【第31話】固有能力と究極能力
目立たず、騒がず、平穏に。
それが、前世の記憶を持って異世界に転生した少年、ミナモ・アステルの目標だった。
しかし、日常生活を送るだけでレベルが上がり、十歳の適性鑑定では全職業適性あり。能力値も規格外だったミナモは、バーデンセリア学園に首席で入学することに。
さらに、幼なじみのダンマ、カミル、フォートと共に始まる学園生活。個性豊かな生徒たちや厳しい授業、実技訓練が待ち受ける中、ミナモの固有能力【日常成長】は、本人の意思に反して彼をどんどん強くしていく。
「頼むから、普通に成長させてくれ……!」
果たしてミナモは、憧れの平穏な学園生活を送れるのか?
これは、村人Bを目指す少年が、望まぬ成長と周囲の期待に振り回されながら、普通の日常を守ろうと奮闘する物語。
――翌日の放課後…
ミナモは一人で教員棟へ向かっていた。
昨日の決勝戦で獲得した【魔剣双流】…
寮に戻って効果は確認したが、
そもそも究極能力とは何なのか…
固有能力とどう違うのかが気になっていた。
自分でも調べようとしたが情報が無かったので仲良くしてもらっている知識のある教師に話を聞いてみることにしたのだ。
訪ねたのは魔法理論や魔力制御を専門とする教師、シエロ・アルベルトの研究室だった。
シエロは魔術に関する深い知識を持つことで知られており、魔法使いとしても「賢者」と称されるほどの実力を持つ教師だ。
「失礼します。」
「おや、ミナモ君かね。どうしたんだい?」
机の上に広げていた資料から顔を上げ、
シエロが微笑んだ。
「はい、少し聞きたいことがありまして…
能力について聞きたいんですが、
固有能力と究極能力って、何が違うんでしょうか…?」
その言葉を聞いたシエロは、
わずかに眉を上げた。
「固有能力と究極能力か。
なるほど、なかなか興味深い質問だねぇ。
まずは、固有能力については知っているかな?」
「はい。
剣技や魔法とは違って、
人それぞれが持つ特別な能力ですよね。
図書室で見ました。」
「その通りだ。
固有能力は、個人の資質や特性に深く結びついた能力だと考えられている。
戦闘に役立つものもあれば、
日常生活や研究に役立つものもある。
効果も成長の仕方も、
一人ひとり異なるんだよ。」
――うん、ここまでは図書室で調べた通りだ
「では、究極能力は何なのか…
こちらについてはまだ分かっていない事も多いのだよ。」
シエロは椅子の背にもたれ、
言葉を選ぶように続けた。
「一般的には、固有能力よりもさらに高い次元にある能力だと考えられている。
単純に威力が強いというだけではない…
通常の能力では難しい事を可能にしたり、
複数の技術を高度に連携させたりするものもあるらしいんだ…」
「複数の技術を、ですか?」
「うむ。
固有能力が特定の力を発揮するための能力だとすれば、究極能力は、その力の扱い方そのものにまで踏み込む能力…そう考える研究者もいる。
でも、これはあくまで一つの見解だ。
すべての究極能力に当てはまるとは限らないからね。」
――ミナモは内心で考え込んだ…
魔剣双流の効果を確認した時、
剣術と魔法を連動させるという説明があった。更に魔力を剣に流し込み、
斬撃と魔法の性質を組み合わせる事も出来るらしいと…
シエロの説明を聞く限り、
究極能力は単に既存の力を強化するだけのものではないようだ。
「究極能力を持っている人は、そんなに少ないんですか…?」
「そうだね、極めて少ない。
存在そのものは古い文献にも記されているが、具体的な能力の内容や効果まで残されている例は限られているんだ。
私も資料を通して知っているだけで、
実際に究極能力を持っている者を見たことはない。」
シエロは少し残念そうに肩をすくめた。
「なるほど……
先生は究極能力についてもっと詳しく調べたいと思った事はあるんですか?」
「勿論だとも。
研究対象として実に興味がある。
ただね、残されている資料が少なくてね。
名前や存在が記録されていても、
肝心の効果が分からないものも多いんだよ。」
シエロは机の上の資料に目を向けた。
「魔法の研究でもそうだが…
分かっている事と、推測にすぎないことは区別しなければならない。
未知の能力だからといって
何でも出来ると考えるのは危険だからね」
「確かに、そうですね」
ミナモは頷いた。
「分かりました。
教えて頂きありがとうございました。」
「いやいや。
私もすべてを知っているわけではないからね。
また気になることがあれば聞きにおいで。」
シエロは穏やかに微笑んだ。
「究極能力については、まだ分かっていない事も多い。
もし詳しく知る機会があれば、
慎重に調べることを勧めるよ。
未知の力には、予想外の性質が隠れていることもあるからね。」
「はい。覚えておきます。」
ミナモは礼を告げ、研究室を後にした。
廊下を歩きながら、自分の能力の事を思い出す…
まだ実際に使ってはいないが、
剣術と魔法を連携させるという効果には興味があった。
どんな使い方が出来るのか試してみたい…
しかし、試すなら安全な場所を選ばなければならない。
魔法が暴発して寮の部屋を壊すような事になれば、目も当てられないからな…
「……まあ、焦っても仕方ないか。」
ミナモはそう呟き、友人たちの待つ寮へと戻っていった…
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