第132話 ザメインスシバトラーフロムザラストワン③
前回のあらすじ:
マグロの頭で二本先取のスシバトル。
一本目は「ほほ肉」を使った寿司に決まった。
◆◆◆
スシバトルの準備が終わり、二つのテーブルに別れて向かい合う鳥路さんと司先生。緊張感が再び走り始める。
「これより、一本目のマグロのほほ肉勝負を始めます! 両者準備はよろしいですね?」
涼葉さんが審査員も兼ねて進行もしてくれるようだ。
俺はスマホのカメラ越しに鳥路さんが頷く所を確認した。
「それでは……始めてください!」
涼葉さんの合図で動き出す二人!
鳥路さんも司先生もほほ肉の塊を寿司ネタサイズに切り分けていき、良さそうな一枚を手に取る!
……鳥路さんを撮りたいけど、司先生の本気を撮った方が良いだろう。
俺がスマホを司先生の方に向けると、まさに握り始めの態勢だった。
ネタの上にシャリを乗せると、そのままネタが上になるように転がす……小手返しだ!
そこから先は……は、速い! 俺の頭の中で動作を確認する暇もなく握り終わっている!
「も、もう終わったの?」
「鳥路さんの早握りよりも上ですわね……」
賀集さんと金星さんも俺と同じ状態のようだ。
「鉄火の梨寿は寿司を小手返しの四手で握ります! しかも所作も速いので雷神と評された事もありますよ!」
涼葉さんが早さの理由と新たな二つ名を教えてくれた。
「速ければ良いというものでもないけどね」
そう言いながらガスバーナーを取り出す司先生。炙りにする感じか!
司先生はもう出来上がりそうだ。鳥路さんはどうだろう?
鳥路さんにカメラを向けるとちょうど握り終えた所のようだ。
そして、同じようにガスバーナーを寿司に向ける。こちらも炙り!
赤いほほ肉が炎によって変色していく。
表面の身が締まることで飾り包丁がはっきりと浮かび上がる。
両者の寿司を見比べるとほぼ同じような出来で、最後にワサビを添える所も同じ!
同じ食材、ほぼ同じ仕上がり……わずかに司先生の方がネタが厚いぐらいでこれで勝敗がつくのだろうか。
「両者の寿司が出来上がったようですね! それでは実食に移ります! まぁ、私だけなんですが……」
マグロのほほ肉……食べた事ないけど、どんな感じなんだろう。
色が濃くて、炙るって事は脂も乗ってるっぽいし、美味いのはほぼ確定だ。
「では、梨寿お姉様の寿司から頂きます!」
涼葉さんは司先生の寿司を手に取り、醤油を少しつけて一口で食べる。
丁寧に味わって食べているようだ。
さて、評価は……
「うん。次に鳥路さんのを頂きましょう」
味の感想がないままお茶を飲んで、鳥路さんの寿司を手に取る涼葉さん。
「え、感想とかは無いの?」
「早くしないと後攻が不利になりかねませんからね、最後にまとめて話しますよ」
涼葉さんは俺の疑問にさっと答えてから鳥路さんの寿司を一口で食べた。
話を盛ったりするし、リアクションが素直だったりとどこかで涼葉さんの事を少し甘く見ていたけど、寿司王に認められるだけあってしっかりしている。
「なるほど。決まりました」
即決!? 二人の寿司のどこに違いがあったんだ!?
「一本目、マグロのほほ肉は……梨寿お姉様の勝ちです!」
な!?
「え!? なんで!?」
「ほぼ同じに見えましたが……」
賀集さんと金星さんも俺と同じ反応。
鳥路さんも何が原因かわからないという感じで結果に驚いている感じだ。
「涼葉、鳥路さんの寿司の何が良くなかったか教えてあげなさい」
司先生は鳥路さんの寿司に欠点がある事を見抜いている!
司先生以外の全員が涼葉さんの次の発言に注目する!
「そ、そんなに睨まなくても……あの、鳥路さんの方は少し火が入りすぎです。ネタが炙る用の厚さじゃなかったのかと」
司先生のネタが厚かったのはそれが理由か! そうか、完全に火を通さず生の部分を残す関係上、厚さが必要になるんだ!
「くっ……確かに炙りに合わせて切り分けていない!」
鳥路さんは拳を握り締め、自身の不手際を認める!
このわずかな差が勝敗を決めてしまうのか!
「さぁ、次に行くわよ。涼葉! 部位選択は私で良いわね!?」
「え? あっ……ええ! 鳥路さんが先攻でしたからね」
司先生は勝利の余韻など不要と言わんばかりに涼葉さんに次の勝負を進めさせる。
これは……鳥路さんが気持ちを切り替える前に次に進める気だ!
「鳥路さん! 次取ろう! 次!」
俺にはこれぐらいしかできない……!
「そうだよ! 次勝てば大丈夫だよ、とりっじ!」
「ここから二本先取するだけですわー!」
賀集さんと金星さんが俺に続いて鳥路さんを応援する。
鳥路さんは呼吸を整え、真っ直ぐ、司先生の目を見て次のお題を待つ! よし、大丈夫そうだ!
「まるでアウェイね」
司先生はそう言いながら不敵に笑った。
強者の余裕を感じる……!
「涼葉が応援しましょうか?」
「いらないわ」
「あ、はい」
涼葉さんの提案に塩対応で返す司先生!
「……次はマグロのカマよ」
司先生はそう言って、マグロの胴体が付いていた側とエラの間の部位を包丁で切り分ける!
「カマ……? カマトロじゃなくて?」
鳥路さんが疑問を口にする。
カマトロ、聞いたことがある。希少部位で大トロより脂乗ってるとかなんとか……
「もちろん含まれてるわよ。どこを使うかは……自分で決めなさい」
カマトロかそうじゃない部分を使うか……司先生は鳥路さんを試しているのか?
それとも涼葉さんの好みを掴む対決?
何にせよ、この勝負は負けられない!
がんばれ……! 鳥路さん!
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