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第67話 スポーツデイアンドスシバトル⑥

前回のあらすじ:

組対抗リレー! 勝つのは赤組か白組か!?


◆◆◆


 運動部のエース達が抜きつ抜かれつつを繰り返しバトンを繋いでいく。

 現段階で勝負は互角と行ったところだろうか。

 

 レースも後半に近づくとアンカーである鳥路さんと帯刀さんが配置について、走者の到着を待つ。そして白組と赤組の両者はほぼ同時にバトンがアンカーに託された。


「おおおお!? 速い! 赤組白組ここまで互角の勝負でアンカー対決となりましたが、ここでも速度は互角! 勝敗を分けるのはスシバトルか!? それとも勝利への執念か!」


 放送部の実況の通り鳥路さんと帯刀さんの走力は互角! 運動部じゃない二人がスシバトル以外の要素で熱い勝負をするのでギャラリーは大盛り上がりだ。


「とりっじー! がんばれー!」


「鳥路さーん! 行けますわー!」


 賀集さんと金星さんの応援にも熱が入る。


「鳥路さん行けー!」


 もちろん俺もだ。

 二人の頭に巻かれた長めの鉢巻が赤と白の光の軌跡のようにグラウンドを駆け抜けていく!


「さぁ、ここからスシバトルゾーン! 事前にお二人には伝えていますが、今回のお題目はリレーのスピード感を活かした早握り対決となります! しかし、何を握るかはまだ伝えていません! 箱を開けてのお楽しみ!」


 実況の説明通りコースに配置されたテーブルには二つの箱が置かれている。あの中に食材が……しかし、このままだと鳥路さんより握りが速い帯刀さんが有利。どこかで差をつけたいが、その機会は訪れない。こうなると寿司ネタ次第だ。


 二人がほぼ同時にテーブルに到着! 両手の消毒を済ませ綺麗なタオルでスシバトルの準備に入り箱を開ける!


「ここで食材が公開! 遠くで見えない生徒の皆様にもお伝えしましょう! 今回はウニの握りです! 校長のポケットマネーで結構良いお値段のウニです! 軍艦ではなく握りです! 繊細な動作が必要とされます! 急がなければいけない状況でどう握る!? さらに握った寿司が問題無いかを審査員が確認! 問題があればやり直しとなります!」


 う、ウニの握り!? あんな柔らかい物を握れるのか!?

 確かにウニの握りが存在するのは知っているけど、凄く高い技術が求められるんじゃないの!? 普通は軍艦に乗ってるネタだぞ!


 鳥路さんと帯刀さんが同時にシャリを手に取り、よく冷えてそうなウニと合わせて握りに入る!

 鳥路さんは特に慌てた様子を見せず、いつものように丁寧に、そして早く握る!

 ウニという特殊なネタにも関わらず冷静だ! そしてこの迷いのなさは鳥路さんは握れる! これは……勝てるかもしれない!


「おおっと! ここで帯刀さんがウニを握り終えた! 審査員のチェックが入ります!」


 なっ!? いくら何でも速すぎる! 一手握りのような動きもなく普通に握っていたはずなのに!?

 鳥路さんもその速さに驚いたような表情を見せる!


「問題なし! 審査員の許可がおりました! ちなみに審査員は寿司に詳しいと豪語する我が放送部のメンバー二人が対応しています」


 それは大丈夫なのか? いや、食べるわけじゃなくて形が寿司になっていれば通る感じか! 帯刀さんはそれを見抜いて最低限の動きで握ったとでも言うのか!?


「鳥路さんも少し遅れて握り終え、今、合格! しかし、この差は大きい! 鳥路さん間に合うか!?」


 帯刀さんが走り始めてから数秒後に鳥路さんがスタート! 互角の勝負をしていた二人にその数秒は致命的だ!


「おおっと! 鳥路さん! 速い! 追いつくか!? 追いつくのかー!?」


 鳥路さんが加速する! まだ余力を残していたんだ! 届くか!? 


「いっけええええ!! 鳥路さーん!!」


 先にゴールテープを切ったのは……!



「ゴールしたのは! 帯刀さん! よって勝者は赤組! 赤組の勝利です! 鳥路さんわずかに届かない!」


 負けた……鳥路さんが……結果的にもスシバトルでの影響が大きいのは明らか。

 帯刀さんは、鳥路さんよりも……強い! 


 全力で走って息を切らしながらも勝利をアピールするように握った右手を高く掲げる帯刀さんに赤組の生徒達が集まっていく。


 鳥路さんはすでに息が整っており静かにその様子を見つめていた。

 白組の生徒達が鳥路さんに健闘を賞賛したり、励ましの言葉をかけているように見えるがその声は歓声に掻き消され俺の耳に入ってくることはなかった。


「とりっじ……後少しだったのに……」

 

 しゅんとする賀集さん。俺から見ても後少しだった。


「握る速度が勝敗を分けましたわね……帯刀さんがあそこまで早く握れるとは……」


 金星さんの言う通り前に見た時よりも圧倒的に帯刀さんの握りは早かった。あの時ですら手加減していたと言うことか? 正面からぶつかって鳥路さんが負けた事実は俺達には重すぎる現実だった。


 鳥路さんがコースを逆走してウニの握りの置かれたテーブルに向かう。

 ……何かあったのか? いや、食べに戻ったのか? でもそんな表情には見えない。俺達は鳥路さんの行動に違和感を覚え、慌ててテーブルへと駆け出す。


「鳥路さん! ウニの握りに何が……ああ!?」


 テーブルの上に置かれた寿司を見てなぜ鳥路さんが駆け寄ったかをすぐに理解した。

 片方の寿司はしっかりと形を保ったまま。もう片方の寿司は……シャリが崩れ寿司としての形を成していなかった! 配置的にそれは……帯刀さんが握ったものだ!


「……酷い」


「崩れてる! と、鳥路さん、これ帯刀さんの反則負けになるんじゃない!?」


 鳥路さんは悔しそうに首を横に振る。な、なんで!?


「はぁ……はぁ……し、審査員が許可した段階で形を成していれば問題無いルール、ですわ……帯刀さんは、げほっ、ルールの範疇で最低限の握りを……」


 息絶え絶えの状態で金星さんが解説をしてくれた。確かにそうだけど……それじゃあ、最初からこの寿司は……!


「食べるためじゃなくて……す、スシバトルに勝つためだけのお寿司ってこと!?」

 

 賀集さんは両手で口を押さえショックを受けている。

 帯刀さんにとって寿司は食べ物ではなく、争いの道具でしか無いってことなのか!?


「こ、これがスシバトル部のやり方!? 本来のスシバトルとでも言うのか!?」


 俺達がこれから相手をするのは寿司を寿司だと思わない部長がまとめるスシバトラーの集まり! これが金星さんが抑え込んでいたスシバトル部の実態なのか!?


 鳥路さんは崩れたウニとシャリを手で掬い、ゆっくりと食べ始める。


「寿司が……! 泣いている……!」


 それはただの怒りではなく、悲しみを含んだ鳥路さんの叫びだった。


 しかし、その声はやはり歓声に掻き消され、俺達以外の人達に届くことはなかった。


◇◇◇

スポーツデイアンドスシバトル おわり

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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