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第71話 フィクショナルスシポリス④

前回のあらすじ:

鳥路さんと根木さん、それぞれの寿司が完成。素材も同じで見た目はほぼ変わらず……勝敗を分ける要素とは……


◆◆◆


 見た目だけでは差がほとんど無い二つの寿司。果たして俺の舌はこの二つの違いを感じ取ることができるのだろうか……まずは根木さんの寿司から頂こう。

 ……美味い! 冷凍庫に眠っていたマグロでもここまで美味しくなるのか! シャリやネタの質ではっきりとは言えないけど、良いお店の寿司だと言われて食べても恐らく疑わない出来! 


「美味い! 前に食べた根木さんの中トロより絶対美味い!」


「まぁあの時の中トロはスーパーで買ってから何も下処理してなかったからな。多分今のマグロは鳥路が下処理した時のと同じぐらいの品質にはなってるだろう」


 根木さんに言われて確かにと思った。


「やっぱり職人さんが握ると違うもんだねぇ、美味しい!」


「栄寿司とちょっと違いますが、十分美味しいでーす!」


 賀集さんとサブリナさんも高評価のようだ。


「流石は根木さん。美味しいですわ」


 金星さんのコメントとしては控えめに感じるが美味しいことに違いはないようだ。今回は素材も何もかもわかっているしね。


「鳥路に謝っておきたいことが一つだけある。お前が道民で素材ありきの寿司バトラーだと言ったのは演技でもなく私の本音だった。実際には違ったがな、悪かったよ」


 そんなことも言っていた気がする。


「気にしてない」


 まぁそれぐらいでダメージを受ける鳥路さんではないか。


「……あとはお前が何者かだけだな。とにかく鳥路の寿司も食べてみろ。差がわからなかったら無理に優劣は付けなくて良いぞ」


 根木さんに言われ鳥路さんの寿司を口にする。

 ……うん、やはり美味しい。鳥路さんの寿司だとわかる。

 ただ、その……根木さんの寿司と何が違うかと聞かれると……


「お、同じじゃない?」


「だよね!? どっちも美味しいよ!」


「オーウ……握り方だけでは差が出ないんでしょうか? サッパリでーす!」


 俺達三名は二つの寿司は同じクオリティだという評価になったようだ。

 金星さんは……


「……そんな、なぜ?」


 金星さん?


「わずかに、本当に少しだけ、鳥路さんのマグロの方が生臭さが強いですわ……」


「なっ!?」


 確かに今日のマグロからはほんの少しは魚臭さはあったけど……それは根木さんも鳥路さんも同じ条件で、実際に差が出るような違いはなかったはず! 金星さんの味覚が鋭いからわかるのか!? それでも根木さんと差が生まれる理由にはならない!


「な、なぜ!?」


 鳥路さんも動揺を隠せない!


「……理由は三つある」


 根木さん!? こうなるとわかっていたのか!?


「一つ目は鳥路が金星の寿司を握ったのは一番最後だったこと」


 そうだったかも……


「二つ目は鳥路が本手返しで寿司を握っていること」


 俺が松風鮨の時に知った情報だ。


「三つ目は鳥路が人より体温が高いこと。あんだけ動き回れるんだ。見た目以上に筋肉が多いとかそんなところだろう」


 筋肉がなきゃあれほど機敏には動けないよな……でも、その三つが寿司にどう影響するんだ?


「……寿司の温度の変化量が鳥路さんの方が大きかったという訳ですわね?」


 金星さんの回答に根木さんが頷く。鳥路さんもそれを見て驚く! 温度!?


「正直誤差だし気付かない方が普通だろうな」


「逆に根木さんはなんで温度の変化がでなかったんだ!?」


 ほぼ同じ条件で握っていたはず! なのに鳥路さんだけ影響が出るなんてこと……!


「私は小手返しで手数も少ないし、体温も普通だと思う。一番の要因は……」


 根木さんが制服のポケットから何かを取り出しテーブルに放り投げる。


「握るまでの少しの間に私はこいつで手を冷やしていたからだな」


 保冷剤!? 冷蔵庫にマグロを置いた時とかに冷凍庫から取り出してたのか!?

 

「ああっ!?」


 鳥路さんが大きな声をあげる。

 

「鳥路。お前は確かに素人にしては寿司を握るのが上手だし、素人扱いする気もさらさらない」


 根木さんが言葉を続ける。


「……だが、同時に職人ではない。お前はまだ自分の寿司を見つけていないだろ」


 じ、自分の寿司!?


「金星! 私の勝ちでいいな!?」


「え!? それは、そう……そうなりますわね……」


 俺と賀集さんとサブリナさんは二つの寿司は同じと評価した。金星さんだけが鳥路さんの寿司の欠点を言い当てた。俺にはこの結果を否定する資格もない!


「この勝負、根木さんの勝ちですわ……!」


 鳥路さんが連敗!? お、俺達は悪い夢を見ているのか!?


「私が勝ったってことは鳥路は私の言うことを一つ聞く、あってるな?」


「……わかってる。何でも言って」


 鳥路さんは表情を崩さないが、その手は小さく震えている。

 根木さんは鳥路さんに何をさせるつもりなんだ!? 鳥路さんが寿司警察だと認めさせるつもりなのか!?


「鳥路」


「……」


 鳥路さんが目を瞑る!

 何でだ! 何で鳥路さんが……!



「お前にとって寿司とは何だ? 答えてくれ」



 根木さんの質問。それは……俺の想像とは全く違うものだった。

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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