第78話 終業式
夏休みにどこに行くか、というどうでもいいことが決まった翌日。朝から生徒達が体育館に集められる。毎学期恒例の終業式だ。ステージの上に立ち、一礼をする校長に視線が集まっている。
普段は制服を着崩している生徒(主に晴翔や東海林など)も身嗜みを整えている。
「才穎高校の皆さん、おはようございます。校長の小笠原吉宗です。長く感じた一学期が本日で終わりをむかえます。生徒の皆さんは一学期を振り返ってみてどうでしたか? …………」
校長の長きにわたるつまらない話を欠伸をしながら立って聞く。これほど退屈な時間は人生でもなかなかないのでは? と孝也は思う。
眼だけを動かして周りを見ると孝也を同じように欠伸をしている人が何人かいる。それ以上に立ったまま寝ている人、前にいる人の背中に文字を書いて遊んでいる人など、どうにかして暇潰していた。そうこうしているうちに校長の無駄に長い話が終わった。毎年思うがどうしてこんなにも話が長いのか、考えていると誰だか分からない生徒の表彰が始まった。
自分には関係のないことしかない孝也は夏休みをどうやって過ごそうか高い天井を眺めながら考える。そして約1時間30分ほどが経ちようやく終業式が終わった。
「やっと終わったぁ!」
「あと少しで夏休みだな!!」
教室に戻るあいだの廊下で地獄から解放された生徒達はこの後待っている天国に胸を躍らせていた。しかしその楽しみも束の間のことだ。
教室に戻り、席に着くと担任がプラスチック製のカゴに入っている『何か』を持って教壇に来る。だがクラスメイトは夏休みのことで頭がいっぱいのようで担任に気付かず賑やかな雰囲気が教室の中に充満していた。
「おい、静かにしろ。全くお前達はどうしてそんなにも落ち着きがないんだ……」
一喝したあとに呆れた様子で頭を抱えて呟く。一応、彼女の一声で教室は静まり返ってはいた。
先生も大変そうだなと思いながら、頬杖をつきぼーっと眺める。
「これから一学期の通知表を返すからな。名簿順に取りに来てくれ」
カゴの中のものを取り出しながら言う。どうやらあれの中に入っているのは通知表らしい。
工場の流れ作業のように淡々と進んでいく。孝也も受け取り一学期成績を念のために確認するが一年の頃と大した変動もなかった。
まあ、テスト順位が変わってないから成績も変わらないのは当たり前か。
通知表を返し終えた担任は教壇に両手を置き、真面目な顔をする。
「いいか。夏休みだからと言ってハメを外しすぎるなよ。来年は受験生なんだからな」
「分かってます〜」
「せんせーい、心配しすぎです〜」
クラスの何人かが笑いながら言う。だがいつもは率先していた東海林はあの事があってからあまり前に出てくることはなくなった。
「まあお前達は大丈夫だと思っているが毎年何かしらの問題を起こす生徒が出ているからな。釘は刺しておくから。言っておくがくれぐれも問題は起こすなよ? こっちも対応が面倒なんだ」
「先生、本音が漏れてますよ」
その一言でクラスには笑いが起きている。先生もフッと軽く笑っている。
「せいぜい高校2年生の夏休みは楽しんでくれ。また夏休み明けにみんなで会おう」
先生がクールに微笑みながら言う。この人もどこか嬉しそうに見える。
そして終業式が終わり、夏休みになる。
靴を履き替え、校門前に出る。夏を象徴する蝉の声が鳴り響き、青空その奥には入道雲が空高く聳え立っていた。
第78話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
更新がこんな夜中ですみません。11月が忙し過ぎてあまり更新できないと思うのでよろしくお願いします。
今月は一気見の月にしようと思います。
それではまた次回、お会いしましょう




