経験値+1』


おいおい…

俺、ただ木片を握っただけだぞ…

俺は思わず木片を見つめる。


まさか…

俺は恐る恐る木片を握り直す。


『経験値を獲得しました』

『器用さの訓練:経験値+1』


………。

なるほど。どうやら手で扱うような動作も訓練として判断されるようだ。

ん、ちょっと待て…

これずっとしてたら経験値稼ぎ放題じゃないか…?

……。いやいや、考えるのはやめよう。

そう、俺は別に経験値稼ぎを研究するつもりはないのだ。


「お?気に入ったのか!?」


父さんは俺が木片を握っているのを見て笑った。


「そうかそうか。将来は木工職人にでもなるか?」


……父さん、それはまだ早い。

俺は将来仕事の事についてはもう少し慎重に考えたいのだ。

出来たら忙しくない仕事がいい。

責任が重すぎる仕事も嫌なのだ。


そして何よりも俺は「普(・)通(・)の村人」でいたい。


「ガハッ!まぁ別に今から決めることでもない。好きな事を見つければいいさ!」


父さんは俺の頭を撫でた。

……確かにな。

「好きな事を見つければいい」。

それは良い考えだ。

父さんが床に散らばった小さな木片を指さした。


「ミナモ!もし手を伸ばせるんだったら、あの木片取ってみるか?」


確かに少し離れた所にもう一つ木片が落ちている。

でも手を伸ばしても届かない距離だ。

しかし、今の俺なら…

ハイハイで移動すれば届く距離だ。


俺は木片を置き、床に手をついた。

そしてゆっくり進む。

腕と膝を器用に使い少しずつ身体を前に運んでいく。すると…


『スキル【ハイハイ】の熟練度が上がりました』

『移動動作の訓練:経験値+1』


……またか。

もう良い。俺は何も考えず目の前にある木片に手を伸ばした。

…ぎゅっ。取れた。


「ぬぉぉぉ!自分で取りに行けたなぁ!

よく頑張ったなぁ…ミナモ!」


父さんが嬉しそうに声を上げた。

……うん。ありがとう父さん。

でもね、父さん。

俺少しずつ不安になってきたよ。

何かをする度に経験値が入ってくるんだ。

何かを練習すればスキルが手に入り同時にボーナスとしてまた別に経験値が入ってくる。

日常の何気ない動作すら成長として記録されるのだ。

この世界のシステムは一体どこまで俺を成長させるつもりだろうか…

俺は木片を持ちながらステータスを開いた。そして…


『レベルアップ可能』の文字。


……え?

俺は思わず固まった。レベルアップ可能…

つまり新しい段階に上がるということだ。

朝にも確認したがその時はまだまだだった。

それがいつの間にか必要経験値に達していたらしい。

……マジか。今日はつかまり立ちをして木片を拾っただけだぞ。

それだけでレベルが上がるのか…

俺は目の前に表示されている文字を見る。


『レベルアップが可能です。

レベルアップしますか?』


来た、来てしまったのだ。

俺は心の中で即答する。


『レベルアップを拒否しました』

『また限界数値があります』


……ん?限界数値ってなんだ?

まぁ良い。これで良いのだ。

目立つ必要もなければ、強くなる必要もない。

俺はただ「村人B」として平穏に生きていきたいだけなのだ。


          △

      

その夜の日の事だった…

寝る前に少し立つ練習をしベッドに寝かされた俺はいつものようにステータス画面を開いた。


名前   ミナモ・アステル

レベル  3

経験値  30/30

未使用ポイント 2


……ん?経験値の上限が達している。

昼間父さんの仕事を手伝った時に想像以上に経験値が入っていたらしい。

そして案の定


『レベルアップが可能です』


目の前に見慣れた表示が浮かび上がった。

レベルアップ。確かにRPGのようなゲームならレベルアップはするべきなのだろう。

だがこれは現実だ。

目立ちたくも無いし、強くなりたくもない。

英雄さんなんてゴメンだ。

俺は平凡な村人Bとして生きていきたいだけなんだから。

当然昼と同様に拒否する、そう念じたその瞬間(とき)だった。


「レベルアップを確認しました」

『固有能力:【日常成長(ルーティン・グロウ)】の効果が発動しました。』


おい、ちょっと待ってくれ。

俺はまだ何も選んでも無いし、拒否するつもりだった。

と言うか【日常成長(ルーティン・グロウ)】って何なんだ!?


『必要経験値の上限を確認』

『成長条件を満たしています』

『レベルアップを実行します』


お、おい。待て待て!

拒否!拒否だから!

俺はレベルアップなんて望んでない!

しかし、俺の必死の訴えなどシステムには届かない。


『レベルアップしました』


その瞬間、体の奥から力が湧き上がり体が軽くなった。

そして目の前に新たな表示が現れた。


       【レベルアップ】


  【レベル】3→4    【体力】4→5

【魔力】5→6     【筋力】3→4

【俊敏】3→4 【知力】5→6

【器用】3→4 

【未使用ポイント】2→3


……。俺はしばらくフリーズしてしまった。

いや、拒否権は?俺の意思は…?

俺は震える心でさっき出た見知らぬ文字の説明を開く。



【固有能力:日常成長(ルーティン・グロウ)】


日常生活における行動や取得を通じて通常よりも効率的に成長します。

尚、必要経験値の上限に達した場合成長処理は自動的に実行されます。


……は?自動的にって…何だ…?

つまり俺が拒否したとしても勝手にレベルが上がるってのか!?

そして俺は心の中で叫んだ。


【俺に拒否権ないんかーー!!】


勿論返事はない。

静かな夜の中、俺は生後間もない体で人生最大の理不尽を味わっていた。

平凡な「村人B」として生きる。

その目標は早くも暗雲が立ち込める。


……頼むから、せめて目立たない程度の成長にしてくれよ…


そう願いながら俺はそっと目を閉じた。

だが俺はまだ知らなかった。

この固有能力がレベルアップだけではなく、俺の人生そのものをとんでもない方向へと導いている事を…

読んでくださりありがとうございました。

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