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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第81話 待ち合わせ場所に来た相手

 指定された駅前西口の噴水前に到着した。晴翔を探すがあたりを見回してもそれらしき人物はどこにも見当たらない。どうやらまだ着いていないらしい。

 一切屋根がないこの場所は太陽光がダイレクトに肌を焼いていく。

 「呼んだ張本人が来てないってどういうことだよ……」

 近くにあったベンチに座り、額から流れ出る汗を拭う。時計を見るとちょうど10時30分を示していた。

まあ一時間後って言ってたし、厳密にいえばまだ一時間は立ってない。晴翔が時間通りに来たこともないし気長に待つしかないな。

 そう思っているとちょろちょろとしか出ていなかった水が勢いよく噴き出してきた。霧になった水が風に乗って肌に当たる。冷たくて心地よく、夏のいやな暑さを少し忘れることができた。

「あれ? 孝也くんじゃん。こんなところでなにしてるの?」

 突然手を振りながら目の前に現れた少女に声をかけられた。逆光で目を細めて顔を歪める。顔を見ようとしたが陰っており一瞬よく見えなかった。ただ、声で何となく誰だか見当はついていたので孝也は勘で返事をした。

 「人を待ってるんだよ。松原こそどうしたんだ?」

 「私も待ち合わせだよ~。ねえ、となり座ってもいいかな?」

 「別に構わないぞ」

 「ありがと!」

 そういうと松原は隣に座る。人が三人は座れるようなベンチなのだが、なぜか松原と肩が当たりそうなくらい近い。

 「なあ、なんか近くないか?」

 「え!? そ、そうかな~……」

 そっぽを向いて口笛を吹いている。というか吹こうとしているだけで音はなっていない。空気が漏れる音がしているだけだ。

 どうにも何かを誤魔化しているように見えるが言いたくないならしつこく問い詰める気もないので気にするのをやめた。

 だがそれを抜きにしてもせっかく隣に座ったことで顔を見て話せるようになったというのに松原は一向にこちらを見ようとしない。暑さのせいで彼女の耳は真っ赤になっている。

 「……あ、そんなことよりも孝也くんは誰と待ち合わせしてるの?」

 「誰って晴翔だよ。あの野郎、自分で集合時間決めたくせに一向に来やしない」

 「そうなんだ~。ちなみに集合時間って何時なの?」

 「あと3分でその時間だ。まあ電話しながら今から一時間後みたいな決め方したから厳密な時間は指定されてない」

 「あはは……」

 なぜか松原はから笑いをするだけだった。

 松原との会話は晴翔が来るまでの間のちょうどいい暇つぶしになった。松原と二人で他愛のない会話をしたのは久しぶりな気がする。元々彼女とあまり会話をした記憶もないので意外と楽しかった。

 そう思っていると松原がこちらの顔を覗くように見てくる。

 「孝也くんは夏休みなんか予定ってあるの?」

 何かあったか考えるように青空を眺める。がしかし孝也の答えは一つだった。

 「いや特に何も。強いて言えば毎年晴翔と遙に誘われて海と山に行くぐらいだな」

 「へえ~、そうなんだ。そっか、毎年言ってるんだ! いいね、楽しそうで」

 まるで他人事のように言う松原を孝也はキョトンとした顔で平然と言う。

 「今年はお前と星乃も来るんだろ。予定は何にも決まってないがな」

 そう言われた松原は一瞬、目を丸くして瞬かせ手から嬉しそうにはにかむ。

 「そっか……。そうだったね! いや~楽しみだよ!」

 松原が声を弾ませてワクワクしていると孝也たちの前が陰る。どうやら誰かが立ち止まったようだ。

 「もしかして由紀? わあ~チョー久しぶりじゃん!」

 「えっ……。あ、うん。ひ、久しぶり、だね……」

 松原は相手の顔を、声を聞いた瞬間に気まずそうに返事をしていた。

 本日二回目となる、人に声をかけられた。しかし、今回は孝也ではなく松原の方だった。彼女は交友関係も広いしいろんな人にも声を掛けられるだろう。

 自分は知らない人だし、松原も友達と話すことがあるだろうと気を遣った孝也は陰のように存在を消し松原からできるだけ離れるようにベンチの端へと移動した。

 「ていうか由紀さ、めっちゃ変わったじゃん」

 「そ、そうかな……?」

 離れたにもかかわらず、相手の声が大きいせいで会話の内容が聞こえてくる。

 そもそも松原だって友達と待ち合わせだって言っていたし、その人かもしれない。と孝也はそう思った。声をかけてきた人物が言った言葉をよく聞いていなかったせいで。

 肘掛に頬杖をつき、極力他人のふりをする。別に気になっているわけではないが、チラッと松原の方を見る。

 楽しそうに会話をしているかと思えばどうにもそんな雰囲気ではない。声をかけてきた方の女子は笑顔で話しけているが、松原は気まずそうだがそれを相手に悟られないように無理に笑っているように見えた。

 どうにも見たところ待ち合わせの友人ではないようだ。

 「あまり楽しそうに見えないな」

 松原の困ったような表情を見ていてたら思わず口から洩れてしまった。不幸なことにそれが聞こえてしまっていたらしい。

 「あっれ~。もしかして由紀に彼氏かなんかですか~?」

 面白いものを見つけたようにニヤニヤと嫌な顔を浮かべながら孝也の方に近づいてきた。この顔は嫌いだ。この顔をする奴とかかわると必ず面倒なことになる。

 「いや、違う。同じ高校で同じクラスなだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 極力会話をしないように端的に否定し、先に質問されそうなことを答え会話が続かないように潰す。

 「ふう~ん。なんだ、詰まんないの。それじゃあ、面白いもの見せてあげる」

第81話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

明けましておめでとうございます! 

すっごい今更ですが……今年も宜しくお願いします! 更新も今日から本格的に再開できればなーと思っていますのでよろしくお願いします〜

それではまた次回、お会いしましょう

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