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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
163/174

第163話 ゴーストオブスシ③

前回のあらすじ:

黒鷲の所持者、むらさき心陽こはるは黒鷲と共に所在が不明。


◆◆◆


「黒鷲の持ち主が所在不明……?」


 司先生のライバルだった人が黒鷲の持ち主で現在行方知らず……?

 ちょっと情報量が多すぎるぞ?


「司先生は一言もそのようなお話を口にした事は無いと思いますが……山本さん、何か聞いていますか?」


 右手で額を抑えながら金星さんが俺に確認する。


「いや、俺も初耳だよ。寿司同好会のメンバーは誰も知らないんじゃないかな」


「ですわよね……」


 司先生は信用できる大人ではあるけど、過去に何があったか多くは語ろうとしない。寿司桶仮面とか。


「梨寿くんにとって、この話は良い思い出ではない。心陽くんが失踪した事件に大きく関わっているからね」


 寿司王はそう言って、お茶を一口啜った。

 それがさっき話に出た、ある事件なんだな……


「司先生と紫さんの間で何があったんですか?」


 俺は寿司王に事件の詳細を求める。


「スシバトルだよ。梨寿くんが心陽くんを止めるために行ったんだ。黒鷲を手にした心陽くんは……復讐に取り憑かれていた」


「復讐!?」


 ダメだ! どんどん話が深くなっていく! 頭が混乱してきたぞ!


「む、紫さんは誰に復讐しようとされていましたの!?」


 金星さんも動揺しながら寿司王に尋ねる!


「日本寿司罵倒協会……心陽くんのお父さんが、寿司屋を廃業した原因なのだ」


 ここでも寿司罵倒協会かよ!

 寿司王の拳が強く握られる!


「梨寿くんは復讐などで人生を不意にする必要はないと言って、心陽くんとスシバトルを行い……辛くも勝利した。勝負に勝った梨寿くんはもちろん復讐なんて忘れろと心陽くんにお願いをしたのだが……その翌日、心陽くんは姿を消してしまった」


 ……そうか、司先生がスシバトルでは解決できない事があると言っていたのはこれが原因か。スシバトルに勝っても何も変わらなかった……確かに心境が変化するには十分な話である。


「黒鷲も白蛇同様に人を大成させると噂されているがこの件を知っていれば、それが所詮は作り話であるとわかる。黒鷲はたった一晩で優れた寿司職人を二人も奪ったのだから」


 寿司王は窓越しに空を眺めながらそう言って話を締めた。

 重い空気が流れるが、手元の料理から漂う良い匂いが俺を現実へと引き戻してくれた。


「で、でも、紫さんは生きてるんですよね?」


「彼女から定期的に便りが届いているからね……業務的な手紙ではあるが……」


 律儀な人だ。でも、こうして手紙を送るという事は未練があるのかも知れない。

 それでもなお復讐の道に走ってしまった。やりきれない話だ……


 そもそも復讐ってどうするんだ? 紫さんには実体の無い組織である寿司罵倒協会を潰すための策が何かあるのだろうか。そうじゃなきゃ……


「くっくっくっ……話は聞かせてもらったぜ。寿司王のおっさん!」

 

「黒鷲の持ち主の居場所を知っているんだってな! 教えてもらうぜ! 黒鷲の在処を!」


 突然、二人の男が俺達のテーブルに来て声を掛けてきた!

 その柄の悪そうな格好でよくこのホテルに入れたな!?


「君達は誰かね? 見ての通り食事中だ。後にしてくれたまえ」


 寿司王が普段とは違う威厳溢れる口調で男達を牽制する!


「だったらこうするまでよ……この俺とスシバトルをしろ! 寿司王、勅使河原宗十郎!」


 男の一人が周囲に聞こえるような大声でスシバトルを宣言する! ま、まずい!


「おや、スシバトルですか」


「ちょうど退屈していましたし、面白い事になりましたね」


「しかも、あの方は寿司王ではありませんか……これは見逃せませんよ」

 

 上品で騒いだりしないけど、いつものギャラリーだ!

 じわじわと俺達のテーブルに視線が集まる!


「むう……」


 流石の寿司王もこれにはどうしようもないと言った表情!

 というか寿司王って寿司握れるのか!? いや、寿司の王なのだから握れるに決まってるか!


「おひいはまふぁあいふぇをふるひふようもありふぁふぇん」


「涼葉さん、口の中空にしてから喋ってください……」


 何を言ってるか全く聞き取れなかった。


「……んっく……失礼しました。お爺様が相手をするまでもありません。涼葉が相手をしましょう」


 キリッとした表情で涼葉さんは言い直したが、一つ前の動作で台無しである。

 涼葉さんがスシバトルをする流れのようだ……


「へっ、色気も何もねぇ小娘が俺の相手だと? 寿司王も落ちぶれたもんだぜ!」


「あ、兄貴? こいつ、塩一粒の涼葉じゃないですかい? 寿司王の孫で天才と言われてるがきんちょですぜ!」


 塩一粒の話は有名なのか。話を誇張しがちな涼葉さんが自分でその話を口にしないのは意外ではあるけども。


「塩の一粒で何が変わるってんだ。へ、どうせ本当は大人が握った寿司を自分の手柄にしてるに違いねぇ! 寿司を舐めるなよ嬢ちゃん! 力の差と経験した年の差って奴を教えてやるぜ!」


 男はそれでもスシバトルを挑むようだ。確かに俺達も直接涼葉さんが握っている所は見ていない……あんまり状況はよろしく無いけど、涼葉さんの実力を知る良い機会かも知れない。


「早くルールを提示してください。料理が冷めてしまいます」


 涼葉さんがルールの提示を要求! なお涼葉さんのお皿にはほとんど料理は残されていない! お、俺達への配慮だな!


「度胸だけは買ってやるぜ……だが、このルールを聞いていつまでその態度を保てるかな? おい!」


「ヘイ兄貴! 聞いて驚け! ルールは……サボタージュグッドテイストだ! スシバトラーなら……わかるよなぁ!?」


 さ、サボタージュってあの妨害ありのクソルールか!? サブリナさんが一回だけ鳥路さんに仕掛けてきたけど、まさかこのタイミングで!?

 涼葉さん、これを受けるつもりか!? 何をされるかわからないぞ!


「……横文字じゃわかりません! ちゃんと詳しくルールの説明してください!」


「あ、はい」


 涼葉さんはサボタージュを理解していない! まさかの切り返しに子分の男も素に戻る!

 だ、大丈夫なのか涼葉さん!? もしかして、スシバトル初心者なのでは!?

感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。


◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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