【第19話】剣と魔法
目立たず、騒がず、平穏に。
それが、前世の記憶を持って異世界に転生した少年、ミナモ・アステルの目標だった。
しかし、日常生活を送るだけでレベルが上がり、十歳の適性鑑定では全職業適性あり。能力値も規格外だったミナモは、バーデンセリア学園に首席で入学することに。
さらに、幼なじみのダンマ、カミル、フォートと共に始まる学園生活。個性豊かな生徒たちや厳しい授業、実技訓練が待ち受ける中、ミナモの固有能力【日常成長】は、本人の意思に反して彼をどんどん強くしていく。
「頼むから、普通に成長させてくれ……!」
果たしてミナモは、憧れの平穏な学園生活を送れるのか?
これは、村人Bを目指す少年が、望まぬ成長と周囲の期待に振り回されながら、普通の日常を守ろうと奮闘する物語。
剣術の授業を終えた翌日。
俺は朝から昨日ふと思いついた事について考えていた…
――剣を持ちながら魔法を使う事は出来るのか…
この世界では剣士と魔法使いは別々の職業として扱われている。
勿論、両方の適性を持つ人間もいるが、
実際の戦闘で剣と魔法を同時に使うとなると話は変わってくるはずだ。
剣を振るだけでも集中力が必要なのに、
そこへ魔法の制御まで加わってくる。
普通に考えれば難しいだろう。
ただ、俺の場合は少し事情が違う。
適性鑑定では剣士も魔法使いも含め、
あらゆる職業への適性が確認されている。
折角なのだから、試せる事は試しておきたい。
もっとも目立つような成果を出すつもりはない。
俺は目立ちたくない。
そう、あくまで個人的な興味だ。
そう考えながら俺は授業が始まる前の訓練場へ向かった。まだ生徒の姿は少ない。
端の方に移動すると、練習用の木剣を一本手に取り、空いている場所で構えた。
さぁ、まずは基本からだ。
木剣を右手で持ち、左手を自由にして魔法を使う。剣を振る動作と魔力の制御を別々に意識をすればある程度は出来るかもしれない…
俺は左手に魔力を集め、小さな火の玉を作り出した。
「……よし。」
火の玉は問題なく形を保っている。
次に木剣をゆっくりと振ってみた。
――しかし、火の玉がわずかに揺ぐ…
剣を振る動作に意識が向いたせいか、魔力の制御が乱れた。
火の玉はすぐに消えてしまう。
「なるほどな。
流石に簡単にはいかないか…」
剣を振る事と魔法を使う事。
それぞれ単独ならそこまで難しくはない。
しかし、同時に行うとなると話は変わってくる…
なら動きを小さくすればどうだろうか…
今度は木剣を構えたまま、左手に小さな火の玉を作る。剣を大きく振るのではなく、腕を僅かに動かすだけにとどめた。
火の玉は消えない。
そのまま木剣をゆっくりと横へ動かしてみる。多少揺らいだものの、魔法を維持したまま剣を動かすことが出来た。
「――なるほどな……」
どうやら剣と魔法を同時に扱う事自体は可能らしい…
問題はどれだけ複雑な動きをしながら魔法を維持できるかという点だ。
俺は火の玉を消し、今度は木剣を振る動作に合わせて魔法を発動させてみる。
剣を振る。魔力を集めて火の玉を作る。
最初は動きがぎこちなかったが、
何度か繰り返すうちに少しずつタイミングが合ってきた。
剣を振り終えた瞬間に火の玉を生み出す程度なら、さほど苦労せずに出来る。
但し、剣を振りながら魔法を維持し続けるのはまだ難しい。
魔力の制御に意識を向けすぎると剣の動きが鈍り、剣に集中すると魔法が不安定になる。
なるほどな、一朝一夕で身につく技術ではなさそうだ…
それでも、剣と魔法を組み合わせられれば、戦い方の幅は広がるだろう。
相手の意識を剣に向けさせながら魔法を放つことも出来るし、遠距離からの攻撃に対して魔法で牽制しつつ接近することも考えられる。
――まあ、実際に使う機会があるかは分からないけどな…
俺は木剣を構え直し、
もう一度、剣を振りながら魔法を発動させてみた。
今度は先ほどよりも滑らかに動けたが、まだ動作の途中で魔法が不安定になる。
「ふぅ…もう少し練習が必要だな。」
そう呟き、俺は木剣を片付けた。
剣と魔法の組み合わせ。
まだ試し始めたばかりだが、思った以上に可能性はありそうだ。
次の授業まで、もう少し時間がある。
俺は魔法の制御について考えながら、訓練場を後にした…
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