第169話 ゴーストオブスシ⑨
前回のあらすじ:
伝説の双子の包丁、二人のイナリスカウト、そして日本寿司罵倒協会……
複雑に絡み合う因縁はどのような運命を辿っていくのか……
◆◆◆
食事を終え、失神しそうな値段の飲み物を飲みながら同じテーブルで談笑を交える俺達。話は現在鳥路さんが滞在している滋賀県の話題に。
「滋賀県と言えば琵琶湖のビワマス、特にブランド養殖魚のびわサーモンが有名ですね!」
もっと他にあるだろうに、彦根城とか……何とも寿司職人の涼葉さんっぽい興味の範囲だ。
「びわサーモンというかビワマスって美味しいんですか?」
「琵琶湖の宝石と呼ばれるぐらいだからね。今の時期がちょうど脂が乗っていて美味しいんじゃなかろうか」
俺の質問に寿司王が答えてくれた。
流石は寿司王。食材にも詳しい。そして美味しそうだな……
「琵琶湖の固有種なので滋賀県でしか流通していないのが残念ですわ」
金星家の財力でもその辺はどうにもできないらしい。いや、していないだけか?
「食べ物だと鮒寿司なんかも有名だね」
寿司王が聞き慣れない寿司の名前を話題に出す。
「鮒って淡水魚のあのフナですよね? 寄生虫とか大丈夫なんですか?」
そもそもフナって泥臭い印象がある。食べた事ないけど。
「長期間発酵するものだから食べる頃には寄生虫は死滅しているので大丈夫だよ」
「え、発酵食品なんですか? 寿司って名前なのに?」
寿司王が教えてくれた調理方法に驚く。
「寿司といっても、なれずしに近いかな。魚を塩と米で乳酸発酵させるから強烈な酸味が特徴だ」
「涼葉は北海道のいずしは好きなのですが……鮒寿司はちょっと酸っぱさが凄すぎてダメです」
涼葉さんは味を思い出したのか酸っぱそうな表情を見せる。
いずしっていうのもあるのか。それに鮒寿司ってそんなに酸っぱいのか? 逆に食べてみたいな……
「折角だし鳥路さんに買ってきて貰おうかな。買う時間がありそうだったらだけど……」
鳥路さんにメッセージを送るためにスマホを取り出すと、二件ほどチャットにメッセージが届いていた。
一つはフレべからで、調査が終わったらしい。24時間とは言っていたけど大体そんなタイミングか……あとで確認しよう。
もう一つは賀集さんから。というか寿司同好会のグループチャット宛に来てるな。ええっと「とりっじがイナリスカウトとスシバトルしてる!!!」
……
「鳥路さんがイナリスカウトとスシバトル!?」
俺の驚きの声で他三人も驚く! スシバトルはともかく! イナリスカウトが相手!?
「鳥路さんは何やってますの!?」
金星さんも取り乱す。本当に何やってるんだろうな!
「い、イナリスカウトが滋賀県にいるのかね?」
「全国どこにでも現れるのですね……」
寿司王と涼葉さんも困惑している。イナリスカウトの正体が紫さんだとしたら、彼女は今滋賀県にいる事になる。笹垣姉が関東圏から出ていなければ確定だ。この辺も志苑に確認しておこう。あいつの方は上手くやっているだろうか……
「あ、待って、動画のリンクが貼られてる! また撮影されたのか鳥路さん!?」
肖像権はどうなってるんだよ! 撮影者は鳥路さんから許可貰ったんだろうな!?
動画を開くとスキップできない広告が始まり、自然と動画のタイトルに目が行く。
噂の天才寿司少女と変態のスシバトルin滋賀……
いや、まぁ格好だけなら変質者か、イナリスカウト。
そうこうしていると動画が始まる。この人達、いっつも緊急で動画回してるな……
自然と俺のスマホの画面に金星さん、涼葉さん、寿司王の視線が集まる。全員が視聴しやすいようにスマホを横にして画面を大きくし、音をほんの少しだけ大きくする。
そして画面には鳥路さんと白い狐のお面と黒いコートを着た……うん?
「でかくない?」
「このお方……男性ではありませんこと?」
「心陽くんはここまで身長高くないしね……体も細いはずだし……」
「ぱ、パチモンです! イナリスカウトのパチモンです!」
どういう経緯でこうなったかよりも、目の前の偽イナリスカウトに意識が全部持って行かれる!
し、滋賀県で何が起きているんだ!?
◇◇◇
ゴーストオブスシ おわり
感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。
◇◇◇
こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




