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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
202/205

第202話 カースドツインズスシナイヴズ前編②

前回のあらすじ:

涼葉さんとイナリスカウト(紫さん)のスシバトルのお題はカワハギ!


◆◆◆


 内臓を取り除かれ、皮を剥がされたカワハギに包丁が入っていく。涼葉さんは三徳包丁、紫さんは柳刃包丁の見た目をした出刃包丁の黒鷲。カワハギのサイズに対して長い黒鷲は少し捌くのが難しそうだと思ったけど、紫さんは涼葉さんのペースと変わらない速度でカワハギを解体していく。

 カワハギは三枚じゃなくて五枚になるんだな……どういう基準で捌き方が変わってくるのか、今度司先生か鳥路さんに聞いてみよう。

 

「早くも両者カワハギを五枚に切り分けました! 肝に寄生虫がいないかの確認を終え……ここから切りつけからの握りでしょう! 瞬き厳禁ですよ!」


 司会者がノリノリで実況をし、会場も当然盛り上がる。

 出刃包丁の黒鷲が本来する仕事じゃない工程。紫さんはどんな技術でカワハギを寿司ネタに切り分けていくのか……注目だ。


 紫さんがカワハギの身に黒鷲の刃を置くと、少し引いただけで、極薄のカワハギのの切り身が出来上がる。やはりというか、当然使いこなしている……!


「すげぇ切れ味だ! あれが黒鷲か!」


「でも、寿司ネタにしては大きくないか?」


 ギャラリーの声で気付いたけど、紫さんの切ったカワハギは寿司ネタにしては大きい。薄くて透けているけど……どうやって使うんだ?

 涼葉さんの方はイメージ通りの寿司ネタサイズに切り分けている。全く違う寿司が出てきそうだ。涼葉さんはそのまま大きいカワハギの肝を切り分けた身よりも少し小さめに切っていく。やはり肝も使うんだな。


「さぁ涼葉さんが先に握りに……」


 司会者が涼葉さんに注目しようとしたその時。

 紫さんの方から軽快な打撃音が聞こえてくる。


「お、おっとぉ!? イナリスカウトさん! なんとカワハギの肝を潰しています! いえ! なめらかにしていると言った方が正しいでしょう!」


 まな板の上で肝が刻まれ液状になっていく! す、寿司に使えるのかこんな状態で!? 伝説の包丁を雑に使うの流行ってるのか?

 一瞬、涼葉さんが驚いた表情を見せたが、すぐに自分の作業に戻る!


「涼葉さんが握りに入ります! 忙しい!」


 司会者がそんな事をぼやくが寿司は待ってくれない!

 涼葉さんは肝を先に左手に乗せ、その上にカワハギの身を乗せる。このまま一気に握るの!? 肝って見た目通りの柔らかさに見えるけど……行けるのか、涼葉さん!

 右手で作ったシャリ玉を乗せ、小手返しでそのまま素早く、そして美しく握る涼葉さん! ギャラリーから感嘆の声が漏れてくる!


「す、すげぇ……」


「縦返しでもねぇのか!? 俺より若いのにどうなってんだ!?」


「流石は宗鮨……どの職人もウニを握れるって話はマジなんだな」


 こ、これが涼葉さんの実力か! 単純な力量は鳥路さん以上じゃないのか!?

 プロ、いや、本物の寿司職人の力を感じる……!


「お、おい、イナリスカウトは何やってんだ?」


「なんだぁ!? シャリ玉だけまな板に置いてるぞ!?」


 ギャラリーが紫さんの方の様子を見て困惑している。

 ……本当にシャリ玉だけ置かれてる。鳥路さんみたいに薄造りのネタが乗っているわけでも無いし。な、何をするんだ?


「い、イナリスカウトさん、まさか! これは……!? 軍艦!?」


 司会者の期待に応えるように、紫さんは大きく薄く切ったカワハギを海苔の代わりにシャリに巻く、一貫に二枚使うようだ。ありなのか、こんなの!?

 そして、カワハギの軍艦の上に乗せるものは……先程液状になるまで叩いたカワハギの肝……! そ、そうか、これなら寿司ネタとして成立する!


「両者、肝と身の両方を使う寿司のようですが、全然違う見た目で仕上がりそうです……! 味にどのような差が生まれるのか! 食べられない事をこれほど恨めしく思った事はありません!」


 司会者が口元を拭いながら実況を続ける。これには同意見だ。

 最後に二人は調味料置き場から、何かを取りに行く。

 涼葉さんは酢橘、紫さんは……なんだあの赤いの、もみじおろしか。お皿の上にラップで保管されているからホテルで大根と唐辛子を擦った感じかな。

 ……それぞれの寿司に薬味が追加される。酢橘は小さな一切れ、もみじおろしは小さな肝の海の上に乗せられた。


「制限時間を前に両者の寿司が出揃いました! 審査に入りましょう!」


 10分前に終わってしまった。これだけの寿司を魚を捌くところからやって20分程度で……レベルが高い。


「ええっと、どちらが先に出したいとかの希望はありますか? ほぼ同時に終わったようなので……」


 司会者がマイク越しに二人に尋ねる。


「……先手はそちらに譲ります」


 紫さんが涼葉さんに先手を譲る。何か意図があるのだろか。

 審査員席の鯖江さんが紫さんの声を聞いて首を傾げている。変な事は言ってないと思うけども……何か気になる事でもあったのかな。


「涼葉さんは先手でよろしいですか?」


「はい、構いません。よろしくお願いいたします」

 


 司会者の確認に対し、涼葉さんはあっさり先手を承諾した。


 このスシバトルの結果で鳥路さんの対戦相手が決まる。

 レベルの高い寿司職人達のスシバトル……審査員達は二つの寿司をどう評価するのか!?


感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。


◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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