第186話 サクセッションスシバトルクオリファイア④
前回のあらすじ:
予選の二品目はホヤの寿司。鳥路さんは果たして審査員の舌を満足させる事ができるのか。
◆◆◆
寿司王を含めた三人の審査員がテーブルに置かれた参加者の寿司の試食を始める。今日は審査員の紹介とかしないんだ……今日はあくまで予選で力を入れるところじゃないのかも。
「司先生、寿司王以外の二人ってどういう方かわかります?」
とはいえ気になるものは気になる。
「女性は料理研究家の斉藤真美子先生。寿司のプロではないけど、料理本で有名な人ね」
「ああ、料理本の人か」
料理本の作者さんとしてなら知っている人だった。多分家にも一冊ぐらいある。
「ノリと雰囲気で作る絶品おかず50選」はタイトルの割にちゃんとした本だった。
「もう一人のメガネの男性は……料理評論家の粕田洋。金を積まなかったら辛口レビュー、金を積めば甘口レビュー……とかで炎上していた人ね」
司先生は自分でそう言いながら目を疑っている。急に心配になる人選だ……流石に審査員はまともにこなせる人だと思いたい。
個性豊かな三人の審査員が一人目の参加者の寿司を食べ終わる。
「ううむ、水で洗いすぎて旨みが飛んでしまっている。これは頂けない……三点ですな」
「単に握っただけの工夫を感じられないお寿司ですわね。二点といったところでしょうか」
「あーいけません! これは寿司への冒涜! 冒涜ですよ! まぁ、寿司の形をしているから一点を差し上げましょう!」
すっげー辛口レビューだ……参加者の男性が項垂れている。
審査員は隣の参加者の寿司を食べ始める。
「むう、今度は水分で寿司が崩れてしまっている。二点としましょう」
「口に入るまでが寿司。これでは点数は差し上げられませんね」
「んん! 論外ですな! 寿司を舐めている!」
酷評された参加者は呆然としている。ホヤは難しい食材らしい。
三人目は……鳥路さんだ! 良くない流れを変えてくれると良いけど……
審査員が鳥路さんのホヤの寿司を口に入れる。
……どうだ?
「これは……素晴らしい! 下処理も完璧だ! 飾り包丁も絶妙で口の中にストレスなくホヤの旨みが爆発する! 柑橘類の調味液も良い! この豊かな味わいは……ホヤ水を使っているのか! 文句なし、十点だ!」
寿司王が絶賛する! その反応を見て会場が湧きあがる!
「うおおおお! 寿司王が十点を出した! 何者だあの女の子!?」
「最近動画で有名な子じゃね? 大人顔負けだぞ!」
満点が出る事に安心した。他二人はどうだろう。
「口の中でほどけるシャリとネタ……そこから広がる海の香り。ホヤの寿司として模範解答のような寿司。私もこれは十点ですね」
斉藤先生も満点をくれた。前二人がどれだけ酷かったかに話が変わりそうだ。
「むう、まぁ、ホヤが強すぎるというか、ホヤすぎるというか……ですが寿司として成立しているので、六点は差し上げましょう!」
粕田の評価にしては高得点って事で良いのか? 鳥路さんは合計26点か。これが基準になるのかどうかだなぁ……
「司先生、ホヤ水って、美味しいんですか?」
賀集さんが俺も気になっていた事を聞いてくれた。
「美味しいかどうかは好みによるけど……ホヤの旨みが詰まった液体だから、これで身を洗ったり、鳥路さんみたいに調味料に混ぜたりすると味が馴染わね。一応注意事項として、出水孔から出た水は老廃物が混ざってるからダメよ。入水孔のホヤ水を使う事。入水孔は口が十字になっているから見ればわかるわ」
「流石は司先生ですわ!」
金星さんが司先生の知識に小さく拍手を送る。
俺と賀集さんも司先生に拍手を送る。
「褒めても何も出ないわよ。さぁ、次は涼葉の番ね」
司先生は特に気にせず、審査結果に集中する。
審査員が涼葉さんの前に立ち、涼葉さんの寿司を食べた。
涼葉さんのホヤの寿司の評価は如何に。
「むう! これは旨みががつんとくる寿司だ! 少量の酢味噌……いや、果実で整えた味噌が良い! 味噌の量が多すぎても少なすぎてもこうはならない! 見事な調和! 十点だ!」
盛り上がるギャラリー! 寿司王が再び十点を出した! 流石は涼葉さん!
鳥路さんと比較すると、涼葉さんは鳥路さん以上に味覚が鋭いんだろうな。それが涼葉さんの武器なんだ。
「味噌のおかげでホヤの臭みを感じない良いお寿司ですね。その分ホヤらしさは弱くなりますが……寿司としては美味! 私も十点ですね」
斉藤先生も十点! この二人、美味しかったら満点くれるんじゃないのか?
「いやぁ、流石は勅使河原宗十郎のお孫さん! これは高得点を出さざるを得ない! 九点ですねぇ!」
粕田の九点はでかい。多分。合計29点は鳥路さん越え! 予選突破は決まったような感じか!?
その後も満点が続くと思ったけど、そんな事は無く、寿司王も斉藤先生も七点とか八点とか普通に提示するのでちゃんと鳥路さんと涼葉さんの寿司が美味しかった事の証明になって良かった。粕田の点数は良くわからないです。
「いやぁ! ポン酢ジュレが完璧なホヤの寿司! これはお見事! 素晴らしい! 文句のつけようがない! 十点! それ以上が無いのが勿体無い!」
寿司王と斉藤先生の満点に続いて、ついに粕田が十点を出した。その参加者は……
「じょ、女王だ! 女王が満点を取ったぞ!」
「この環境で満点とか……回転寿司屋とは思えない技量! 寿司王国の力なのか!?」
満点を取ったのは笹垣志織だ。さも当然と言った表情を見せている。
敵ながら凄い……粕田がベタ褒めしているのは気になるけど、流石に……無いよな? 寿司王と斉藤先生も満点だし。
ついに参加者は最後の一人。そして、この継承選における最強の一角……イナリスカウト、紫さんだ。
寿司王と紫さんが何も言わずにじっと互いの目を見つめる。わずかな時間だったけど、二人の間に目で語れる会話があったに違いない。
審査員が紫さんの寿司を口に入れる。
「おお……こ、これは……ホヤにはない、ミルキーな味わいが加わって……美味い! ば、バターを使ったのかね!? それも、レモンの皮を細かく刻んだものが入っている! バター焼きが美味しいのは知っているが……まさか寿司でもいけるとは! 見事な寿司! 十点!」
寿司王が震えながら満点を出す! これまでにない寿司が出てきた! バター!? 寿司にバター!?
「凄いわ……ホヤがバターでまろやかになってる。柑橘系の爽やかがバターのコクをくどくさせずに寿司と調和させている……文句なし、十点でしょう」
斉藤先生も満点だ!
「な、なんだこれは!? うまっ……ああ、いや、美味いですよ? 美味いのですが、冒険しすぎというか……まぁ、八点、ぐらいの寿司でしょう」
粕田の八点は高評価。紫さんは28点か……これで参加者全員の寿司の審査が終わった。鳥路さんは現在四位。まだ予選だし、四位でも突破できると信じたい。
「全員の点数が出揃いましたね! ではでは! 順位はこちら!」
司会者の合図で大型モニターに参加者の名前と順位、そして点数が表示される!
「今回の予選、実は枠が決まっています! 上位八名が予選突破です! おめでとうございます!」
結構余裕があった! 鳥路さんが無事予選を突破した!
会場に拍手の嵐が巻き起こる!
鳥路さんも胸を撫で下ろしている。良かった……とりあえず、安心だ。
とはいえ、予想通りのメンバーが残っているし、他四名の参加者も強敵に違いない。本戦がどうなるか予想はできないけど、ここからが本番だ……!
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




