第80話 夏休みの過ごし方
母さんと久しぶりに二人で朝食を取る。
最近の学校のはどうだったのか、彼女はできたのかなど連絡すらとっていなかったからか母からの質問攻めにあった。そもそもなぜ連絡をしてこなかったのか怒られた。ただいちいち報告することが面倒くさいという理由で返していなかったなんて言ったらもっと怒られそうだし、父さんが知りでもしたら余計面倒になると思い、孝也は理由に関しては口を閉ざした。
食べ終えた二人分の食器を洗うと孝也は部屋に戻ろうと母に一声かけた。
「かあさん。俺、宿題やるから部屋に戻ってるよ」
「わかったわ。お母さんもお風呂行ってくるわ~」
そういうと母さんは鼻歌を歌いながらバスルームに行った。
部屋に戻り、時計を見ると8時30分を示していた。孝也は机に向かい、夏休みの宿題を机に広げる。高校の宿題といってもさほど難しくはない。一教科ずづの量はかなり多いが……。唯一の救いは小学校の時のように自由研究のようなものがないことだろう。
そして孝也の集中力は異常なものだった。3,4時間は休憩なしで勉強ができてしまう。それも音楽とか集中力を上げる何かをしているわけでもない。ただいったん休憩したり、人に邪魔されるとすぐに切れてしまう。
スマホをマナーモードにして机の端のほうに置く。
それからペンを持って勉強を始めた。ただそう長くは続かなかった。一時間を待たずしてスマホが激しく振動して誰かからの着信を知らせる。
画面を見ると晴翔からだった。どうせ大した用事なわけがないが一応出ることにした。
『なんだ? 迷惑電話なら他所でやってくれ』
『開口一発目がそれか!? ひどいな~』
『用がないなら切るぞ』
『まあ待て。どうせ夏休み初日から宿題でもしてたんだろ。そんなつまらない夏休みを過ごしている君を外に連れ出そうと思ってな』
声しか聞こえていないはずなのに晴翔のにやけ顔が頭に浮かんでくる。
『いや別に遠慮する。このくそ暑い中外に出たいとは思わないし』
『まあそう言うなって。カラオケでも行かないか? いやならゲーセンでもいいし。とにかく遊ぼうぜ!!』
『それこそ遙と遊べばいいだろ』
遙の話題を出した瞬間に電話越しでも向こう側の空気が一瞬で冷めたのが分かった。
『はるちゃんこれから一週間おばあちゃんちに行くらしくて今いないんだよ~……』
そういうことか、と声には出さずに納得した。だが彼の場合、別に孝也じゃなくてもいいはずだ。クラスの同級生からも好感度は高いし、晴翔が誘えば大概の奴は来るだろう。
『なんだ俺なんだ? ほかにも友達って呼べるような奴らはたくさんいるだろ』
『そうなんだけどよ~。なんやかんやで孝也と一緒に遊んでる時が一番面白いんだよな。孝也なら俺が行き過ぎた時のストッパーになってくれるし』
そういわれて不覚にも頬が緩んでいた。孝也自身が気が付いていたかどうかは定かではないが。
『はあ……。わかったよ。どこに集合すればいいんだ?』
『いいのか!? よっしゃ~! じゃあ一時間後に駅前に集合な』
晴翔はそういうと電話を切ってしまった。時計を見ると9時30分を少し過ぎたところだった。
駅前と言われても駅前の西口なのか東口なのか、いったいどこに行けばいいのか何も教えてくれなかった。頭を掻いて晴翔のテキトーさ加減に懊悩していると一件のメッセージが入った。
『悪りぃ、悪りぃ。集合場所は駅前西口の噴水広場前な!!』
よろしく! というスタンプも送られてて来た。孝也はため息を吐きつつもスタンプを見て笑いながら外に出る準備を始めた。
大体孝也の家から駅まで50分ほどかかるのですぐに家を出なければならない。着替えを終えた孝也は一階のリビングに行く。
ちょうどソファの上で母さんが薄着に棒付きのアイスを食べていた。
「母さん。俺出かけてくる」
「わかったわ~。彼女とデート?」
「違うわ。友達と遊んでくる」
「友達出来たのね。お母さん、うれしいわ~」
さすがに母親でもその言い方はひどくないか、と思ったが時間がないので気にしないことにした。
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けていくのよ~。あとあまり帰りは遅くならないようにね」
「わかってる」
孝也は靴を履いて玄関を出る。
鬱陶しいほど強い太陽の光が肌をジリジリと焼いていく。暑さに耐えながらも孝也は指定された集合場所まで早歩きでも向かうのだった。
第80話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
年が明ける前ギリギリに更新できました!
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それではまた次回、お会いしましょう




