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スシ=エリ・トリジ〜寿司を愛する少女〜  作者: シャコヤナギ
カースドツインズスシナイヴズ
135/174

第135話 ザメインスシバトラーフロムザラストワン⑥

前回のあらすじ:

鉄火の梨寿(司先生)に勝利した鳥路さん。


◆◆◆


「すごいよ、とりっじ!」


「司先生に勝ちましたわ!」


 鳥路さんの勝利を喜ぶ賀集さんと金星さん。


「やっぱ、鳥路さんはすごいな……」


 俺はそう言いながら録画停止ボタンを押した。

 なんかカメラマンのくせにリアクション取りすぎたかもしれないけど……これで一応フレベの約束は守れたか。


「おめでとう鳥路さん! 目玉のなめろうなんてどこで思いついたの?」


 今回の主な勝因であるマグロの目玉のなめろうの寿司について鳥路さんに尋ねる。


「両親が酒のツマミになめろうを食べているのが悔しくて寿司にした事があって……目玉を丸ごと活用するにはこれが一番だと思った」


「ずいぶん身近な所で生まれたんだね……」


 お酒って美味しいんだろうか。数年後にチャレンジしたいものだ。


「熟成が不完全な部位だからネギトロではなく、なめろうという択を選ぶ度胸……しかも私をほほ裏に誘導させ、大きく異なる寿司をぶつける大胆さ……私が思っていた以上に成長していたのね……私の負けだわ」


 司先生が鳥路さんに賞賛の拍手を送る。裏はなく純粋な評価だと俺は感じた。


「梨寿お姉様……どうして手加減を?」


 涼葉さんが真剣な表情で司先生に質問をぶつける。

 て、手加減!?


「したつもりは無いわ。涼葉は私がどうして手加減をしたと思ったの?」


 司先生は優しく涼葉さんに質問を返す。


「私の知っている鉄火の梨寿はルールの隙を突いて徹底的に相手を叩きのめすようなスタイルだったかと……」


 確かに司先生は相手に立て直す時間を与えなかったり、自分が有利になるように動いていたように見えたけど……涼葉さんが言うレベルの事はしていないと思う。


「格好こそ当時のままですが、梨寿お姉様の今日の戦い方は、まるで鳥路さんを試しているような……そんな気がしました」


 そこは俺も感じた。賀集さんも金星さんもそう思っていたらしく、涼葉さんの言葉に頷く。鳥路さんは司先生の顔を見てから静かに頷いた。

 司先生はゆっくりと顔を窓の方に向け、空を眺めながら語り始める。


「……本気で勝つつもりで来たけど、楽しくなっちゃったのよ。この子はどこまで成長するのか、どんな寿司を握っていくのか……」


 司先生が俺達の方に顔を向ける。


「格好だけじゃスシバトラーに戻れない。私はとっくに教師になっていたのね」


 司先生の笑顔はどこか寂しいような……でも、何かが吹っ切れたよう爽やかな笑顔だと俺は感じた。



◇◇◇



「こ、これが脳天の寿司! なんだこれ!? 大トロ? 中トロ? とにかく凄い!」


「とりっじ! なめろうの寿司おかわり!」


「あ! 涼葉にもください!」


「わかった。マグロのあら汁ができたらすぐ握る」


「司先生、カマトロはまだ余っています?」


「いけるわよ、金星さん」


 スシバトルを終えた寿司同好会+涼葉さんはマグロの頭を処理するために、ささやか……というには豪華な寿司パーティーを開く事にした。

 目の前でスシバトルされて、寿司を食べれなかった俺と賀集さんと金星さんには嬉しい限りである。

 あと、フレベに動画を送ったら画質や音質が悪いとかでウダウダ言ってきたのでスマホの電源を落とした。これが一番あいつに効く。


「あ! 司先生、お金って大丈夫ですか? マグロの頭ってそこそこするんじゃ……」


 改めてスシバトルってお金がかかるよな……今更だけど司先生の財布は大丈夫なのだろうか。大人だから平気かな?


「寿司王のおっさんのお金だから遠慮せず食べなさい。私がスシバトルするって言ったら、喜んでこのマグロの頭を譲ってくれたし」


 す、寿司王の財布だ!

 ああ、でも納得した。昨日の今日でマグロの頭が手に入るのかと思ってたけど、寿司王なら確かになんとかなりそうだ。


「……司先生はどうしてスシバトルを、その、辞めたんですか? それに前にスシバトルの事も好きじゃないって……あ、いや、やっぱり大丈夫です! この場で聞くような事じゃなかったです! すみません!」


 思った事をまた口にしてしまった。ちゃんと状況とかを見て話さないとえらい目に遭うって函館で学んだばかりなのに……


「良いのよ、大した話じゃない。スシバトルじゃ解決出来ない事もあるってわかったら……一瞬でやる気が無くなっただけ。寿司職人でも無いのにいつまでも寿司を握っていられないしね」


 スシバトルで解決できない事の方が多そうだけど、やっぱり何かあったのだろうか。


「……今はスシバトルの事をどう思っていますか?」


 鳥路さんがあら汁の鍋の火を止めて、こちらのテーブルに戻ってきた。

 鳥路さんの言う通り、大事なのは今かもしれない。


「嫌いじゃないわ。技術を競い合う、かつての寿司勝負とほぼ同じ……金星さんのやりたい競技化についても私は賛成よ。ちゃんと伝えられていなかったわね」


「そうなのですね! 安心しましたわ!」


 金星さん的には嬉しい話だろう。

 そして寿司勝負がスシバトルの一つのカテゴリに該当する物なのだとなんとなくわかった。あとは……勝った方が負けた方に言う事を聞かせるといった《《ならわし》》も寿司勝負には無いようだ。昨日の鳥路さんと涼葉さんとの寿司勝負はならわしの話がなかったし。


「司先生、裏ほほのユッケ軍艦の作り方……教えて頂いても良いですか?」


 鳥路さんは司先生の横に立って教えを乞う。


「大したもんじゃ無いわよ……でも、そうね、私にも目玉のなめろうの作り方を教えてくれたら良いわよ?」


「はい! もちろんです!」


 二人は自分が作った寿司を解説しながら作り始める。

 

 その姿は師弟関係……年の離れた姉妹のようにも見えた。



 今は継承戦の事を忘れて、この穏やかな時間を楽しもう。

 俺は……きっと今は、それが一番良い過ごし方だと思ったから。



◇◇◇

ザメインスシバトラーフロムザラストワン おわり

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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