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転生したらレベルアップが止まらない  作者: とま坊
幼少期編

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【第2話】赤ん坊は難しい 

異世界に転生してしまった元社畜の主人公が、特別な力を持ちながらも英雄や勇者を目指すことなく、平凡で穏やかな「村人B」としての人生を送ろうとする。


何気ない日常の中で経験値を獲得し、少しずつ成長していく主人公。 しかし、本人はあくまで平穏な生活を望んでいるようで……?


果たして彼は、望み通りののんびりした人生を送ることができるのでしょうか。


どうか、主人公、ミナモ・アステルの第二の人生を温かく見守っていただければ幸いです。


それでは、異世界で始まる彼の物語をお楽しみください!

転生してからしばらく時間が過ぎた。


俺、ミナモ・アステルは、今日もベッドの上で天井を見つめている。


……暇だ。


いや、本当に暇なのである。


朝になれば母さんのセリアが起こしに来て、腹が減ればミルクを飲み、眠たくなれば寝る。

泣けば誰かが助けに来てくれるし、寒ければ毛布をかけてもらえる。

前世では考えられないほど恵まれた環境だった。

上司から仕事を押し付けられることもなければ、締日に追われることもない。

残業もない、休日出勤もない。人間関係も、まぁ今の所は問題ない。

(まぁ赤ん坊だから当たり前ではあるがな…)


…でも

そう、俺には自由が無い。

これが致命的だった。

好きな場所に行くことも出来なければ、

本棚に置いてある気になる本を読もうにも、そもそも文字が読めるかどうかも分からない。

何より、目の前にあるうさぎの玩具を取るだけでも一苦労なのだ。


「…んっ!!」


俺は必死に腕を伸ばした。

ベッドの上に置かれた、うさぎの小さな人形。


―――もう少し… 

      もう少しだ…!


指先が人形に触れる。

しかし手が思うように動かない。

指を開こうとすると、上手くいかない…

腕を伸ばそうとすると、何故か指が閉じてしまう。


……何なんだ、この難易度は。


前世で初めて触ったパソコンの方がまだ簡単だったぞ…

俺は一度、深呼吸するつもりで息を吸った。

そしてもう一度。


「……っん!!!」


…ぎゅっ!!


……掴めた。

俺は人形を握りしめた。

…やった……

たったこれだけの事なのに、前世では感じる事の無かった妙な達成感がある。


その瞬間(とき)だった。

視界の端に、半透明の文字が浮かび上がった。


『経験値を獲得しました』


『器用さの訓練:経験値+1』


…またか。


俺は人形を握ったまま、心の中で溜息をついた。


この世界に転生してからどうやら俺には妙な能力があるらしい。


何か行動すると経験値が入る。

最初に気づいたのは指を動かす練習をしていた時だった。

何となく手を握ったり指を動かそうとしていると、突然ステータスが表示されたのだ。

最初は幻覚かと思った。

しかし、何度も試しても同じ様に経験値が入ってくる。


―――どうやらこの世界のシステムは赤ん坊にも容赦がないらしい。


いや、正確には赤ん坊だからこそ経験値を稼ぐ機会が多いのかもしれない。

何しろ昨日まで出来なかったことが今日出来るようになる。


(まぁ赤ん坊は成長が早いと言うしな…)


ちなみに今の俺のステータスはこうなっている。



名前   ミナモ・アステル

種族   人間

年齢   0歳

レベル  3

――――――――――――

体力  4 魔力  3

筋力  4 俊敏性 4

知力  6 器用さ 3


所持スキル  無し

未使用ポイント 2



うん、弱い。


レベル3と言っても所詮はまだ赤ん坊だ。


そもそもこの体力4は何を基準にした数字なんだろうか。


前世の俺ならこんなステータスを見た時点で攻略をし始めたかも…しれない。


でも今は違う。


強くなりたいわけじゃないのだ。


俺がなりたいのは「村人B」。


勇者でもなければ魔王を倒す英雄でもない。


村の端でのんびりと過ごし、畑作業を手伝い、時々近所の人と世間話をする。


…そんな、どこにでもいる普通の人になりたい。


…出来れば働きすぎず暮らしたい。


前世でもう十分に頑張ったのだから、今世くらいは自分らしくのんびりしたいのだ。


「……よし。」


俺は人形を置き、身体をうつ伏せにした。


次の目標は「ハイハイ」だ。


自分で移動できるようになれば行動範囲が広がる。


ベッドの上だけではなく部屋の中を見て回ることも出来るだろう。


……別にレベル上げが目的ではない。


あくまで、自由を手に入れる為である。

経験値は、そのついでなのだ。

俺は両腕を床についた。

そして上半身を持ち上げようとする。


「んっ!!」


………お、重いっ!


頭を持ち上げるだけでも首や腕に力が必要だ。


しかも、頭が持ち上がると今度は身体がぐらつく。


慌てて腕に力を入れると今度は顔が床に近づいていく。


「うぐっ……!!」


危ない…


俺は何とか顔を上げた。


赤ん坊の身体は俺の想像以上に不便だった。


頭の中ではやりたい事がいくらでも思いつく。


しかし、身体が全く追いついてこない。


まるで操作方法の分からない、説明書の無いゲームをプレイしているようだ。


それでも俺は練習を続けた。


少し持ち上げては休み、また持ち上げる。


腕が疲れたら一旦力を抜く。


無理はしない。


今の俺に必要なのは、効率の良い経験値稼ぎではなく普通に身体を動かせるようになる事だ。


すると、


『経験値を獲得しました』


『身体操作の訓練:経験値+1』


おっ…!


やっぱり増えた。


更に何度か繰り返す。


『経験値を獲得しました』


『筋力の訓練:経験値+1』


なるほど…


同じ動作でもどうやら判定される能力が違うらしい。


…いや、だからといってわざわざレベル上げの効率を調べるつもりはない。


俺は『村人B』になるのだ。


最適な経験値稼ぎを調べるような人生は前世だけで十分やってきた…

そう考えながら俺は少しずつ練習を続けてきた。

勿論赤ん坊の身体はすぐに疲れてしまう。

やがて目蓋が重たくなってきた…


………ね、眠い。


仕方ない…

今日はここまでにしよう…

俺は布団の中で丸くなりそのまま眠りについた…


平和だ…


実に平和である。


このまま何事もなく成長出来れば、

きっと「村人B」としての素晴らしい人生を送れるだろう…


その時の俺は本気でそう思っていた。


まさか、「村人B」としての平和な人生を脅かす最大の原因が、自(・)分(・)自(・)身(・)の(・)成(・)長(・)速(・)度(・)になるとは知らずに…

読んでくださりありがとうございました。

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