第55話 ネコマタズシクライシス④
前回のあらすじ:
寿司は心で握る。
◆◆◆
賀集さんと司先生が鳥路さんの準備していたシャリと冷凍庫に保管されていたスシバトルの余り物を使って寿司の練習を始めたその裏で俺と鳥路さんはねこまた寿司のサーモンについてスマホで調べていた。
「サーモントラウトね……」
鳥路さんは若干残念そうではあるけど仕方がないといった感じの表情。
というか寿司屋のサーモンって種類があるんだ……
「あ、でも、契約した養殖業者のサーモントラウトのみ使用って書いてるし、しっかり管理してるって事だよね? これだと何か良くないの?」
「サーモントラウトは確かによくサーモンの寿司に使われているけど……まぁサーモンとして扱って良いはずだし問題ないか」
鳥路さんのその言い方だと……サーモントラウトって……いやいや、そんな訳……
「サーモントラウトって、サーモンというかサケの品種か何かだよね?」
「ニジマス」
「ニジマス!? ニジマスってマスじゃない!? サーモンじゃないってこと!?」
「いや、サーモンではある。一応」
さ、サーモンがわからなくなってきたぞ!?
「サーモンって何!?」
「サケ目サケ科サケ属なら大体サーモン扱い、正確には違うけど……日本語のサーモンという言葉自体に答えが無い」
「そんなに複雑なのサーモンって……」
身近な食材なのにとんでもない魚だなサーモン……
「山本くん、必要なら消費者庁のガイドラインの件から説明するけど?」
混乱する俺に気付いて司先生が声をかけてくれた。
「と、とりあえず大丈夫です! サーモントラウトがサーモンで問題ないのはわかりました!」
難しい話は後でいいや……そうなると気になるのは……
「寿司王国のサーモンって何使ってるんだろう?」
「なるほど。知っておいて損はないわね」
鳥路さんの同意を得て寿司王国のサーモンの種類を調べる。
「アトランティックサーモン、サーモントラウト、ギンザケ……何で三種類も?」
「よくあること」
よくあるんだ……
「ん? 寿司王国が期間限定で天然サクラマスフェアやってるみたいだけど……サクラマスってサーモンではないよね?」
「サクラマス!? い、いつまで!?」
鳥路さんが俺のスマホを覗き込む。ち、近い……
「昨日から……来週までだね。スシバトルに使おうと思えば使えるね」
「笹垣っ……! だからサーモン勝負を!」
「……やられたわね」
鳥路さんと司先生が険しい表情を見せる。賀集さんは寿司を握る練習で精一杯で話は聞こえていないようだ。寿司の出来の方は……伸び代が多そうだな。そ、それより!
「サクラマスってサーモンなの!?」
「うーん……サケ目サケ科だしサーモンと呼んで問題ないけど……サクラマスって表記した方が良い希少な高級魚だし……」
鳥路さんが腕を組んで唸りながら答えてくれた。
「笹垣さんはスシバトルでサクラマスを使うつもりね……あ、賀集さん、力入れすぎよ」
「は、はい!」
司先生が賀集さんの指導に戻る。とにかく俺達は高級魚のサクラマスを相手にしなきゃならないって事だよね? よく分からないけど勝てるのこれ?
「鳥路さん? サクラマスって、その……美味しいの?」
「美味い」
「さ、サーモントラウトよりも?」
「好みの差はあると思うけど……私はサクラマスの方が好き」
しかも握るのは鳥路さんじゃなくて伸び代たっぷりの賀集さん。
「か、勝てるよね? 鳥路さん?」
「……うーん、いや、でも、あー……」
こんなに悩んでる鳥路さん見た事ないぞ!?
「今からサーモントラウトがサクラマスになったりしないかなぁ!?」
混乱しすぎて自分でも無茶苦茶言ってるとわかる発言をしてしまった。
鳥路さんも目を丸くして驚いている。ごめん、忘れて……
「それだ。山本くん」
鳥路さんが俺の世迷いごとを拾う。
「え? いや、無理だよね?」
「それっぽくはできるはず……それに今回の勝負の鍵は賀集さんだし。司先生! スーパー行ってきます!」
「領収書貰ってきてね!」
なんか急に話が進んでるんだけど!?
「行こう、山本くん。試すにしても時間がない」
「わ、わかった! よくわかってないけどわかった!」
家庭科室を飛び出した鳥路さんを追う。足速いな本当に……
玄関で待ってくれそうではあるけど、俺も走った方が良さそうだ。
正直、どうやってサクラマスに勝つのかわからないけど……今は鳥路さんを信じるしかない!
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




