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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
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第183話 サクセッションスシバトルクオリファイア①

 継承戦までの数日間、鳥路さんは桐谷さんとスシバーのスシキリで毎日寿司の修行をした。独学で学んでいたはずの鳥路さんに教える事がほとんど無いと驚いていた桐谷さんは面白かったけど、何だかんだ鳥路さんが知らない話は多く、客観的に見ても有意義な時間を過ごせていたと俺は思った。

 桐谷さんの寿司の知識は紫さんから教わった物と元々寿司屋の娘だった頃の物の二つから来ていると本人が教えてくれた。桐谷さんの実家の寿司屋については……詳しく聞く事はできなかった。寿司罵倒協会絡みで何かあったのは間違いないけど……

 

 二人の修行のかたわらで、俺と志苑は継承戦の場を利用した寿司罵倒協会への攻撃方法を画策かくさくしていた。鳥路さんが優勝すれば全部丸く収まるのは間違い無いのだけど、それが難しかった時のためのサブプランのようなものだ。

 ……フレベの奴にも手伝って貰ったけど、こちらが何か言う前に協力を申し出てきた。寿司罵倒協会と警察の癒着の話が真実の大鷲案件だとか、継承戦の行く末を確認した上で爆弾を投下するかどうか決めるとも言っていた。今更だけど、AIが自主的に活動してるのって、やばくない? 実は中に人がいる説が俺の中で濃くなってきている。


 ……夏休みの期間の中でも特にこの数日は時間の流れが早く感じた。もっと時間があればと思う時もあったけど、やれる事はやった。あとは本番の俺達……主に鳥路さんに思いを託すだけだ。



◇◇◇



 東京都の銀座にある高級ホテルの大広間……ここで白蛇の継承者を決める継承戦が二日間かけて行われる。一日目の今日は予選だ。周囲の参加者を見ると男性ばかりで女性の姿が無い。全員が似たような調理白衣を着ているけど、それでもパッと見て女性はいないように見える……俺達の陣営を除いて。


「鳥路さん! 予選頑張りましょう! 何とかなると思いますけど、油断は禁物です!」


「うん。涼葉さんも頑張って」


 鳥路さんと涼葉さん、寿司同好会と寿司を守る会は一応協力関係にあるので、和やかなムードである。先述した通り、周りが大人の男性ばかりなので、女子の二人はかなり浮いた存在になっている。ちなみに鳥路さんの調理白衣はスシキリから借りた物である。

 関係者席には司先生、金星さん、賀集さん、そして俺。志苑の奴は一般の観客席にいる。志苑は別の部に所属しているので仕方ないのだけど、一番の理由は金星さんと賀集さんと同席するのが嫌だからだろう。笹垣姉が継承戦に出るのだから志苑も関係者席でも良いとは思うのだけど……そうしていない辺り、あの姉妹の拗れ具合が見えてくる。

 志苑がいる場所は……あの辺か。隣にいるのは桐谷さんか? なんか桐谷さんが志苑をいじっているように見える。こっちの方が姉妹感あるな……


「あれ? 寿司王は今日来てないの? 金星さん知ってる?」


「何をおっしゃってますの? 勅使河原様は審査委員長ですわよ」


「あ、そっか……」


 そう言う人だった……あの人なら孫だからと贔屓ひいきしないだろうし、実際に信頼されているから審査委員長に選ばれているんだろうな。


「とりっじと涼葉さん……大丈夫だよね? 周りの寿司職人の人達、すごい強そうじゃない?」


「大丈夫だと思いたいけど……」


 賀集さんの心配も無理はない。大人の男性の寿司職人達にはかませ的な風貌の人は見当たらない。これまでの寿司罵倒協会のスシバトラー相手の勝負のように簡単には行かないだろう。


「おいおい、継承戦だってのに子供、しかも女だぜ。陣営は勝負を捨ててるな」


「動画で有名な子と勅使河原宗十郎の孫だろ? まぁ、俺達の敵ではないな」


「そういうにわかを弾くための予選だしな! はっはっは!」


 参加者の一部からそんな声が聞こえてくる。何だろう、本当に何とかなる気がしてきた。


「事情も知らずに白蛇に群がる職人なんて大した事無いわ。本物はそんなもの必要としないから」


 司先生がはっきりと言い切った。松風鮨や栄寿司の人達もいないし、言いたい事はわかる気がする。


「うおっ! 見ろよ! 女王が来たぞ! 本当に出るんだな!」


「黙ってれば美人だよなぁ……寿司業界の華だぜ!」


「俺、罵倒されてぇ」


 周囲が騒がしくなる。全員の視線の先にいるのは……笹垣志織だ。

 改めて遠目で笹垣姉を見ると身長が高く、男性と並んでも差がほとんど無い。

 ややちんまりしている志苑と同じ遺伝子を持っているのか疑いたくなる。


「うっ!?」


「山ちゃん? どうしたの?」


「い、いや、大丈夫! 何でもないよ、賀集さん」


 笹垣姉と目が合った気がする。俺達が何をしようと無駄だと言わんばかりの圧を感じる目だった。

 残る女性の参加者は……紫さんか。他に女性がいなければ、簡単に紫さんの正体が判明するはずだ。頑なに狐のお面を外さなかったけど、ようやく写真の人物の顔を現実で見る事ができそうだ。


「おいおいおい! 嘘だろ!?」


「なんで継承戦にあいつがいるんだよ!?」


「こんなのありかよ!?」


 再び周囲が騒つく。今度は誰だ?

 注目の人物が俺の視界にも入ってくる。

 調理白衣を着た女性……狐の仮面を被った。嘘だろ?


「あのお面! い、イナリスカウトだ! イナリスカウトが出たぞ!」


「俺の行きつけだった寿司屋もあいつに潰された! 許せねぇよ!」


「継承戦に出てきて良いのかよ!? というか女!?」


 ま、まさか、そのままの姿で出てくるとは……予想すらしていなかった。

 黒いコートは着ていないけどお面が本体だから、やっぱり目立つ!


 一人の亡霊の登場で会場が騒然とする中、開始の時刻になり、ステージ上に寿司王が現れた。


 いよいよ始まるぞ……! 伝説の包丁の継承戦が!

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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