第75話 ザビギニングオブスシガール③
前回のあらすじ:
鳥路さんの寿司を信じろ。
◆◆◆
「私の……良いところ?」
「鳥路さんはとにかく寿司に対して真摯な姿勢を崩さない。寿司のためなら夜更かしするし、手間暇も一切惜しまない。あとはスシバトルの寿司も余った食材も残さないようにしてるし……これは食べ物を扱う上でとても大事なことだと思うんだ」
「それは当たり前じゃない?」
「スシバトル部の寿司は……なんだろう勝つために特化してる気がするんだ。美味い寿司を握る勝負なら気にならなかったけど、そうじゃない時は勝利条件を満たしただけで美味しさとか無視してる気がする」
体育祭の帯刀さんのウニの握り、轟さんのスシドライバーは良い例だと思う。松風先輩は逆に寿司の美味さや寿司屋の誇りを感じた。笹垣は……両方の側面を持っているのかもしれない。
「……真摯な姿勢」
「だからスシバトルだからと言って勝ちに拘りすぎてしまうと鳥路さんの良さが無くしてしまう気がする。勝つためじゃなくて、美味しい寿司を握ろうとする姿勢……ここは俺達が守るべきものだと思う」
「大丈夫、私は勝つためだけの寿司は握らない」
鳥路さんならそう言ってくれると信じていた。
「あとはレスバが強いところとか」
「レスバ?」
無自覚で相手の痛い所突いてるのか……これは意識して貰わなくても良いかも。
「相手の弱点を見つける力みたいなものかな、ごめん忘れて。えっと、あとは身体能力と体力が凄い!」
「寿司を握るだけならそんなに必要ないんじゃ?」
そうかも……
「でも、ほら、基礎能力は高い方が色々と便利だと思うし! あとは、ええっと、今はスッシー関係ないし……あ、でも好きな事だといっぱい喋ってくれるよね! 寿司の時はかっこいいけど、それ以外だと可愛いというか……」
「や、山本くん?」
「色々自由にやってるようで先生とかにはちゃんと相談したり確認取ったりしてて真面目だし。レスバが強いとは言ったけど相手へのリスペクトを忘れていないというか、鳥路さん優しいよね! 友達思いだし! あとなんだろう……いっぱい出てくるな!」
「山本くん!」
「うん? 何か気になるところがあった?」
「そ、その……恥ずかしいんだけど……」
鳥路さんはスッシーで顔を隠しながらか細い声で俺に訴えかける。
……自分が何をやらかしたのか気付いた。
「ああああ!? いや、そのこれは、本心じゃ……違う! 本心なんだけど! そういうのじゃなくて! 俺は、その、なんだろう! なんだろうね!?」
やらかした! 自分の顔が真っ赤になってる感覚が凄いある!
「あらあら……もうそこまでの関係なの? 明仁さんが聞いてたら失神しそう!」
「鳥路さんのお母さん!?」
開いたドアの横から顔覗かせている鳥路さんのお母さん!
ど、どこから!? どこから聞いてたの!? 全然気配とか感じなかったんだけど!?
「桜香さんと呼んでくれて良いのよ、山本くん」
桜香さんは新しい玩具を見つけたかのようなニヤニヤした顔を俺に見せる
と、鳥路さんが絶対にしない顔だ!
「英莉ー? お酢の量がちょっと足りなさそうだから外の空気を吸うついでに買ってきてくれない? お金はこちら。お釣りは不要よ」
桜香さんがどこからか取り出したお札をひらつかせる。
「わ、わかった。すぐ行ってくる!」
「え、鳥路さん!? まっ……」
鳥路さんが倍速のように立ち上がりお金を受け取ってリビングから一瞬で出て行ってしまった。速すぎて鳥路さんの顔は全然見えなかったけど、耳は、その、赤かった気がする……
「よっこいしょっと」
鳥路さんが座っていた場所に桜香さんが座る! 俺の正面!
「あの、俺も鳥路さんの買い物の付き添いに……」
「大丈夫よ。それに、私は山本くんに用があるの」
「あ、はい……」
圧迫家族面接、終わってなかった……
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




