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第51話 スシガールズホリデー④

前回のあらすじ:

スッシーは大人も子供も楽しめる作品だった。

五巻がなんかすごいらしい。


◆◆◆


 鳥路さんに輝理かがりを任せ、俺はレジに並んで会計をすることに。スッシーの原作一から六巻をまとめ買いする男子高校生は客観的に見てどう映るのか……

 普段あまり散財しないのはこうした突発的な購入欲のためなのだけど、まさかそれがスッシーだとは今朝の俺は思いもしないだろう。店員さんに提示された額をちょうどで支払い、レシートを財布に差し込んで待たせている二人のところに戻る。

 

「それにしても君達可愛いねぇ。もしかして姉妹? 詳しく知りたいなぁ、やっぱ俺達とお茶しようぜ?」


「俺達奢っちゃうからさぁ」


 変な輩に絡まれてる!? この短時間で!?


「友達を待っているだけ……今帰ってきた」


 鳥路さんと目があう。ナンパな男達は俺を見てニヤつきながらこっちに近づいてくる。


「はっ! 女二人侍らせるのは荷が重くねぇか兄ちゃん!」


「俺達が手伝ってやるよ」


 めちゃくちゃ言ってくるなぁ……というか輝理が怯えてるじゃないか。


「一人は俺の妹でもう一人はクラスメイトです。別に重くも何ともないので大丈夫ですよ」


「小さい方が妹か。へ、じゃあとっとと連れて帰んな」


「もう一人は俺達がエスコートしてやるからよ」


 そう言う訳にはいかないだろ。


「……お二人は寿司を握れますか?」


「はぁ? 握れるわけねぇだろ!」


「大学生は寿司握る勉強しねぇんだわ!」


「じゃあ、脈なしだ。諦めた方がいい」


「ああ!? 何言ってんだてめっ……!?」 


 一触即発の雰囲気だったが男の一人の動きが急に止まる。

 男の股間を見ると蹴り上げる寸前の足がビシッと静止していた。鳥路さんだ!


「……失せろ」


 凄まじい殺気!


「な、舐めやがっ!?」


 もう一人が襲いかかる前に鳥路さんの足がその男の股間を蹴り上げる直前で寸止めされる。速い! やわな人間では太刀打ちできないレベルの反射神経と身体能力!


「二度は言わない」


「な、なんだこんな女!? こんなのこっちから願い下げだぜ!」 


「ばーか! 覚えてやがれ!」


 捨て台詞を吐いて男達は逃げ去っていった。残念ながら覚えていられる自信はない。


「お兄ちゃん!」

 

 輝理が俺に抱きつく。怖い思いをさせてしまった。


「悪い、短時間でこんなことになるなんて。もう大丈夫だぞ」


「ごめん、山本くん……私がはっきり断らなかったから……」


 しょんぼりする鳥路さん。先程までの鬼神の如きオーラは影も形もない。


「鳥路さんは悪くないよ! 今時いるんだなぁ、ああいうの。それより助かったよ、俺もどうするか全然考えてなかったからさ」


 まぁ暴力沙汰になったら警察案件だし、向こうも馬鹿じゃなければそんなことにはならないとは思っていたけど……いざそんな場面に立ち会うと怖いものは怖いってなった。

 それよりもこの悪くなってしまった空気を何とかしたい。どうしようかと悩んでいるとスッシーと目が合った。


「……スッシー! お前に二人を任せたのに何たるザマだ!」


「ごめんよ葵くん! ご覧の通り手も足も出なかったからさぁ!」


 鳥路さんの背中のスッシー相手に一人二役の演劇を始める。

 ちょっと声を張り上げてしまったので周囲の目線が痛い。


「その長い首は飾りなのかスッシー!?」


「この長い首は争いの道具じゃないんだよ葵くん!」


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん恥ずかしい! 私は大丈夫! 大丈夫だから!」


 輝理はいつもの調子に戻れたかな。良かった。安いもんだこの程度の羞恥心。

 鳥路さんは俯いて……笑いを堪えている。


「す、スッシーが絶対言わないセリフ……っ!」


 俺の原作解像度が低すぎて面白かったらしい。


「これから勉強するから許してほしいな」


「ふふ、ちょっと、落ち着くまで、待って、ふっ!」


 そんなに? 鳥路さんの笑いのツボがよくわからない。


「ふう……ごめん、ありがとう山本くん」


 鳥路さんがいつもの調子に戻った。心なしか口元がまだ緩んでそうだけど……


「これで今日の思い出が楽しい感じに染まってくれたら俺は嬉しいよ」


「……良い人だね、山本くん」


「そう? 普通だと思うけど」


「そうそう! お兄ちゃんは良い人止まりなの! 刺激がない男とか言われてるんだよ!?」


 え? 何それ知らない。そんなこと言われてたの俺? 輝理さん、あとで詳しく。


「ふぅん……」


 鳥路さんのその顔はどういう感情だ? 最近表情で感情が読み取れるようになってきたけど、今のはわからなかったぞ。


「面白かったから賀集さんと松風先輩に教えても良い?」


「それはやめて」


 今になって恥ずかしくなってきた。

 いや、でも、二人とも元気になって本当に良かった。笑顔はプライスレス!


 時間も良い感じだったので今日は鳥路さんを改札まで見送って解散することに。

 手を振る鳥路さんに合わせて首が連動するように激しく揺れるスッシーが面白くて俺と輝理は笑ってしまった。サンキュースッシー。色々と助かったよ。


 

 ……スッシーの原作を読んだ結果、俺の咄嗟の演技が全くの的外れだったことが判明したのはまた別の話。スッシーはそんなこと言わない!

 



◇◇◇

スシガールズホリデー おわり

感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。


◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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