第164話 ゴーストオブスシ④
前回のあらすじ:
涼葉さんと柄の悪い男がスシバトルをする事に。
しかもルールが妨害ありのサボタージュ。
◆◆◆
ゴールドスター小田原のレストランでのスシバトル……対戦カードは宗鮨の厨房を任されている若き天才、涼葉さんと……柄の悪い男。名前を名乗ってなかったなこいつ。
「サボタージュは妨害あり、グッドテイストは審査員に美味い方を選んでもらう形式だ。くっくっく……雑喉谷の兄貴は裏寿司界隈でも屈指の実力者……特にサボタージュでは無敗なんだぜ」
律儀にわかりやすくルールを説明してくれる下っ端。
下っ端の名前は良いとして兄貴の方は雑喉谷って名前らしい。裏寿司界隈って何?
「相手を妨害しないとまともな寿司も握れない雑魚って事ですか?」
涼葉さんの純粋な疑問が柄の悪い男達を突き刺す!
「く、クソガキが……!」
「雑喉谷の兄貴を雑魚呼びするなんて死にてぇらしいなぁ!?」
「え? あ、お名前を馬鹿にしたとかでは無いんです。すみません」
火に油を注ぐ涼葉さん! 鳥路さんとは違うタイプのレスバ強者だ……!
「ガキが大人を舐めたらどうなるか……教育してやるぜ! おい、ルールの説明をしてやれ!」
雑喉谷が下っ端にルール説明を要求!
「サボタージュグッドテイストのお題は……ハモだ!」
ハモって……なんかヒョロ長い魚だっけ? 小骨が多いとかは聞いたことあるけど。寿司になるのか?
ただ、ギャラリーが上品に盛り上がっているので、結構メジャーな寿司ネタのようだ。
「骨切りの技量が求められる中、相手の妨害を受け流す……十年そこらのクソガキには難しいかもなぁ?」
雑喉谷もなんだかんだスシバトラーとして十分な技量を持ち合わせているのだろう。勝負を挑むだっけあって自信はあるようだ
「なるほど。集中力を求められる作業を妨害して相手の足を引っ張る感じですか……料理をする者とは思えない野蛮な発想です」
涼葉さんが正論をぶつける。ぶつけるが、勝負の舞台からは降りないようだ。
彼女も立派なスシバトラーなんだなって言ったら怒られそうだ。
厨房の方から蛇のような魚、ハモが二匹運ばれてきた。レストランに許可取ってるのかよ……なんか流れがスムーズだとは思っていたけど……
そして、ハモを捌くのに必要な道具が二つのテーブルに同じ物が配備されると、涼葉さんと雑喉谷がテーブルの前に立つ。
「手入れの行き届いた道具……流石は金星さんの経営するホテル!」
一目見ただけで道具の状態を把握する涼葉さん。流石と言ったところか。
「私が直接経営している訳ではありませんわ……」
金星さんからツッコミが入る!
相変わらず涼葉さんは話を盛るのが癖のようだ。
「へへっ、両者準備オーケーですかね? それでは……ハモを使ったサボタージュグッドテイストスシバトル……始め!」
下っ端の開始宣言で涼葉さんと雑喉谷が同時に動き出す。
涼葉さんは早速ハモを掴んで捌く感じか。当たり前だけど。
雑喉谷もハモを掴んで捌くようだ。まぁいきなり妨害なんてしてこないか……
「へっ! サボタージュの洗礼だ!」
雑喉谷が腰から何かを取り出す! サブマシンガン!? いや、ソルトガンなのかこれも!?
雑喉谷はハモを捌こうとしている涼葉さんに銃口を向け、躊躇いなくトリガーを引く! 連続する発射音!
「危ない!」
避けてくれ涼葉さん!
そう思った時には涼葉さんの姿はなく、ソルトガンの弾は全て壁に着弾!
「消えた!?」
動揺する雑喉谷!
「兄貴ぃ! う、上だ!」
雑喉谷と同時に上を見る俺とギャラリー!
そこには……肉叩きのハンマーとフライパンをクロスさせて飛びかかる涼葉さんの姿! 怖い!
「うおおおお!?」
雑喉谷がソルトガンを連射! 涼葉さんは全弾フライパンで受け流す!
涼葉さんが一瞬の隙を突いて肉叩きのハンマーを雑喉谷の持つソルトガンに向けて振り下ろす! 雑喉谷は衝撃を逃がせず、ソルトガンはハンマーとテーブルに挟まれる! ソルトガン粉砕!
「ぐわああああ!」
ソルトガンを失った雑喉谷が悶絶!
す、スシバトラーには格闘技のセンスも必要なのか!? 涼葉さんの身体能力は鳥路さんと互角! いや、殺意に関しては涼葉さんの方が上かもしれない!
「……あれ? このままこの人をボコボコにしたら涼葉が絶対に勝つのでは?」
涼葉さんが怖い事を口にする! 雑喉谷も部下もギャラリーも震え上がる!
「ひいいいい!?」
怯える雑喉谷! 涼葉さんの表情はいつもと変わらない! だからこそ怖いのだ!
「す、涼葉さん! ルール的に多分大丈夫なんだけど、色々とやばいからそれは無しで! 美味しいハモの寿司で勝負しよう! ね!」
やばそうなので涼葉さんを必死に止める!
「涼葉や! 山本くんの言う通りだ! これは格闘技ではない! 寿司で勝負するのだ!」
寿司王も涼葉さんを止める! この感じ……寿司王も知らない一面だったようだ。
「やっぱりそうですよね! スシバトルですもんね!」
涼葉さんは雑喉谷を解放し自分のスペースに戻り、ハモの調理を再開する。
鈍器から刃物に持ち替えたのに、なぜか安心して見ていられる手際だ。
「あ、危なかったですわね……」
金星さんが胸を撫で下ろす。いや本当に……
「寿司王さん……その、涼葉さんって本当に普通の学生で普通の寿司職人なんですよね?」
俺はハンカチで冷や汗を拭う寿司王に涼葉さんの職業を一応確認する。
「勿論だとも! ただ……涼葉は梨寿くんと心陽くんのスシバトルを知っているからね……先程の動きは鉄火の梨寿を思い出したよ……」
昔のスシバトルとんでもねぇや……司先生が手加減していたってそういう事?
……涼葉さんから妨害する気配はなさそうだ。雑喉谷も武器を失ったし、こうなったら普通のスシバトルになりそうだ。雑喉谷は警戒しながらハモの調理を始めているし、多分大丈夫だろう。
俺達もどちらが美味いハモの寿司を握れるのか……そこに集中しよう!
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




