第82話 思わぬ再会
「ふう~ん。なんだ、詰まんないの。それじゃあ、面白いもの見せてあげる」
そういうと彼女は片手に持っていたスマホをいじり始める。何かを探しているように人差し指で画面をスクロールしている。
「あ、あったあった。ほらこれ見てよ」
「や、やめて!」
どうやら先に画面が見えていた松原が大声で叫んで止めようとする。
だがあと少し遅かった。彼女が阻止しようとしていた画面は孝也の目の前に差し出された。
そこには一枚の女の子の写真が写っていた。
「この写真がどうかしたのか?」
「え~、この写真の子誰だと思う? 聞いて驚くと思うよ~。なんとね、中学の時の由紀なんだよ! めっちゃウケるよね~。もう全然違うじゃん? この陰湿な感じとか微妙にデブなところとか、チョー面白いよね。あはははっ」
確かにここに写っている女の子は前髪を伸ばして目深でさらに眼鏡をかけていて表情はよくわからないし周りに写っているクラスの子と比べればふくよかな体形をしている。
ただそれだけだ。
「何が?」
孝也は笑顔で聞く。すると孝也の返事が予想外だったらしく、笑いながら聞き返してきた。
「え? 何がって、わかんないの? あなただって高校の同級生なんでしょ? 昔の由紀と今の由紀違い過ぎて面白いじゃん」
いかにも同調して欲しさが見て取れる。だが孝也はこれを見て思ったことは一つ。
「悪いな。どうにも君との笑いの価値観が違うらしい。俺はそれを見ても面白いとは感じないな」
孝也の言葉を聞いた瞬間に松原の友人と言っていた女子は先ほどまでの笑顔とは打って変わって冷めた顔になり大きくため息を吐いた。
「なにそれ、つまんな。乗ってこないとかないわ。マジで空気読めよ」
それどころか怒りを露わにしたようにして言葉に棘を生やす。急すぎて孝也は少々驚き、少しだけいつもより目を見開いていた。
「もういいや。根暗同士仲良くね~」
それだけを言い残して去っていった。
いなくなってからしばらく二人の間には沈黙があったが、孝也は何もなかったかのようにいつも通りの雰囲気で呟いた。
「嵐みたいな人だったな」
「ほんと、ごめんね。嫌な思いさせて……」
松原は孝也に頭を下げて謝ってくるが、彼女の態度は謝罪よりもどちらかと言えば過去の自分の姿を知られたことの方がショックだったように見える。
落ち込んでいる女子になんて声をかければいいのか……。孝也は人を慰めるなんて器用なことをやったことがなかった。
松原は相当堪えるものがあったらしく、いつもの明るい社交性を失い項垂れている。
しかし晴翔からの連絡はいまだ来ず、合流したとしてもこんな状態の松原を置いていく、という選択もしづらい。対して知りもしない人だったら気にしないのだが、松原は友人だ。
真夏の太陽が照り付ける中、孝也はただ黙って彼女の隣で座っていた。
「よお~!! 悪りぃ、悪りぃ遅くなった!」
沈黙を打ち破る男の声が広場に響く。青空に向けていた視線を声のした方に向けると晴翔が汗だくでこっちに手を振りながら走ってきた。
「遅い。てめぇ、結局30分も遅刻してんじゃねえか」
孝也は自分の腕時計を見せて晴翔に文句を言う。
「だから悪りぃって……。ってあれ? 松原さんじゃん、なにしてんの~」
額から汗を垂れ流し、息を切らしながら謝罪する。そして孝也の隣で項垂れている松原を見て先ほどの状況を知らない晴翔が遠慮なしに聞いている。
「えっ、あ、私も友達と待ち合わせしてるんだ。ってあれ、来れなくなったって連絡入ってた……しかも15分も前に……」
松原は自分の友人からの連絡が入っていたことに気づいておらず、スマホを見て肩を落としてガッカリしていた。
「じゃあじゃあ、これから孝也とカラオケとかゲーセンとか行くんだけど松原さんも一緒に行かない?」
晴翔の何も知らない無邪気な誘いに松原は顔をぱあッと輝かせた。
「いいの? 急に私も参加して?」
「もちろん、もちろん! いいよな、孝也?」
ほとんど決まっているのになぜ確認してくる。それに今は元気そうに振舞っているが、そこにはいつもの明るさと社交性のようなものが感じられない。気分転換にはいいかもな。
「まあ、構わない。お前と二人きりのほうが疲れそうだからな。松原も巻き添えくらってくれ」
孝也は首を縦に振った後に冗談を言う。
「うん! ありがと!」
「なんだよ! それ」
松原は嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、晴翔は文句を言ってくる。
第82話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
今週から週2投稿を再開したいと思います〜! 12月分と年末年始しっかり休めたのでこれから頑張っていきますのでよろしくお願いいたします〜
これからも楽しんで読んでもらえたら嬉しいです!
それではまた次回、お会いしましょう




