第131話 ザメインスシバトラーフロムザラストワン②
前回のあらすじ:
鉄火の梨寿のエントリーだ!!!
◆◆◆
特攻服のような寿司職人スタイルの司先生に度肝を抜かれてしまったが、実際は真面目な状況だ。
「さぁ、鳥路さん、準備をしなさい。そのために包丁を持参するように連絡をしたのよ。それとも戦わずに私に勝ちを譲るのかしら?」
授業中でも寿司同好会の顧問でもない、司先生の別の顔!
見た目に負けない闘志が溢れている!
「……なぜこのような真似を?」
空気に飲まれていた鳥路さんもペースを取り戻したようだ。
「子供が本気のスシバトルをするもんじゃない。言葉で言ってもわからないと思うから……私が見せてあげるわ。本物のスシバトルを!」
空気がひりつく! 何だこのプレッシャーは!
「流石は梨寿お姉様……! 物凄い寿司圧! 鳥路さんも負けていませんが……!」
「涼葉さん! 寿司圧って何!?」
「寿司圧は寿司圧ですよ! 勉強不足ですね!」
くそ、聞いた俺が馬鹿だった。とにかく二人の寿司圧がぶつかってこんな空気になってるんだな!?
「イナリスカウトと直接寿司で戦えるチャンス……先生と言えど譲れない! やります、スシバトルを……!」
鳥路さんの瞳に闘志の火が灯る!
イナリスカウトがスシバトラーである事が前提だけど、寿司王の話っぷりだと恐らく継承戦に奴は必ず出てくる! 相手が実力者なら……より強い人が寿司同好会から出るべきだ。先程までそれは鳥路さんしかいなかったけど、今は……立ち向かうべき相手がいる!
「スシバトルをするのですね……! 司先生と鳥路さんが……!」
「わ、私達は……見守る事しかできないのかな?」
興奮気味の金星さんと心配そうに二人を見つめる賀集さん。
正直、俺達三人は二人の戦いを見守るしかない。
「スシバトルって聞こえましたけど! どなたか撮影してくださいね!」
ああ、フレベもいた。この勝負を撮り忘れたら何されるかわかったもんじゃない。
「フレベ! 俺が撮影しておくから!」
「よろしく頼みますよ! アオイ!」
鳥路さんのスマホと話している俺を見て涼葉さんが不思議そうに見ているけど、これについての説明は後だ!
「……止める人はいないようね。涼葉! あなたが審査員よ!」
「えっ!? 涼葉がですか!? 他の方は!?」
「第三者がジャッジしないとダメでしょ、あなた一人で十分よ。そして舌だけで判定を下しなさい! 余計な私情を挟んだら……わかるわね?」
「わ、わかりました! 審査員、やらせて頂きます!」
司先生が涼葉さんを連れてきて理由はこれか。だとすると、このスシバトルに向けて司先生は前もって準備をしている可能性が高い。鳥路さんが不利、もしくは司先生が有利な勝負になるはず。
「ルールは……マグロの頭を使った三本勝負。二本先取した者の勝ち、良いわね?」
「わかりました」
司先生の提示したルールを承諾する鳥路さん。マグロの頭?
「ま、マグロは梨寿お姉様の得意中の得意の分野! 本気ですよ!」
涼葉さんが興奮しながら教えてくれた。やはり……得意分野で勝負を!
司先生が家庭科室の冷蔵庫の扉を開けると、中にはマグロの頭が鎮座していた。かなりデカいな……
「その大きさは……本鮪ですわね。しかも鮮度も良い!」
「ですよね! 美味しそうです!」
金星さんと涼葉さんがマグロの頭で盛り上がっている。
俺と賀集さんはその大きな目に驚いていて味の想像がついていない。
「鳥路さん、先手は譲るわ。好きな部位を選びなさい。もっとも、どの部位でも私は負けないけれども」
司先生が余裕を見せる。相当な自信だ!
これだけ大きいと頭だけでも部位が選べるよなぁ……どこが美味いんだろう。
「……ほほ肉」
鳥路さんが少し考えてから、ほほ肉を選択!
どんな食材かわからないけど……鳥路さんなら何か考えがあるのだろう。
「ほほ肉ね、切り取るから準備をしていなさい」
鳥路さんは頷き、鞄からドラゴンエプロンと愛用包丁であるスッシーフィンを取り出す。ちなみにスッシーフィンは鳥路さんが勝手に付けた名前でちょっとお高い市販されている包丁である。
その裏では司先生はマグロの頭を大きいまな板の上に置き、マグロの頬あたりの皮を削ぎ落とし、ほほ肉と思われる部位を切り出していく。
……なんか軽々やってるけど、皮とか鱗とか凄い硬そうだし、素人目でもそんなにサクサクできるものではないと思う。
「梨寿お姉様はマグロ包丁を一人で振り回し、マグロを解体した事があると聞いた事があります……! これぐらいは朝飯前ですよ!」
「あの長い刀みたいな包丁を一人でですの!?」
「うわぁ、すごそう」
女子三人が司先生の勇姿を見て盛り上がっている。昨日初めて会ったばかりなのに仲良いな。
ただ、涼葉さんの話はなぁ……
「司先生、作業中にすみません。今の涼葉さんのお話本当ですか?」
「そんなわけないでしょ。マグロ包丁って二人とかで使う奴よ? 確かに本マグロの解体はした事あるけども……」
やっぱり。でも解体の経験があるから、今こうしてスムーズに捌いているんだな。
「涼葉さんはアレですね……話を盛りますわね?」
「もー! 信じちゃったよ!」
「す、すみません……でも梨寿お姉様ならできると思って……」
涼葉さんを優しく小突く金星さんと賀集さん。本当仲良いな。
あと刀を振り回す司先生は今の姿なら想像できてしまう。
いつの間にセットされていた炊飯器から炊き上がりの音が鳴る!
なんか良い匂いしてると思ったんだよな!
「先生、シャリは?」
「赤酢を持ってきている。鳥路さんに任せるわ」
「わかりました」
勝負は既に始まっているけど、スシバトルの準備は協力して進めるんだな。
二人が本気で敵対していないのがわかって安心はするのだけど、俺にはこの時間が嵐の前の静けさのようにも感じてしまった。
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




