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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
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第161話 ゴーストオブスシ①

 鳥路さん不在の神奈川県二日目。調査を依頼したフレべはまだ帰ってきておらず、笹垣姉妹の妹、志苑からの連絡も無い。

 ……俺は二人の問題児からの報告は待つ事しかできないが、ただ待っている訳ではない。


「それにしても、いきなり寿司王に会いたいだなんて……びっくりしましたわよ!」


 金星さんに声を掛けられ、スマホを胸ポケットに仕舞う。


「ごめん。金星さんぐらいしか頼れる人がいなくてさ……」


 俺と金星さんは金星家の専属運転手が運転する高級車に乗って目的地に移動中だ。窓から少し海が見えたけど、泳ぐ予定は無い。


「ですがナイスなタイミングでしてよ! ちょうど今日、勅使河原てしがわら様とお話しする機会がありましたの! 山本さんは運が良いですわね!」


 扇子で口を隠しながら高らかに笑う金星さん。服装は昨日の志苑と違って、大人な雰囲気のおしゃれな服って感じだ。布地を見ただけでお値段が高そうな雰囲気を出している。髪型もなんか気合い入ってるし……後頭部におさげ巻いてる感じ。金星さんには似合っていると思う。


「それで、寿司王と何を話す予定だったの?」


「今後のスシバトルについて、ですわ。競技化に向けて認知度を高めていくためにどうするかを話し合う予定でしたの」


「十分認知度は高まってると思うけど……スシバトルが始まると人が集まってくるし」


 金星さんは扇子をピシャリと閉じた。


「正直、私が思っているよりも早い。元々寿司業界では認知されていたとは言え、私がテコ入れしただけにしては広がりが異常ですわ」


 扇子を片方の手で叩きながら金星さんは語る。


「ごめん。そう言えば、金星さんのテコ入れって……具体的に何をしたの?」


 俺の質問に金星さんは目を丸くする。


「まぁ! てっきり既に視聴されているものかと! 随分とスシバトルにお詳しい雰囲気でしたのに……」


 何も知らない状態で場数を踏んだだけの男である。しかも実際に握っているのは鳥路さんだし。

 金星さんはお高そうなハンドバッグから最新機種のスマホを取り出し、俺に画面を見せてくる。


「動画サイト? スシバトルとは……? うわ、再生数すご! 100万回超えてる!? シメサバキャットチャンネルの比じゃないぞ……」


 動画元のゴールドスター放送局の登録者数は250万人。そりゃ知ってる人も増えるわ……動画の配信日は今年の二月か。

 動画が再生されると、凝った編集でわかりやすくスシバトルが解説されていく。

 ナレーションも金星さんの声ではなくて、声優さんだよなこれ……でもテコ入れの話でこれが出てきたという事は……


「え、この動画って、もしかして金星さんが作ったの?」


「このチャンネルは私のプロデュースですわー! この動画に関しては少し編集のお手伝いはしましたが、後の仕事は全てプロの方のお仕事ですわ!」


「あー……そういう事ね……気合い入ってんなぁ……」


 いくら使ったか興味本位で聞いてはいけない。庶民の俺は額を聞いたら失神してしまうだろうから。あと、規模がデカすぎるせいで金星さん本人に注目が集まっていないのもお見事の一言である。


「昨今のスシバトルブームの火付け役は自負していますが、神奈川だけ浸透が早かったのは気になります。もちろん私がスシバトル部に在籍して、色々やっていたのもありますが……それでも、ですわ」


 鳥路さんが三月早々に巻き込まれていたしなぁ……函館だと八月になって知られてきたって感じだったし。


「金星さんは流行の加速の原因はわかっているの?」


「はっきりとは……しかし日本寿司罵倒協会が何かをしたのではないかと……目的は分かりませんが」


「スシバトル部に話を持ちかけてきたぐらいだし、その可能性はありそうだね。目的は俺も見当付かないけども」


 寿司屋を潰す事で利益を得る連中がスシバトルを流行させて何の旨味があるのだろうか……スシバトルをスムーズに始めるため?

 俺と金星さんは唸りながら考えるも答えは出なかった。


瑠璃子るりこお嬢様。そろそろ目的地でございます」


 運転手さんが渋い声で目的地が近い事を教えてくれた。


「ありがとう六車むぐるま


「……ところで、俺達ってどこに向かってるの? 小田原の方って事ぐらいはわかるんだけど」


「あら、お伝えしていませんでしたか?」


 片手で口を押さえて驚く金星さん。俺の記憶が正しければ教えてもらってない。


「ゴールドスター小田原、ですわ!」


 ……知ってるぞ。ゴールドスター小田原。

 四つ星とかいう知らない単位の超高級ホテルだ!


「ああ、だから金星さんはそんな格好してるんだね……待って、俺、普通の私服なんだけど!? 大丈夫なのこれ!?」


 半袖の薄手のジャケット着てるけどさぁ!


「別にドレスコードが厳しいホテルではありませんわよ? 私も普段着ですし」


「それが!? 普段着!?」


「な、なんですの!? そんな大きい声を出さなくても……これぐらい普通ですわよ!」


 住む世界が……違う!

 助けてくれ志苑……! お前は、庶民派のお金持ちだったんだな……!


 俺が抵抗する暇など当然なく、車は無情にもホテルの入り口の前で止まった。

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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