第79話 夏休み初日に起きたこと
一学期終業式の翌日、当たり前だが夏休みが始まった。
染み付いた生活リズムがすぐに変わることはなく、夏休みだというのに普段通り、朝の6時に起きてしまった。カーテン越しから強い光がでも伝わってくる日の出。
ベッドから降りてカーテンを開けると目が細くなるくらい、一層眩しい朝焼けが窓から差し込む。
自室にいてもすることがないので1階に降りる。
「ふわぁ、早く起き過ぎたな……」
欠伸をしながらボソッとひとり呟く。
リビングにあるソファに座ろうと腰を落とすとソファとは違う感触何かによっていつもよりも高い位置で止まったと同時に人の呻き声が聞こえてきた。
「うっ……」
「うわっ、なんだ!?」
さすが驚いてすぐに立ち上がる。
ソファを確認するとそこにはスーツ姿の女性が眠っている。いや、今まさに目をこすりながら体を起こしている。そしてそれは見覚えのある人物だった。透き通るような綺麗な黒髪で乳白色の肌に整った顔立ち。誰が見ても美人と多分、言うであろう人物は寝ている間に口の中に入ったであろう横髪を外している。
「かあ、さん……なのか? なんでソファで寝てるんだ?」
「んん~。あら、おはよう」
体を伸ばしながら朝の挨拶をしてくる。それは孝也の母親だった。
普段は父とともに海外に出張しており、滅多に家にいることはない。夏休みなどの長期休みにこうしてたまに帰っては来るのだがいつもは何かしらの連絡が来ていた。
「連絡もなしに急に帰ってくるなんて驚いたな」
「ふふふ、そうね今年はお父さんと相談して孝也を驚かせてみようとなったの」
楽しそうに母は笑う。久しぶりに会うが、相変わらずどこか子供っぽいところは健在だ。
「成る程。それで俺を驚かせようとソファで寝ていたわけか」
「ええっと……それは……」
どこか気まずそうに頬を搔きながら母はどもってしまう。
「実は帰ってきて朝ごはんでも作って驚かせる、までが計画だったんだけど、疲れちゃって家に着いたらソファで寝ちゃってたの。それで孝也に座られて起きたの」
「その、座ったことに関してはごめんなさい。ただほんとに気が付かなかったんだ」
座られたことは気が付いてたんだ……と思いながら素直に謝る。まあ、普段家にいない人がソファで寝てるなんて誰が思うんだ。
「それで父さんは?」
話を変えるために孝也は周りを見ながら母に聞く。
さすがに別の場所に隠れているような感じはしない。そもそも父さんの性格上、隠れるという行為自体ができなさそうだが。
「お父さんはまだ仕事が残ってて……一週間後くらいには帰ってくると思うの」
申し訳なさそうに、肩を落としてガッカリし眉尻を下げながら母はそう告げる。
別に孝也は何とも思っていなかった。なんなら普段一人に慣れているから家に誰かがいると落ち着かなくなってしまう。
母さんが肩を落としているのは父さんを愛しているから。それはこの二人を見た誰もが確実に口をそろえて言うことだろう。父も母もびっくりするぐらい仲が良い。お互いをちゃんと愛し合っているのがよくわかる。
孝也はそのことを重々承知していたから思わず、ポロっと口から言葉が出てしまった。それもかなり素っ気ない口調で。
「寂しいなら父さんと一緒に帰ってくればよかったのに」
「でも、久しぶりに孝也にも会いたかったし……」
言ってしまったことを後悔した。母さんがこんなにも悲しそうな顔をするとは思わなかった。
「ごめん。母さんだけでも先に帰ってきてくれてうれしいよ。改めておかえり」
「ええ、ただいま!」
機嫌を取り戻した母さんは笑顔で返事をした。
第79話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
お久しぶりです! 約1ヶ月以上更新していませんでした……。何かと毎週、県外へと用事があり移動時間に書こうと思ったら寝てました。
年末に向けてちゃんと書いて更新していきますのでよろしくお願いします!
それではまた次回、お会いしましょう




