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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
197/209

第197話 アンフォゲタブルスシ②

前回のあらすじ:

鳥路さんがマゴチの調理中にスプーンを取り出した。


◆◆◆


「包丁を置いてスプーンを手にした鳥路さん! マゴチの頭や中骨についた身を掻き取っているぞ!」


 司会者の実況の通り、マグロのネギトロを回収するみたいな作業をする鳥路さん。マグロに比べたら小さいけども、かき集めればそこそこの量になる。しかし、どこでその身を使うんだ? 既に薄切りの身を用意しているのに。


「軍艦にするつもり? 旨みが強いマゴチとはいえ海苔に負けるわよ?」


 司先生も困惑している。

 周囲のギャラリーもその状況に混乱しているようだ。

 ……鳥路さんは白蛇を使って集めた身を軽く叩き始める。今度は悲鳴が聞こえてきた。


「で、伝説の包丁に何をさせているんだ!?」


「おいおいおい! 呪われてぇのか!?」


「クスクス……白蛇様が怒っちゃうよ」


 そんな声を無視して、鳥路さんは白蛇をその辺の包丁と同じ扱いをしている。鳥路さんは……オカルトの類を信じないタイプ!


「ち、力はそこまで込めてなさそうですし、刃こぼれはしないと思いますが……大胆な寿司を作りそうですね……」


 許可を出したのを少し後悔していそうな声で語る斉藤先生。


「バチ当たり! バチ当たりですよ!? 最近の若者は歴史を軽んじている!」


 粕田はともかく、寿司王は何も言わずに鳥路さんの作業を見守っている。

 その目にはどんな寿司が出されれるのかという期待が込められていた。


「何を考えている……マゴチのたたきの寿司なんて聞いた事が無い。ちっ、私を舐めてるのか? いい度胸じゃない!」


 笹垣志織も鳥路さんが何をするのか読めていないようだ。笹垣志織は鳥路さんの見学を辞め、昆布茶締めされたマゴチの表面の水分をキッチンペーパーで拭き取り、両手をしっかり洗い始める。握りの工程に入るぞ……!


「笹垣さん、握りに入ります! ここまでの継承戦ではどこか無気力でしたが……今回はどうやら気迫が違います……!」


 司会者は笹垣志織の変化に気付いている。

 注目の笹垣志織の握り……早い! 山田さんレベルじゃ無いけど、四手程度の早い小手返しだ! 一つ言えるのは回転寿司屋の役員の腕前ではない! 回らない寿司屋の職人!


「一回戦と違ってキレがある……!」


「見た目も綺麗に仕上がってるわ!」


 ギャラリーも笹垣志織の所作に驚いている。これまでの口先だけの卑怯なスシバトラーとは格が違う……! あっという間に三貫を握り終えてしまった。

 遠目で見ても三貫全てが綺麗な形をしている。早握りでありながらこの精度か……


 そうだ、鳥路さんはどうなっている?

 鳥路さんも握りに入ってる! やはり三枚ほどの薄切りしたマゴチを左手に乗せている……あれ? 鳥路さん、普段よりシャリの整形に時間を掛けている? 調子が悪い感じでは無いけど……大丈夫かな。


「おお、変則的なネタなのに、しっかり握るじゃねぇか! 早いしやるなぁ!」


「予選から見てたけど、今時本手返しなのねぇ」


「シャリがビシッと決まるから俺は好きだぜ。見栄えは本手返しってね」


 鳥路さんの本手返しをギャラリーはそのように評価する。

 俺からすると……普段より遅い。どうしたんだ鳥路さん?


「寿司ネタが特殊形状だけど、それでも遅いわね……大丈夫かしら」


 司先生も心配している。


「どちらかと言うと慎重に握っているようですわね」


 金星さんの目にはそのように映っているようだ。言われてから改めて見ると、確かにそんな感じだ。


「……とりっじ、さっき作ってたマゴチのたたき……使ってなくない?」


 賀集さんが違和感に気づく。


「ほ、本当だ。出来た寿司は薄造りの寿司だ、これ! どこにいったんだ!? 何で作ったの!?」


 鳥路さんのスペースから消えるマゴチのたたき。自分で食べた? いや、流石に全部終わってからやるはずだし、どこかにあるはずなんだけど……み、見当たらないぞ!?


「鳥路の方も握り終わったけどよ……たたきはどこ行ったんだ?」


「笹垣の握りに注目してたら、いつの間に消えてたんだよな……」


「見た目もなんか、こう……シャリにネタが巻かれてる感じだしよ」


 ギャラリーも戸惑っている。

 出来上がったのはシャリにマゴチの三枚の薄切りが巻かれたような一般的な寿司とは異なる形状の寿司。だ、大丈夫だよね?

 ふと、目に入ったのは志苑の隣にいる桐谷さん。声は聞こえていたけど、今までどこに行ってたんだ? しかも志苑の背中を叩きながらめっちゃ笑ってるし。何を見て笑ってるんだ?


「制限時間を前に両者の寿司が揃いました! 流石の継承戦を勝ち抜いてきただけはある腕前と言えるでしょう! ……カウントダウンはもう少し待ちましょう」


 残り1分程度なので長すぎると判断した司会者。残り三秒ぐらいまで待機する。


「3、2、1……終了です! 先に仕上げた笹垣さんの寿司から審査に入りましょう!」


 この30分で色々な事が起きて、体感はもっと長く感じた。

 改めて鳥路さんの寿司と笹垣志織の寿司を見比べると、同じ食材なのに全く違う物が出てきたという感想である。王道な寿司の見た目をしている笹垣志織の寿司に対し、鳥路さんの寿司はかなり特殊な見た目をしているし、ちょっと大きい気がする。

 それが吉と出るか凶と出るか……審査で明らかになるだろう!

感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。


◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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