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第97話 スシネバーダイズ後編①

ここまでのスシ=エリ・トリジ:

スシバトル部とのスシバトルはついに最終決戦! 

寿司同好会の鳥路とりじ英莉えりとスシバトル部の部長、帯刀たてわきさえは互いの持てる技術をぶつけ合う!

一本目のタコで勝利した鳥路だったが、帯刀に二本目のアオヤギと三本目のアジを勝利され、後が無くなってしまう!

さらに、四本目で使うマグロは三本目の時点でまだ鳥路の手元に無く、このままでは無条件で敗北してしまう状況であった!

休憩時間も潰され、敗北の二文字が見えかけた鳥路と寿司同好会のメンバー!

しかし、ギリギリのところでマグロの調達を行っていた金星かなぼし瑠璃子るりこがスシバトルの会場に飛び込んできた!


◆◆◆



「金星さん! 間に合ったんだね!」


 その手に抱えられたのはきっとマグロ! どうやって手に入れたのかわからないけど……金星さんがやってくれた!


「苦労しましたわ。皆様にはご心配をおかけしてしまいましたわね。ですが……」


 金星さんはそう言いながら鳥路さんの立つ調理台に手にした物を置き、布の中身を公開する。


「約束通り、マグロを用意できましたわ!」


 立派なマグロの赤身だ! 凄い! しかも、素人目で見てもめちゃくちゃ良いマグロに見える! 

 司先生と蛍さんも手にしていた物を広げ始めると、金星さんの取り出したものと同等の品質のマグロの赤身が次々と姿を現していく。これだけあれば……審査員の人数分は間違いなく握れる!


 こちらとしては感動的な状況なのだけど、周囲のギャラリーの反応はどこかぎこちない。


「た、確かに良さげなマグロだけど……どうして苦労したんだ?」


「スシバトル部は普通に用意できてるんでしょ?」


「マグロってほら、仕入れが大変なんじゃない?」


 そうか。俺達以外は笹垣というか寿司王国がマグロを独占した事を知らないんだ。

 

「良いマグロだ……ありがとう金星さん」


 鳥路さんが金星さんに頭を下げる。それは感謝と敬意、色んな感情が含まれていると俺は感じた。


「お礼なら勝利が嬉しいですわ」


「……そうしよう」 


 金星さんと鳥路さんが通じ合ったかのように同時に微笑む。


「ああああ……よかったぁ……ご、ごめん山ちゃん、なんか力が抜けちゃって」

 

 賀集さんはまだ俺に支えられたままで、復帰までちょっと時間がかかりそうだ。


「俺も正直失神しそうなぐらい嬉しいよ。鳥路さんならきっとここから巻き返してくれる……!」


 俺は素直に今の心境を賀集さんに伝えると、賀集さんは力強く頷いてくれた。


「ど、どうやってマグロを!? なんでそんな質の良いマグロが手に入るわけ!?」


 笹垣が金星さんの持ってきたマグロの質に驚いている。まるで幽霊でも見ているような動揺の仕方だ。


「頭を下げて貰ってきましたのよ、お寿司屋さんに」


「は!?」


 笹垣が更に驚く。

 す、寿司屋から貰ってきたのか!? いくら金星さんだからって、お店のマグロを分けてくれるものなのか!? だってお店で出すために仕入れてるんだろ!? なのにこんなスシバトルなんかで……お金を使ったのか!?


「丸中寿司、鮨番長、大黒寿司、成金寿司、鮨処うおめ……」


 金星さんが聞き覚えのある寿司屋の名前を羅列していく。

 その時、金星さんの後ろから更に包みを持った女子生徒が現れ、鳥路さんの調理台の上にそれを置いた。え!?


「……そしてこれは松風鮨からよ。父が是非使ってくれと、鳥路さんに」


「松風先輩!?」


 俺以上に鳥路さんが目を丸くして驚く!

 

 松風先輩の登場でギャラリーが一層騒がしくなる!


「松風先輩!? あの松風鮨の!?」


「な、なんで松風鮨の人が寿司同好会側に!? 松風先輩ってスシバトル部じゃなかったっけ!?」


「いや、ほら辞めたじゃん! だとしてもどういう関係!? なんで鳥路さんは松風鮨の親方と知り合いなんだ!?」


「てか金星さんが言ってた寿司屋の名前ってさ! 最近美味しくなったって話題になってるお店ばっかじゃない!?」


 さっきの寿司屋の名前……! 鳥路さんがこれまでスシバトルしてきたお店だ!


「松風さん!? あなたはスシバトル部を辞める時に私達の邪魔をしないと約束したはずだ! なぜ寿司同好会側に立つ!」


 帯刀が珍しく動揺している。松風先輩の人格や技術的にも帯刀が一番信頼のおける人物だったのかもしれない。


「私は父のお使いでマグロを持ってきただけ。スシバトル部を邪魔するつもりは一切ありません」


 松風先輩がはっきりと言い切る。スシバトル部に未練とかは無いようだ。


「な、なぜ松風鮨が鳥路英莉に味方を……? それにさっきの寿司屋の名前……どれも鳥路がスシバトルで痛めつけた店じゃ無いの!?」


 笹垣がたじろぎながら疑問を口にする。


「ええ、そうですわ。どのお店も過去に鳥路さんがスシバトルで勝利したお店ですわ」

 

 金星さんが笹垣の疑問に答える。


「うちはちょっと違うけどね」


 松風先輩が苦笑いしながら呟く。松風鮨の時は松風先輩が勝ったもんな。でもいずれのお店も共通点があるとしたら……


「どのお店も……鳥路さんが《《救った》》お店ですわ!」


 金星さんの発言にギャラリーが困惑する!


「スシバトルで店が救われる!? そんな話あるのか!?」


「そもそも鳥路さんは寿司警察で寿司屋を潰していたんじゃないの!?」


「でもよぉ! スシバトルで怨み買ってたらあんな良さそうなマグロを譲ってくれたりなんかしないと思うぜ!」


 金星さん! もしかして鳥路さんの寿司警察の疑いも晴らすつもりなのか!


「鳥路さんは確かにスシバトルでお店側をボコボコにしましたわ! ……ですが! 鳥路さんが出したお店側への要求は、次来るときは本気出せとか、もっと集中しろとか、客商売を舐めるな、寿司が泣いているなどなど! そのお店の悪い所を指摘し改善を求めるものばかり! それを素直に聞き入れ、改心した店主が寿司を見直し、美味い寿司を再び握るようになる……! これぞ! スシバトルですわ!」


 金星さんの演説が……ギャラリーを黙らせる!


 そして、ギャラリーの感情が一気に爆発する!


「し、知らなかった! 寿司警察とは真逆の行いじゃないか!」


「うおおおお! 鳥路ぃ! 応援してるぞー!」


「卑怯なスシバトル部なんかに負けんなぁ!」


 鳥路さんのこれまでの行いが……! ギャラリーの心を握った……!

 その鳥路さんはギャラリーの反応に戸惑いながらも少し嬉しそうな表情を見せている。



「でもさ! いわい寿司が潰れたのは本当の事だろ!? 鳥路さんじゃなかったら誰が潰したんだよ!」


「そりゃスシバトル強い奴だろうけど……まさか」


「ねぇ……もしかしてスシバトル部がやったんじゃない?」


「さっきからすげぇ卑怯だし……ドローンもあれだろ? スシバトル部とロボ研が組んでるんじゃ……」


 状況の変化によって生まれるのは……新たな疑念!


金星かなぼしぃ! 瑠璃子るりこぉ!!」

 

 笹垣の表情が怒りで歪む! 先程までの余裕の笑みは一切無い!


「可愛いお顔が台無しですわよ」


 金星さんが! 形勢を逆転させた! 何もかも! 凄い!


 

 その時! 体育館に響き渡る特大のノイズ音!

 マイクを思いっきり床に落としたような……! その場にいたほぼ全員が耳を塞ぐレベルの爆音!


 耳を塞いでいないのは……帯刀を睨む鳥路さんと。


 手にしたマイクを机に叩きつけた状態の帯刀だけだった。



「くだらない。私達は今スシバトルをしているんだ。そうだろ、鳥路英莉?」


 帯刀のあの目! あの時と同じだ! こいつを倒すには……寿司以外に無い!


「……その通り。みんな落ち着いて寿司に集中すべきだ」


 鳥路さんは意外にも帯刀の意見に賛成する。鳥路さんも寿司で決着をつけるべきと判断しているんだな。


「だが一つだけ言わせてもらう。お前は寿司を舐めた! その代償を……今日! この場で支払ってもらうぞ、帯刀冴!」


 鳥路さん!


「揃って同じ事を……! スシバトルを舐めるなよ鳥路英莉!」


 改めて啖呵を切った二人! ギャラリーが再び湧き上がる!

 熱狂……スシバトルの火が人々を燃え上がらせる!



「ええ……なにこれぇ……聞いてないよぉ。怖いんだけどぉ……」

 

 ……放送部のMCの女子が今にも泣き出しそうだ。

 完全に巻き込まれてるだけっぽいなこの人……


「おい、綿貫わたぬき! お前、司会だろ! 次の勝負を始めろ!」


 MCの綿貫さんが根木さんにマイクを無理矢理握らされて、ステージの中央に押しやられる。


「ううっ……もう! 次のお題はまさにマグロ! ここで鳥路さんが負ければその時点で終わりです! 本日の大一番! 全員最後まで付いてこりゃあ!」


 か、噛んだ!? いやでもギャラリーは気付いてないしめちゃくちゃ盛り上がってるし! 結果オーライ!

 

 ステージ上のモニターにマグロの文字が映し出される!


 さぁ、スシバトルの再開だ!

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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