第86話 アタックオブザスシバトルクラブ!⑤
前回のあらすじ:
どうしても都合が悪い時はスシバトルを断っても良い。
鳥路さんと司先生によって捌かれたアカマンボウはその日の晩、山本家の食卓に煮付けとして並ぶことになった。
◆◆◆
いよいよ明日は決戦の日。四天王最後の一人を今日倒す必要がある事、マグロがまだ確保できていない事……鳥路さんと金星さんを信じるしかない。
帯刀さんの寿司の弱点については最悪わからなくても良い気がしてきた。ここまできたら鳥路さんがベストを尽くせるようにフォローする方が大事だと思うし、今からルールに干渉する事も難しいからだ。それに……スシバトルの火元は今回のスシバトルできっと明らかになる。
「おはよ、山本くん」
「おはよう、鳥路さん! アカマンボウはもう食べた? 俺は煮付けになったよ」
「私は寿司になった」
予想通りすぎてちょっと笑ってしまった。
「いよいよ明日だね。アジの仕入れで笹垣が邪魔してこないと良いけど……」
「マグロの買い占めだけで相当なお金が動いていると思うし、笹垣本人のお金でもないだろうから流石にそれは無いと信じたい」
鳥路さんは溜め息をつきながら席に座る。
いくら笹垣が裕福とはいえお金は無限ではない。そうであることを祈っておこう。
「おはよう! とりっじ! 山ちゃん! アカマンボウ美味しかったよ!」
賀集さんの元気な挨拶はこっちも元気になる。
「賀集さんは何で食べたの?」
煮付けか寿司か、それとも焼き魚か。
「フライにしてもらった!」
アカマンボウって何にでもなるんだなぁ。
その時、勢いよく教室に飛び込んでくる影! 来たか……!
「鳥路英莉! スシバトルで勝負しろ! このスシバトル部四天王……」
朝のHRのチャイムが鳴った。
「……昼! 昼休みに来るからな! 逃げるなよ!」
名前も知らないスシバトル部四天王最後の一人が帰っていった。
タイミング悪いなこの人。
◇◇◇
昼休みになった。なったけど……
「来ない」
「来ないねぇ」
「忘れてるとかじゃないよなぁ?」
お昼休みになって既に五分程経過しているが四天王が来ない。
……鳥路さんと賀集さんはお弁当を取り出して食べ始めてしまった。
寿司じゃない鳥路さんのお弁当のおかずは……焼いたアカマンボウだなこれ。
「鳥路英莉はこのクラスか!? どの人!?」
来た! と思ったら四天王じゃない人だ。
「私が鳥路だけど……先約があるからスシバトルは無理」
鳥路さんがスシバトルの断りを入れる。約束は大事だ。
「ん、いや、その先約の件なのだけど。スシバトル部四天王の……ええっと、あの人名前なんだっけ……軍艦の人……とりあえず軍艦の人がですね! お腹壊したみたいで今保健室なんです! スシバトルは放課後にしてくれとの事です!」
「……あ、うん。わかった」
鳥路さんがこの場にいない可哀想な人に対して微妙な表情になる。
このまま一生スシバトルできないんじゃないかあの人……いやこっちはできなくて良いんだけどさ。
◇◇◇
放課後の家庭科室。
金星さんは引き続きマグロ探しに集中するため単独行動中……蛍さんも一緒だろうから正確には違うけど。
司先生はちょっと用事があるらしく欠席。でも明日は車を出してくれるとのこと。大量のアジを抱えて通勤電車乗るのはやめた方が良いもんな。
「てか流石に来るよね?」
「そ、掃除当番かもしれないよ!」
鳥路さんは練習がてらアカマンボウの残りを寿司にしている。現在二十貫目。
家庭科室の扉が勢いよく開かれる! 来た!
「はぁ……はぁ……待たせたな……す、スシバトルだ! 鳥路英莉! このスシバトル部四天王、軍艦の船渡が相手だ!」
別に覚え難い名前でもなかったな……というか既に疲れてるんだけど大丈夫かこの人?
「軍艦勝負?」
鳥路さんは相手の土俵で戦う気満々のようだ。
「ふふふ、察しが良いな。握りの練習をしているところ悪いが、軍艦で勝負してもらうぞ!」
ちょっと元気出てきたかな? とりあえずお腹は大丈夫そうだ。
「審査員はどうするの? この教室だと寿司同好会二人だけしかしないけど」
審査員を事前に用意しておかないと結構困る事に最近気づいた。玉川さんの時もそこら辺にいた生徒を連行してやったし。
「審査員は不要だ」
腕組みをして自信あり気に答える船渡さん。
「え? どうやって勝敗をつけるの?」
鳥路さんが首を傾げる。賀集さんも首が傾いているし、俺も多分傾いている。
「この私を満足させる軍艦を作ってみせろ! 鳥路英莉! 無論私もお前が満足する軍艦を作る! 対等な条件だな!」
……やべー奴が来たな。
「……食材は?」
鳥路さんの表情が一気に面倒くさそうなものに変化する。
「なまもの以外で」
「……え?」
鳥路さんが静かに驚く。今日は表情豊かだな。
なまもの以外……? マヨコーンとかツナとか? こっちも予想外なのが来たな……
「決して私が生魚でお腹を壊した事と一切の関係は無い。断じて違う。勝負に私情は持ち込まない主義なんだ」
そういう事ね……でも、相手を満足させる生の魚介類を使わない軍艦巻? すごく難しくないか?
「カニカマとか缶詰とか……野菜も買ってきたし、野菜も使って良いことにしよう」
船渡さんは背負っていたリュックから色んな缶詰と野菜を取り出しテーブルに広げていく。疲れていると思ったらわざわざ買ってきてくれたのか……お疲れ様です。
「さぁ始めようか! 鳥路英莉! スシバトルだ!」
なんか今までにない感じのスシバトルが始まってしまった。
船渡さん以外全員困惑しているのが空気でわかる。いや、これも相手の作戦か!?
「鳥路さん! この空気に飲まれちゃだめだ! いつも通りやろう!」
「……わかった!」
きっとこれが帯刀以外のスシバトル部員との最後の勝負だ! 頑張れ! 鳥路さん!
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◇◇◇
こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




