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第85話 アタックオブザスシバトルクラブ!④

前回のあらすじ:

スシバトル部四天王の三人目、玉子握りの玉川にスシバトルを挑まれた鳥路英莉。

玉川の完璧なだし巻き卵にその場にいた寿司同好会メンバー全員が驚愕した。

しかし、鳥路のだし巻き卵の技術も高く、双方レベルの高い玉子握りが完成した。

実家が弁当屋で完璧なだし巻き卵を作り続けてきたと豪語する玉川だったが、公平な審査の結果、勝利したのは鳥路の玉子握りだった。納得できないと待ったをかける玉川の口の中に鳥路は自分の焼いただし巻きを放り込む。玉川は気付いた。自分のだし巻きは単品での完成度しか見ておらず、シャリと合わせるにはわずかに甘さが弱かったことに。


◆◆◆


「流石はスシバトル部四天王……油断ならない相手だった」


 鳥路さんの言う通り、だし巻き卵単品での勝負だったらかなり危なかった。

 シャリと合わせるための絶妙な味付けの差異……そのわずかな違いが勝敗を分けるのだ。


「言い訳できないな……いや、噂通りの力量だった。望みはなんだ、鳥路英莉?」


 項垂れながらも清々しく負けを認める玉川さん。かなりの自信があったに違いない。弁当の卵焼き勝負だったら彼女の勝ちだっただろう。


「一週間スシバトル禁止」


 だがこれはスシバトル。無慈悲なスシバトル禁止令が鳥路さんの口から下される。


「……わかった。約束は守る」


 前二人に比べるとかなり大人な対応。前二人が子供だっただけかもしれないけど。


「なぜ帯刀冴の味方をする?」


 鳥路さんの疑問はもっともだ。そこまでする人物なのか、帯刀は?


「他の奴は知らんが……少なくとも私は部長の寿司は寿司屋のものではないという考えには賛同している。それに、部長が作成した寿司マニュアルのおかげで弁当屋の娘の私がこうして寿司を握れているわけだからな、信用しているよ」


 まともな理由だ。なるほど、玉川さんのように寿司は誰にでも作れるものという帯刀の主張に賛同する人がいるんだな。考えてみれば帯刀のそもそもの目的は寿司屋を潰す事じゃなかったはず……


「……あなたは帯刀冴が寿司屋を潰そうとしている話は知っているの?」


 部員はもしかしてこの件を知らないのかもしれない。鳥路さんの質問でそれがわかるはずだ。


「……知っている。正直、どうかしているよ」


「だ、だったら何でこんな真似を!?」


 思わず割り込んでしまった。おかしいと思っているのに帯刀を止めようとはしないのか!?


「もう何を言っても止まらんだろう。だったら、こうして部長と対峙する奴の力量を確かめるぐらいしか私にできる事はない」


 スシバトル部四天王の突発スシバトルにそんな意味が……


「海老原さんと黒金さんも私の実力を見るためにスシバトルを?」


 鳥路さんの玉川さんに対する態度が軟化している。戦闘モードの鳥路さんではなく、日常の鳥路さんだ。


「あいつらは部長に心酔して暴走してるだけだ。私みたいなのは少数派だろうな」


 やっぱり碌でもない連中だった。しかし、スシバトル部が一枚岩ではない事を知れたのは良かったのかもしれない。


「さて、やることはやった。私は表立ってお前達を応援はできないが……頑張れよ」


「……任せて」


 鳥路さんの返事を聞いて玉川さんは少しだけ微笑み、そのまま何も言わずに家庭科室を去って行った。

 玉川さんのようにまともな人がスシバトル部に多ければ今回の暴走は起きなかったのかも知れない……


 玉川さんと入違いになったかのようなタイミングで家庭科室の扉が丁寧に開かれる。まともな来客か?


「遅くなりました……何があったの?」


 約束通り松風先輩が来てくれた! 

 そして、テーブルに置かれたアカマンボウとスシバトル直後で色々散らかった家庭科室を見た松風先輩の反応は当然のものであった。



◇◇◇



 金星さんは再度マグロ確保のため先に下校。

 鳥路さんと司先生が協力してアカマンボウを捌いている後ろで、俺と賀集さんが松風先輩の話を聞くことになった。

 

「松風先輩、早速なんですけど……教えていただいて頂いても良いですか? あの日に何があったのか……」


 賀集さんは固唾を呑んで松風先輩の言葉を待っている。

 松風先輩は一呼吸し、ゆっくりとその口を開いた。


「……父が帯刀さんの寿司を否定したのは帯刀さんの技術が理由ではなかったわ」


「え、だとすると寿司の技術は認められていたんですか? だったらなぜ? 何が原因なんですか!?」


 技術に問題がなければ一体何が問題だったんだ?


「寿司職人とスシバトラーには明確な差がある、と」


 寿司職人とスシバトラーの違い? どっちも寿司が握れるって共通点以外に何が違う? スシバトルするかしないかの違い? でも寿司職人もスシバトルしてくるしなぁ! そもそもその頃の帯刀はスシバトラーの自覚がなかったはず。立ち振る舞いで判断されたのだろうか? うーん……わからない!


「こ、琴音さん? 他にお父さんは何か言わなかったの?」


 賀集さんもそれだけではわからないといった感じ。

 松風先輩は賀集さんの質問に首を横に振る。


「……あとは私と鳥路さん、私達二人を見ている人にはわからないだろうな、とだけ。はっきりとした答えまでは教えてくれなかったわ」

 

 溜め息をつく松風先輩。もどかしいのは先輩も同じのようだ。

 

「ど、どういう事だ? わかる? 賀集さん?」


「わかんない……」


 職人の悪い所出てると思いますよ、松風先輩のお父さん!

 自分で答えを見つけるのは大事だと思いますけども、俺は早く答えが欲しかったんですよ。でも、こんな事を松風先輩に言うもんでもないし、大人しく自分達で考えるべきだろう。


「……わかりました。考えてみます! 松風先輩もご丁寧にありがとうございました」


「ごめんね、あまり力になれず。私も答えがわかったら連絡するわね」


「いえ! 全然! 助かりました! わかったらお願いします!」


 考えるべき事が絞り込まれただけありがたい。寿司職人とスシバトラーの違い……帯刀さんの弱点になるのか……? それとも……


 家庭科室の扉が勢いよく開く! 今日何度目だよ!


「鳥路英莉! 私とスシバトルで勝負しろ! このスシバトル部」


「忙しいから無理。明日にして」


 こ、断った! 

 鳥路さんはアカマンボウの解体に集中していて、乱入してきたスシバトル部員の顔すら見ていない!

 いや、流石にスシバトルを断るのは無理じゃない!?


「……また明日来るからな! 逃げるなよ!」


 ピシャンと扉が閉められ、名前も知らぬスシバトル部員は帰っていた。


 ……断れるんだ、スシバトル。

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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