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第84話 アタックオブザスシバトルクラブ!③

前回のあらすじ:

スシバトル部四天王の二人目、鉄火巻の黒金にスシバトルを挑まれた鳥路英莉。

黒金は熟練の巻技術で作った鉄火巻を全て均等に切り分け、その力を見せつけてくる。

しかし、鳥路はそれらの技術に加え、自前の包丁「スッシーフィン」で巻物の切り口まで完璧に仕上げて見せた。黒金の鉄火巻は包丁の切れ味の悪さで不要な力が入った事で食材が潰れ、切断面に僅かな歪みが生まれていた。二人の勝敗を分けるには十分な理由であった。


◆◆◆


「流石はスシバトル部四天王……油断ならない相手だった」


 鳥路さんの言う通り、黒金さんの巻技術は鳥路さんと互角だった。鳥路さんが自宅で使っている包丁を持ち込んでいなかったら勝負は危なかったかもしれない。道具による差で勝敗が決まるとは……スシバトルが厳しい世界なのだと再認識した。


「くそっ、なんだその包丁は……! データになかったぞ!」


 この人データ系スシバトラーなんだ……


「だが、負けは負けだ。望みを言え、鳥路英莉!」


「お前は一週間スシバトル禁止だ」


 鳥路さんの無慈悲なスシバトル禁止令、これで二人目。


「ぬううううっ!? ひ、卑怯だぞ! だがなぁ! スシバトル部の絆はこんなもんじゃねぇ! 覚悟しておけ!」


 それだけ言い残して撤収していく黒金さん。四天王だからあと二人は襲ってくる感じか……


「鳥路さん! やっぱり自宅の道具を使う方針で正解だったね!」


「山本くんのアドバイスのおかげ」


 鳥路さんが使い慣れている以上に、鳥路さんの使っている道具は質が良い。特に包丁なんかは家庭科室の包丁がなまくらに感じる程の切れ味だ。


「スシバトルお疲れ様! とりっじも山ちゃんもお昼一緒に食べない?」

 

 遠くで見守っていてくれた賀集さんがお昼を誘ってくれた。俺も良いのか?


「ちょっと待って」


 鳥路さんはそう言いながら黒金さんが置いていった食材を使い鉄火巻を作り始める。


「さっきも食べたけど、良いマグロだよね、これ」


 鉄火巻に失礼かもしれないけど、普通に握りで出せそうな鮮度のマグロだった。


「多分クロマグロ。良いものを使っている」


「本マグロだっけ? 私も食べてみたい!」


「みんなで食べよう」


 均等に切られた鉄火巻は鳥路さんが買ってきた助六寿司の上に乗せられていく。

 

 放課後になったら俺達のマグロがどうなっているか確認しないとな……今は昼休みが終わる前に栄養補給だ!



◇◇◇


 

「え!? マグロが手に入らない!?」


 放課後の家庭科室、頭を抱えた金星さんから衝撃的な状況を聞かされる。


「ええ……先約や契約があるなどで競りにもあがらず……困りましたわ」


 金星さんの人脈でも手に入らないものとかあるんだ……いや、それよりこれはかなりまずいぞ。


「金星グループがそもそも食品系にそこまで強くないのもありますが……ごめんなさい、私の実力が足りていませんでしたわ」


 金星さんを責める事はできない。俺達ではそれこそどうしようもない話だ。


「むう……」


 鳥路さんは腕組みをしながら思案しているようだけど、良い案は思いついてなさそうだ。


「つ、釣ったりできないかなぁ、マグロ!」


 賀集さんの大胆な案。一本釣りとか聞いたことあるし、できないことも……ないのか?


「ダメよ、許可なしじゃ。今の時期じゃもう間に合わないし……困ったわね」


 司先生からNOが出た。そう簡単な話ではなさそうだ。

 五本勝負の内のマグロを捨てて、他に専念する作戦もありか?

 いや、こちらが残り四本で勝てる自信があればという前提の上で成り立つ作戦だ。そんな簡単に諦められるものではない。


 家庭科室の扉が勢いよく開く。大体金星さんか良くない来客……金星さんがいる今、良くない来客に違いない。


「しけた顔してるわねぇ! 寿司同好会!」


「さ、笹垣っ!? 何しに来た!?」


 ニヤニヤした顔でこっちに近付いてくる笹垣。


「もしかしてぇ? マグロが手に入らなくって焦ってる感じぃ? キャハ! 無様ねぇ、金星瑠璃子!」


 どうして笹垣がそんなことを知っているんだ!?


「笹垣さん……あなた、まさか……」


 金星さんが笹垣をにやけ顔を見て何かに気付く。

 ……俺も気付いてしまった。


「笹垣、お前……マグロを買い占めたりとかしてないよな?」


 そんな事できるわけないと思って切り捨てていた可能性。だが、こいつの顔を見たらやりかねないという感情が上位を占めていく……!


「あはっ! 人のせいにしないでくれる? 今日から全国の寿司王国でスーパーマグロフェアをするだけなんだけどぉ? いろんな所からマグロを掻き集めて安く美味しく提供させていただくのよ! あははっ! まぁあんたらは食べに行く暇ないでしょうけど!」


 笹垣っ! や、やってくれたな! 本当にやる奴があるかよ!


「笹垣さん、あなたって人は……!」


「その顔! ずっと見たかった! 金星瑠璃子が悔しがる顔! 寿司では私の方が上ってわかったでしょ! ここ一番の勝負所であんたは負けるの! あははっ!」


 くそっ、こいつ!


「まぁ? でも、本番であんたらの審査でシャリだけ食べる審査員が可哀想でしょ? 特別に譲ってあげるわ!」

 

 笹垣が指をパチンと鳴らすと、配送業者っぽい人達が何かを家庭科室に運び入れる。この大きさ……まさか、マグロ!?


「これが私からのプレゼントよ!」


 魚体を隠していたシートが剥がされると出てきたのは……なんだこれ。マグロではないのはわかるけど。


「アカマンボウ!」


 鳥路さんがその正体を口にする! やっぱりマグロじゃないじゃないか!


「よく知ってるわね……ま、まぁ! あんたら見たいな寄せ集めにはマグロのパチモン! このアカマンボウがお似合いよ! でもでもぉ? 私ならこんなんでスシバトルするぐらいなら辞退するけどねぇ! きゃはは!」


 さ、笹垣ぃ! こんなことするためだけに準備したのかよ!?


「……くれるの?」


 鳥路さんがアカマンボウを指差して笹垣に確認する。


「え? 何その反応。いや、あげるけど。まさかあんた本当にアカマンボウでマグロ勝負に挑むつもり?」


 鳥路さんの想定外の反応に困惑する笹垣。というか俺も困惑している。


「いや? アカマンボウはアカマンボウで美味しいから、あとで捌いて寿司同好会の寿司ネタで消費する。ありがとう笹垣」


 あ、美味しいんだこれ……


「そ、そうじゃないでしょ!? あんたらはマグロが手に入らなくてスシバトルで不利になってるって言ってんの! バカじゃないの!?」


 笹垣から焦りが見える。渾身の煽りが鳥路さんに通用していないのだから、そりゃそうもなるか。


「馬鹿はお前だ。この程度の茶番で私達が諦めると思っていたのか? 金星さんなら……いや、寿司同好会は必ず本番でマグロを用意する」


「うぐ、つ、強がりを! そんな事言って! 手に入るはずがない!」


 鳥路さんのレスバに押される笹垣。

 

「……笹垣さん。この金星瑠璃子、諦めの悪さなら自信がありますわ。必ずどんな手段を使ってでもマグロを準備します。どんな手でも……!」


 金星さんが扇子を開いて口元を隠しながら笹垣を睨む。


「な、何よ! くそっ! こいつらと話してたらイライラする! 万が一用意できたところで勝つのは部長よ! せいぜい足掻くと良いわ!」


 笹垣は扉を勢いよく閉めて家庭科室を出て行った。

 ……業者の人達は一礼してから静かに扉を閉めて去って行った。


「金星さん……そうは言っても、厳しいんじゃない?」


「いえ、何とかしますわ。必ず!」


 金星さんの目の奥に炎が見える。笹垣、虎の尾を踏みに来ただけだったな。


「……とりあえずアカマンボウをどうにかしよう」


 鳥路さんの言う通り、このまま放っておけないしなこれ……


 バァンと家庭科室の扉が開く! 厄介な客確定!


「鳥路英莉! スシバトルで勝負しろ! スシバトル部四天王、玉子握りの玉川たまがわが相手だ!」


 四天王三人目だ。今度は玉子の寿司かな?

 とにかく……スシバトルが始まる!

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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