第184話 サクセッションスシバトルクオリファイア②
前回のあらすじ:
継承戦の予選が始まろうとしている。
◆◆◆
「長話はこの辺で……では、これより、白蛇の継承戦を開始する! まずは本日の予選を通過していただき、明日の本戦でお会いできる事を楽しみにしていますぞ! 健闘を祈る!」
寿司王の挨拶が終わり、会場に拍手が鳴り響く。
予選の内容は非公開……何が出てくるのか……寿司王と交代する感じで司会の女性がステージ上に立つ。
「寿司王、ありがとうございました! ここからは司会の綿貫が務めさせて頂きます! さぁさぁ、これより予選となりますが! 事前に受付で登録頂いた包丁を使った物となります! 番号のテーブルの前で包丁を準備してお待ちください!」
事前に一丁だけ包丁を持ち込めると連絡があり、鳥路さんは愛用のスッシーフィンを持ち込んでいる。スッシーフィンは万能包丁なので、得意不得意とかは無く、何が来ても大丈夫そうだ。ちなみに涼葉さんも何が求められるかわからないとの事で三徳包丁、つまり万能包丁を選んだようだ。
他の参加者を見る感じ、そんな選出が多いようだ。
「ワッザ!? なんだあの黒い包丁!? あれがもしや、黒鷲!?」
「持ち主は行方不明なんだろ!? 偽物に決まっている! それより、あの刃の形状、柳刃包丁じゃねぇか! 切り付け以外の課題が出たら、あいつ終わりだぜ!」
狐の仮面を被ったままの紫さんが取り出したのは、全体が黒い柳刃包丁。
持ち主の存在感も相まって、周囲が騒つく。
「司先生、あれ……本物ですよね?」
中身が紫さんと知ってはいるけど、詳しそうな司先生に確認する。
「ええ、間違いないわ。やはり、あのイナリスカウトの正体は心陽なのね……」
司先生にもあのイナリスカウトの中身が紫さんである事は共有している。
旧友との再会に司先生は笑みを浮かべたりせず、じっと紫さんを睨んでいた。
しかし、柳刃包丁で三枚おろしをしろみたいな課題が来たら、ちょっと不利そうだ。技量でどうにかなるものなのだろうか。
「皆様、準備できましたね!? 予選一品目は……イワシの寿司です!」
司会者のお題提示に盛り上がる会場。スシバトルのノリはもうこれが普通なんだな……みんなどこで知ったんだ? 金星さんの動画か……
一品目と言うことは、何品か握る事になるのだろうか。一日目の予選でこの大人数をふるいにかけるのだから、簡単には終わらないとは思っていたけど。
参加者が待つ長テーブルの上に係の人達によって材料を運ばれてくるが。一貫分に必要な食材しかない。シャリ用の小さい桶とかどこで売ってるんだ? 肝心のイワシは布で隠されており、勝負が始まるまで状態は確認できないようだ。
「食材には手を付けないようお願いします! 制限時間は3分! お客様に提供するつもりで握ってください!」
3分で捌いて握れるのか!? 会場もざわざわしているし、結構厳しそうな感じだけど!?
鳥路さんも涼葉さんも動じていない。大丈夫そうだ。
笹垣姉は……話聞いているのか? 目を瞑ってるけど。
紫さんは仮面のせいで何考えてるかわかんない。まぁ大丈夫なんだろう。
「それでは、継承戦の予選、一品目! 開始です!」
司会の人が手にしたブザーを鳴らすと、参加者が一斉にイワシに被さった布を取り除く!
「えっ」
鳥路さんの口がそんな形になっている。手も止まっている。な、何だ?
その間にも他の参加者イワシを捌いていく。いや、そうでもない。涼葉さんも困惑して手が止まっているし、笹垣姉は……腕組みしたまま動かない。
紫さんは一応捌いて見たようだけど、握りには入らず、包丁の手入れを始めている。捌く所を見逃した……
それより、皆は何をしているんだ!? 3分しか時間がないのに!?
「残り1分です!」
無慈悲な残り時間が耳に入る!
ああああ! 時間がない!
「つ、司先生!? 知り合い全員の手が止まっているんですけど!?」
「当然よ。あのイワシは握れない」
「握れない!? 他の人は握ってますけど!?」
司先生は何かに気付いている? 金星さんも賀集さんも困惑してる!
何もしないのが正解!? どういう事!?
「終了です! 皆様! 手を置いてください!」
終わってしまった!
手を付けていた人達の前には見事な寿司が置かれている。3分で握れるんだ……
「おいおい、寿司を提出できていない連中がいるぜ」
「3分じゃ握れないと諦めたのか? 女性参加者には難しかったようだな」
ギャラリー側からそんな声が聞こえてくる。数少ない女性参加者は全員寿司を握っていない。他にも握っていない人は数人いるようだけど。
……女性陣は全員実力者だ。握る事自体はできるはず。それをしなかったという事は、イワシに問題が……?
「ええっと、審査の前にちょっとインタビューしましょうか! イワシを見た瞬間に声を出しちゃってましたが、どうしましたか? 寿司も完成していないようですし」
司会者が鳥路さんにマイクを向ける。
「……こんなに鮮度の悪いイワシは寿司として提供できません」
鮮度! そ、そうか! だから鳥路さんは握らなかったんだ!
お客様に提供するつもりで握ってくださいと司会の人も言っていたし……少ない時間で焦らせながら、鮮度を見極める力を確かめる試験だったんだ!
会場からもざわざわと色んな言葉が飛び交っている
「はい! というわけで、寿司を握った人は全員失格です! お帰りください!」
司会者からも答え合わせがされた。よ、良かった……何もしないのが正解なんて、いきなり変化球で来るんだな……握った陣営からブーイングが聞こえてくるけど、屈強な係員によって、参加者は速やかに退場させられていく。
参加者は結構な数がいたのに、もう十数人ぐらいしか残っていない。凄まじい予選だ……
「うーん減りましたね! これからまだ減らすんですけど。さぁ、二品目の準備に入りますので、すこーしだけお待ちください!」
司会の人がサラッと言い放った。まだ減るのか……
係の人達が次の予選の準備を始めている。
大波乱の予選はまだ続く。一発目でこんな事されたら次に何が来るか想像できない……がんばれ、鳥路さん!
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




