変人
「じゃ、また帰りの時」
さも当然のことと言わんばかりの口調でそう言われ、僕は訂正するつもりで返事をする。
「いや、一人で帰るわ」
「えー。まあいいや。まったねー!」
マコトは手を振って、吸い込まれるように隣の教室へ入った。
僕もそれと同時に自分の教室へと入り、席に座った。
―それにしても、レイナ、大丈夫かな……
と、少し曇りがかった空を眺めながら思っていたら、机の上に丁寧な所作で手紙が置かれた。今時珍しい赤いロウソクで留めるタイプの手紙だ。
「後で見ておけ」
ああ、アイツだ。伊龍・ブレイク・紅陽。高三にもなって未だに厨二病を発症している痛い奴。たまにこうして「それ」っぽいことをしてくる。僕は彼のやっていることに付き合ってあげているんだ。
「どうしたの? 紅陽」
「今宵、私の長きに渡る戦いが次の段階へと進む。静寂に包まれた場で手紙を開くように。ここでは見るなよ」
いつも思うけど、こいつ恥ずかしくないのかな? あー、ほら、見られてるぞ〜、僕の同級生に。だが、そうやって自分を曲げない姿には少し尊敬の念を抱いている自分がいた。
「はいはい、分かったよ。」
でも、流石に僕も恥ずかしくなってくる。こんな人間とつるんでいたら、僕までそっち側の人間だと思われそうじゃないか。しばらく距離を置こうかな。
そう思って紅陽のいた所を見てみると彼はもういなかった。
「はい、じゃあ出席とるぞー。―」
今見てもいいよな?「ここでは見るな」って、多分ただ格好つけてるだけだし。そう思って机の下で手紙を開け、中を見た。
『イギリス時刻十八時に北緯―゜東経―゜に来い』
何だよこの書き方! 面倒だな……。そう思いながらも、グーグルアースで手早く調べてみると、って、ここ、僕ん家の近くの公園じゃないか。アイツに僕の家を教えたことはなかったはずだけど、偶然かな?
「おい、サトル! 下見て何をしている!」
「あっ、すみません、ちょっと眠くて。」
「スマホを触っているのは分かっていたからな」
同級生の視線が痛い。悪いのは僕だが、理不尽さも同時に感じていた。
―黒板の方を向いているのになんで僕が下を向いているのが分かるんだ!
それから僕は灰色の学校生活に身を沈め、何事もなく学校を終えて自宅へ向かった。




