第112話 スシロボメカマシン④
前回のあらすじ:
鳥路さんとIKASUSHIのスシバトルが始まってしまった。
◆◆◆
「勝負はイカの寿司! 審査員はその辺の通行人を三人ほど捕まえましょう!」
「……わかった」
いつものように始まるスシバトル。唯一違う所は鳥路さんの相手がAIが操作するロボットだという事。この異様な光景にツッコミを入れる人はおらず、北海道もスシバトルの熱にやられているのかと頭が痛くなってきた。
「じゃあ、山本さんの後ろの三人で」
突然のスシバトルに関わらず、手慣れた感じ……むしろ雑に審査員を選定する鳴海さん。選ばれた審査員三人は全員俺と同じ高校生っぽい。
「鳴海さんはこういう状況に慣れてたりするんですか?」
一応確認のため鳴海さん本人に聞いてみた。
「どうだろう。まぁ、この程度なら別に良いかなぁってぐらい。悪い事では無いみたいだし」
講義の時に言っていた世話係が文字通りそのままの意味だったことに気付いた。
「あと色々データも取れそうだしね」
大学生って逞しいんだなぁ……
でも鳴海さんが特別そうで合って欲しいと言う気持ちはある。
「イカは何を使えば良い?」
余所見をしていたら鳥路さんがIKASUSHIの隣に並んで、スシバトルを始めようとしていた。
「当然、一杯を捌く所からです!」
IKASUSHIはアームを起用に使って、クーラーボックスから冷えたイカを二杯取り出す。見た目はアレだけど人間みたいな自由度で動くなこいつ。イカは多分スルメイカっぽい。ヤリイカは冬だって鳥路さんが言ってた気がするし。
「ナル! 包丁を出してください! 鳥路さんにも予備の奴を!」
IKASUSHIに言われて、鞄から二本の包丁を取り出す鳴海さん。
白色の刃を見るにどちらもセラミック製のようだ。
鳴海さんは鳥路さんに一本を手渡すと、もう一本をIKASUSHIのアームの一つに取り付ける。
……まさかと思うけど、IKASUSHIが自分で捌くのか?
人間の鳥路さんは一旦包丁を置き、スルメイカの頭と足を掴んで、胴からハラワタを引き抜く。鳥路さんがスルメイカの胴に包丁を入れると、よく見る開かれた状態のスルメイカが出来上がりだ。その手際の良さにギャラリーも感嘆の声を漏らす。
「ハラワタの鮮度が良い……良いスルメイカ」
鳥路さんは引き抜いたハラワタと頭と足をプラ容器に入れクーラーボックスに戻すと、スルメイカの胴を水の張ったボウルに入れて洗い始める。
「ナル? この人本当に素人ですか?」
その様子を見ていたIKASUSHIが鳴海さんに疑問をぶつける。
「自分でそう言ってたじゃん」
呆れながら返す鳴海さん。
普段からこんな感じで会話してる雰囲気を感じる。
「素人にしては随分と手練のようですが……イカを捌く速度が遅いですね!」
十分速いと思ったけど……これ以上の速さで捌けるのかIKAUSHI?
IKASUSHIはアームでスルメイカの胴を掴むと、別のアームで頭と手足を掴みハラワタを引き抜く。しれっとやってるけど、これすごい技術力なんじゃ……
IKASUSHIは掴んだ胴部分をさらに別のアームで触れると、そのアームが突如回転をし、瞬く間にスルメイカの皮を除去してしまった。
隣でキッチンペーパーを使って皮を剥いていた鳥路さんがその様子を見て目を丸くする。
鳥路さん以上に速い! このロボット……本物だ!
IKASUSHIは剥かれたスルメイカの胴をまな板の上に起き、包丁を握ったアームを使い、鳥路さんと同じように開かれた状態にする。
鳥路さんが少し遅れて皮を剥き終えると飾り包丁を入れていく。格子状……松笠切り? とにかくそんな感じで切れ込みを入れていく。
「アニサキス対策のためにその過程が必要な人間は大変ですね!」
不敵に笑う……ような感じで話しかけてきたIKASUSHIを無視する鳥路さん。作業に集中しているようだ。不慣れな道具を使っているし、色々繊細な工程っぽいので仕方がないと思う。
「……」
皮を剥いだIKASUSHIのアームの先がパカっと開くと、細かい作業をするためのピンセットのような小さいアームが出てきた。さらにIKAUSHIの目が青白く光り、スルメイカに照射される。ブラックライトか?
……宇宙人が解剖実験しているような光景に見えてきた。
「寄生虫の類を100%除去すれば、飾り包丁は不要なのです!」
IKASUSHIは小さなアームをミシンの針のように突き刺し、俺の目には見えていなかった寄生虫を取り除く。工業製品のような精密さだ!
除去が完了するとIKASUSHIは寿司ネタ用の大きさにイカを切り分けて行く。
綺麗な飾り包丁が入った鳥路さんのイカとほぼ無傷で違う意味で綺麗なIKASUSHIのイカ。ここにきて両者の寿司に差が大きく出た。
「素人の嬢ちゃんもやべーけどよ! IKASUSHIもすげぇぞ!」
「函館市民でもここまで綺麗に処理できる人間はいないわ!」
「なんてレベルの高いスシバトルなんだ!」
両者の腕前にギャラリーも湧く。相手がロボットと思って舐めていた。
IKASUSHIは……本気で寿司を作ろうとしている!
もしかしたら鳥路さんと同格、いやそれ以上の腕前なのか!?
一人と一体はほぼ同時に握りの体制に入っていく!
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




