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とうやは何に使ったっていいんだぜという話

百姓が独断と偏見まみれで語るじゃがいものお話第5話。今まで語ってきたじゃがいもの話の基礎的なまとめとしては、「とうや」という品種が適任だと思うので今回登場語ることとする。


とうやは優れた品種なのにあんまり注目度がなくて悲しい。贔屓の品種はゴリ押しするのが私のスタイルなので今回もそうしていこうと思う。目論見としては、じゃがいもの2番手に位置するメークインの喉元に届くような知名度と人気が出れば一番良い。早速始めていこう。


とうやは、畑での性質としては、キタアカリに似た早生の性質をしめす。男爵を基準として約2週間近く早い肥大を見込むことができる上、早掘りしたときの味の完成度が高い。キタアカリなんかだと、早掘りした芋はややでんぷん質に欠くような食感がしたり、甘みが乗らなかったりして、まあ早く食べられて嬉しいけどね……と複雑な感想が胃のあたりから滲んでくる場合がままある。



とうやは形にさえなっていれば完全に収穫適期の芋と同じ味を呈する。もっとも、とうやはそもそもでんぷん質は少なめの芋で、肉質としてはメークインに近い、しっとりと煮崩れしない芋である。いものシルエットは、芽の浅い男爵といった感じで、火の通った芋の色が美しい黄色を呈する。男爵に似た形と黄色い肉質を指して、「黄爵(おうしゃく)」とも呼ばれる。


作る際には、やや収量のアップダウンの激しい性質に困らされる場合もある。特に芽が出た直後に低温にさらされるとめっぽう弱い。枯れることはないものの、季節外れの花をつけてしまいそこで芋の出来もストップ。1キログラムの種芋からたった3キロそこそこしか出来なかった年は、夏に掘りながら本当に悲しくて涙も出なかった。普通のじゃがいもは1キロの種芋から10キロくらいはできることを考えると、やっぱりあの年は大失敗だったということになる。

まあもちろん、豊作の年はウハウハである。稼働できるコンテナを全部畑に持っていってまだ足りず、急遽私の勤め先へ空き段ボールを回収しに行ったこともあった。直売で売りに出せるぶんもあったし、次の年のじゃがいもができるまで、たったの1個のじゃがいもも買わずに過ごせた。そういう年があると、それがよい思い出になって頑張る原動力になったりするのである。書き忘れたが、とうやは全体に大粒の芋になりやすい性質もある。男爵なら2Lになるだろうサイズが普通にゴロゴロ取れる。うまく当たった年の芋掘りが本当に楽しい。


畑でのとうやはそんなところか。次に使い方をみていこう。暇庭個人としては、とうやほど、「なにに使ってもいいぜ」と他の人に胸を張って言える万能選手を知らない。本当に何にでも使える。煮崩れはしにくいので、汁物や煮物、カレーにもどんと来い、マッシュポテトにしたいならそれもまたバッチリカバーできる。ホクホクした男爵とはまたちょっと違う、滑らかな食感が期待できる。油で揚げたっていいし、コロッケに使う適性も意外とある。ユーティリティプレイヤーとはまさにこのことだろう。台所でのとうやは、望まれれば何の料理にでもなる万能さがひとつの抜きん出た長所と言えるのだ。

ついでに言うと、芽が浅く剥きやすいのも大変に良いところ。包丁でスイスイ剥いていけるし、先に述べた大粒の芋になりやすい特徴ゆえに、量を必要とするときも皮剥き個数が少なくてすむのは素敵だ。


また、でんぷん質の少なさという特性を数値に置きかえると、他のじゃがいもより低カロリーであるという面も見えてくる。ものにもよるがとうやは、男爵より約10%ほどカロリーが低い。暇庭のように肉じゃがで白米を食べるだの、ポテトサラダがご飯のお供だのやっている炭水化物中毒者にとってはありがたい話だ。同じお悩みをお持ちの方は、是非比較的ローカロリーなとうやを食卓に取り入れてみてほしい。キタアカリのようなホクホク感はないものの、とうやにはとうやしかない味の良さがある。うまく説明できなくて申し訳ないが、キタアカリが甘みやホクホク感に秀でるとすれば、とうやは何の料理にでも「俺が合わせるからさ、お前らやりたいようにやれよ」と言える懐の深さがある。たしかに味としてハッキリこれだと言える特徴はないが、むしろそこがとうやの本領だ。どんな料理にもとりあえず起用して構わない。それがとうやという芋である。


やや収穫量の点で上下の振れ幅があるものの、台所ではいかな調理法でも一定の水準を保証してくれる。とうやは普段使いのじゃがいもとして、家庭の強い味方になってくれるはずだ。

作中でさんざん「何にでも使える」と言い続けたとうやだが、強いて得意分野を挙げるなら、クリームシチューだろう。煮崩れしないうえに味のなじみが早く、やや大きめに切って入れるとシチューが完全に1食の食事として完成する。もちろんご飯にかけてもいいのだ。


とうやの花は白く、ほかの品種に比べると素朴な花だ。暇庭が育てるときは、この白い花がとうやとほかの品種を見分ける指標にもなってありがたい。もしもとうやの完全な収量安定を確立できるならば、調理における汎用性が定番のじゃがいも品種の座にとうやを押し上げるかもしれない。そういう意味でも、とうやは私の注目株である。

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― 新着の感想 ―
意識高い系お高いスーパーに置いてありましたよ、とうや。暇庭さまのおすすめだ〜と買おうかどうか数分にらめっこしたものの、お値段がお値段なので買えず。お求めやすい価格になったら是非食べてみたいです。 う…
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