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転生したらレベルアップが止まらない  作者: とま坊
幼少期編

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【第4話】「前世」の俺と「今」の俺 

異世界に転生してしまった元社畜の主人公が、特別な力を持ちながらも英雄や勇者を目指すことなく、平凡で穏やかな「村人B」としての人生を送ろうとする。


何気ない日常の中で経験値を獲得し、少しずつ成長していく主人公。 しかし、本人はあくまで平穏な生活を望んでいるようで……?


果たして彼は、望み通りののんびりした人生を送ることができるのでしょうか。


どうか、主人公、ミナモ・アステルの第二の人生を温かく見守っていただければ幸いです。

それでは、異世界で始まる彼の物語をお楽しみください!

「ミナモ…?」


その時部屋の扉が開いた。

入ってきたのは母さんのセリアだった。

洗濯物を抱えた母さんは俺の姿を見て目を丸くした。


「あらぁ…?」


無理もない。

今まではベッドの上で寝返りを打つのが精一杯だったのだから。

それが今ベッドの端から少し離れた所まで移動している。

しかも人形を握りしめている。


「ミナモ!あ、あなた自分でここまで動いたの!?」


母さんは洗濯物を置くと、慌てて俺のそばに駆け寄ってきた。


「凄いわぁ!ハイハイが出来るようになったのねぇ!」


……はい、そうです。ハイハイです。

俺は少しだけ胸を張った。

すると母さんは俺を抱き上げ頬ずりをしてきた。


「あらあら、まぁまぁ!

凄い子ねぇ。昨日までは、まだ上手に動けなかったのに…」


……うん。

まぁ、昨日まではというか…

実際にはまぁ何日も練習してきたわけだが…

それでも、母さんが喜んでくれるのは嬉しかった。


「よく頑張ったわね!ミナモ!」


その言葉を聞いて、俺は少しだけ照れくさくなった。

前世では努力を褒められる事なんてほとんど無かった。


「出来て当たり前」

「もっと頑張れるだろ」

「本気(マジ)でやれや」

そんな言葉ばっかりだったように感じる。

だが、今は違う。

ただ一つ、出来る事が増えただけで母さんはこんなにも喜んでくれる。

……ふっ、悪くない。


俺は母さんの服をぎゅっと握った。


「ん?嬉しいの?」


……まぁ、そういう事にしておこう。


母さんは俺を抱いたまま、窓の外へ視線を向けた。

のどかな村の景色が広がっていた。


ここはマーチル村。

大きな街道から少し離れた小さな農村、だそうだ。

村には小さな教会があり、朝になると鐘の音が鳴り響く。

畑では農民達が働き、夕方には子供達が走り回る。

特別なものは何もない…はずだ。


……そう。こういう場所が良かった。

世界を救う必要もない。魔王を倒す必要もない。

この村で生まれ、この村で育ち、やがて大人になって適当な仕事を見つけて暮らす。

時々、村の子供達に昔話を聞かせたり、祭りの日に屋台を回ったりする。

そんな人生が良い。


俺は母さんの腕も中で小さく息を吐いた。


経験値が入るからといって、特別な訓練を始めるつもりはない。

スキルが手に入ったからと言って、冒険者になるつもりもない。

ハイハイが出来るようになったのなら、次はつかまり立ち。その次は歩く練習。


赤ん坊として、当たり前の成長をしていけば良い。

それだけで十分だ。


「あう…」


俺は母さんの腕の中で小さく声を出した。


「ん?お腹すいたの?」


違います…お腹は減ってません。

ただ、少し眠たくなってきただけです。


「ふふっ、眠たいのね。今日はいっぱい頑張ったもんね!」


母さんは俺をベッドに寝かせ布団をかけてくれた。


「おやすみ…ミナモ…」


……おやすみなさい、母さん…

俺は目を閉じた。意識がだんだんと遠くなっていく…


今日もよく頑張った。

自分だ身体を動かし練習をして、出来ることが一つ増えた。


それだけだ十分だ。

この人生では無理はしない。

誰かと比べない。

自分のペースで少しずつ成長していく。

それが今の俺の生き方だ。


…まぁ明日起きたらまたハイハイの練習でもしようかな。


そう考えながら俺は穏やかな眠りについた。


         △


その日の夜。

ミナモが寝てからしばらく経った頃…

家族全員が寝静まる寝室で、半透明のステータス画面が静かに浮かび上がった。


『スキル【ハイハイ】Lv.1』


そしてその下に…


『日常行動による経験値獲得を確認』


『身体能力の成長補正を適用』


『対象者【ミナモ】の成長傾向を記録しました』


最後に、


『固有能力:【日常成長(ルーティン・グロウ)】を獲得しました』


その文字が浮かび上がった直後、何事もなかったかのように消えた。


しかし眠ったいるミナモがそれに気付くことは無かった。

彼は疲れた身体を癒そうとすやすやと眠っていた。

自分がどれほど特殊な能力を持っているのかも知らずに。


明日、明後日もご飯を食べ、遊び、眠り、少しずつ成長していく。

それだけのつもりだった。


だがこの世界のシステムは、そんな彼の何気ない日常の一瞬を一つ残らず成長の記録として積み重ねていく…


やがて本人の知らない所で、とんでもない数字が並び始める事になるのだが…


それはまたもう少し先の話である。


読んでくださりありがとうございました。

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