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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
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178/218

第178話 スシマニュアル③

前回のあらすじ:

イナリスカウトの群れに囲まれた! おぞましい!


◆◆◆


 集合時間と場所はチャット上でだけ、入った喫茶店もその場で決めたお店……

 なのに、どうして俺達はイナリスカウトに取り囲まれているんだ!?

 寿司マニュアルのためにここまでするのか!?


「と、鳥路! あんた一人だったら逃げれるんじゃないの!?」


「無理。多すぎる……!」


 志苑の提案は即却下された。

 鳥路さんだけでも逃げ切れればとは俺も考えたけど、流石に厳しいようだ。

 ……なんかじわじわとイナリスカウト達に詰め寄られている。警察は……期待できないし、もうそんな余裕すら無い!


「さぁ、逃げ切れませんよ。寿司マニュアルを渡しなさい」


「寿司罵倒協会は子供にも容赦しない。忘れられない夏の思い出になりましたか?」


「くくくっ、抵抗すればうっかり怪我をさせてしまうかもしれませんよ?」


 四方八方から大人の声がする。近付いてくる狐の仮面の圧以上に、その事実が恐ろしい。ただ、ここまで近いと誰が喋っているかは判断できるようになってきた。


「時間の無駄や。さっさと渡さんと、自分らどうなるかわかるやろ? うちは気が短いねん」


 なんか関西弁っぽい女性のイナリスカウトもいるし……しかもガラ悪いし……反社会勢力も関わってたりするのか? スカジャンにジーンズって、いかにもじゃん。

 ……鳥路さんが目を丸くして驚いている。反社は鳥路さんでも怖いよな……

 

「……わかった。あなたに預ける」


「と、鳥路さん!?」


「鳥路!?」


 鳥路さんがスッシーの背中からUSBメモリーを取り出し、関西弁のイナリスカウトに手渡した……!? よりにもよって反社のイナリスカウトに!? 何で!?

 

「ふふ、悪いようにはせんよ。大事に使わせて貰いますわ」


 くっ、帯刀さんの寿司マニュアルが寿司罵倒協会に……! コピーは俺の家にあるけど、問題はそこじゃない! 寿司マニュアルが寿司罵倒協会に渡れば、奴らの強化に繋がってしまう!


「はいはい、うちが受け取ったし、これにて解決! よかったね!」


 パンパンと両手を叩いて、任務達成を周囲に伝える関西弁のイナリスカウト。

 何もされなかっただけマシか……くそ、取り扱いも見誤った俺のミスだ……!


「……おい、誰だあいつ? 我々に関西弁の奴なんていたか?」


「ん? いるんじゃないの? 誰が誰かわからないのがイナリスカウトじゃない」


「そりゃ、全国にいるけどよ……ここにいるのって、神奈川在住のメンバーだろ? そもそも正体を隠すなら標準語で話すべきじゃないか?」


 なんかイナリスカウト達が揉めている? 確かに、関西弁は目立つから使わない方が良い気がする。

 ……関西弁のイナリスカウトがいつの間にかお店の扉の所に居る。帰る気満々だ。


「お、おい、そこのお前! どこへ行く!? 計画と違うぞ!?」


「全員で子供を脅す手筈よ! 何勝手に解散しようとしてるわけ!?」


 やっぱ大人しく帰してくれる予定じゃなかったのかよ! うそつき!


「抜け作どもがぁ! この寿司マニュアルはうちら、サキ派のもんや! ガキ派の腐れ外道はインターネットで先生に聞いとけや! ひゃっはー!」


 逃げた!? もう見えない! さ、サキ派!? 寿司罵倒協会の抵抗勢力だっけ!?


「な!? 追いかけろ! 逃すな!」


「なぜサキ派が我々の作戦を知っているんだ!?」


 咄嗟の事に統率が取れずにバラバラに動く残ったイナリスカウト達。

 い、今なら逃げれるかも! 俺は二人の手を引いて、イナリスカウト達から距離を取る!


「ええい! 逃げられると思うなよ! 寿司罵倒協会を舐めたらどうなるか、これから時間を掛けて教えてやるんだからよぉ!」


「悪く思わないでね、命令だから」


「女のガキはたっぷり可愛がってやるよ、ひひひっ!」


 神奈川とはいえ治安が終わってる! しかも逃げる方向を間違えた、トイレじゃどう足掻いても行き止まり! いや、個室で籠城して司先生に助けを求める!?


「お、良いタイミングで出てきたな。トイレ中だったのか?」


「そこのガキどもを捕まえろ!」


 女子トイレから、黒いコートに白い狐のお面を被った通常のイナリスカウトが出てきた! 何てタイミングだよ!


「……」


 コート姿のイナリスカウトは懐から大型のソルトガンを取り出し、銃口を俺達に向ける。まずい、本当にまずい……!


「お前、随分準備が良いな……こうなるってわかっていたのか?」


 他のイナリスカウトがコート姿のイナリスカウトに尋ねる。用意周到な個体もいるなんて……


「……ああ、全部知っていましたよ」


 やばい、撃ってくる。鳥路さんと志苑に当たらないように覆い被さる。

 大きな破裂音。なぜか何度も聞いた事があるソルトガンの発射音だ。


 ……痛くない?


「あばーっ!?」

 

 ソルトガンの弾は俺達ではなく、別のイナリスカウトに着弾!

 撃たれたイナリスカウトは痛みで悶絶している。


「な!? どこ撃ってんのよ、あんぎゃっ!?」


 二発目もイナリスカウトに着弾! 地面に崩れ落ちる!


「お、お前!? 自分が何をしているのかわかっているのか!?」


「すみません。ノーコンでしてね。次はちゃんと当てますよ。見ていてください」


 三発目! イナリスカウトに着弾! 床に転がるイナリスカウト!

 な、何が起きているんだ!?


「わざとだろ!? な、何が目的だ!? 抜け駆けは御法度だぞ!」


「店内ではお静かに……おや?」


 ソルトガンがカチカチと乾いた音を鳴らす。た、弾切れか!?


「その感じ、女のイナリスカウトだな!? ソルトガンがなきゃ怖くねぇ! 女が男に逆らって勝てると思うなよ!」


 男のイナリスカウトがこっちに襲いかかってくる。俺達を挟んで争わないで欲しいなぁ!?


 頭上に影ができる。

 男を迎撃するように飛び上がったコート姿のイナリスカウトの右足がスローモーションのように男のイナリスカウトのお面を粉砕、そのまま顔面に蹴りがめり込んでいく様子が目に映る。


「ぶべらっ!?」


 吹き飛んで壁に激突する男のイナリスカウト!

 もしかして、このコート姿のイナリスカウトは、俺達を守ってくれているのか?


「ぼ、暴力はいけない! 退散だ! こんなの聞いてない!」


「こっちはあの関西野郎を捕まえれば良いだけだ! 行くぞ!」


 コート姿の強さにビビったイナリスカウト達は床に転がっていたイナリスカウトを回収しながら撤退していく。

 ……助かった、のか?


「怪我は……無さそうだね」


 こちらに振り向くコート姿のイナリスカウト。

 ……この声、どこかで……


「……あなたがサキ派のボス?」

 

 鳥路さんは正体がわかったのか!?

 俺も志苑も何が何だかわかってないけども!


「その通り。そして……」


 イナリスカウトは片膝をついて、俺達に目線を合わせる。

 少しの沈黙。わずかに仮面の奥から吐息の音が聞こえる。



「……二ヶ月程前に君達二人が出会ったイナリスカウトだ」



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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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