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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第77話 海と山

 遙が図書館の出入り禁止を言い渡された翌日の放課後。いつも通りの5人はファミレスに来ていた。図書館が駄目ならと松原が提案し、それに賛成した3人が孝也を強制的に連れてきたのだった。

 そのせいか、孝也はいつもより不機嫌な顔をしていた。まあいつも不機嫌そうな表情だが……。

 ドリンクバーを注文したあと、遙が笑いながら茶化してくる。

 「まあまあそんな怖い顔しないで〜」

 「そうだぞ、孝也。お前はただでさえ怖い顔してるんだからな」

 目の前に座っている晴翔が腕を組んで首を縦に振る。

 「うるさい。その怖い顔にさせたのはお前たちだろ」

 「あはは……」

 外方を向いて拗ねた子供のようにイジける孝也に苦笑いするしかなかった。

 「そろそろ機嫌直して、ね? 孝也くん」

 「私たちも無理矢理連れてきたことは謝ります。お詫びになるか分かりませんが……」

 「お待たせしました。チョコレートパフェです」

 星乃が何かを言いかけた直後に店員の人が席に来る。手に持っているものを見て星乃と松原が嬉しそうに顔を見合わせている。どうやらタイミングよく注文したものがきたらしい。

 品物を置いて店員が捌ける。

 星乃の前に置かれたパフェを静かに孝也の前に移動させる。

 「これ三河さんにです」

 「ほんとごめんね」

 そう言ってチョコレートパフェを差し出してくる。

 「まあ……今日はもういい。だが次はないぞ」

 明らかに声のトーンが上がっていたが、態度がそのままだったことに4人は失笑してしまった。笑われている張本人はその気付かずに受け取ったパフェを食い始める。

 「それじゃあ夏休みの計画立てよっか!」

 計画を立てる段階でテンションが上がっている遙。ストローでコーラを飲みながら彼女は声を弾ませながら言う。

 「やっぱり海に行きたいよねー」

 それを聞いた晴翔はコーラを飲もうとしていた手が止める。コップを強めに置き、笑顔で遙を見ながら口を開いた。

 「おっと、はるちゃん。先に行くのは山だよね?」

 「何言ってるのはるくん? もちろん海に決まってるじゃん」

 ずーっと同じ笑顔で返事をする遙だが、語気が強かった。

 一歩も引く気がない遙と晴翔。次第に口論が激しくなり始める。喧嘩といってもお互いに山と海のいいところを主張し合っているだけだ。この2人の器用なところは周りの客に迷惑にならないように声は荒げずにやっているということだ。

 しかし、いくら迷惑にならないように気をつけているとはいえ少なからず気づく者もいる。そんな人達から見ればカップルが喧嘩をしているようにしか見えないだろう。

 同じ席に座っている孝也は我関せず、といった感じでパフェを食べている。星乃と松原もこれを毎年やっていたと孝也から聞いてので2人を止めに入ることをやめて2人で空になったコップにジュースを入れに席を立った。

 「星乃さんは海派だったもん!」

 「それを言うなら松原さんは山派だよ!」

 2人がいないことをいいことに遙が星乃の名前を出すとすかさず晴翔も松原の名前を出して負けていないことを示す。

 「それならもう」

 「残りの1人に決めてもらうしかないよな」

 見つめ合っていた2人の視線はちょうどパフェを食べ終えてペーパーナプキンで口を拭いている孝也に向けられた。

 「孝也!」

 「たかちゃん!」

 「「……せーのっ、海と山どっちが先に行きたい?」」

 わざわざ声を揃えた2人に孝也は呆れながら呟いた。

 「そんなハッピーバースデイみたいな言い方で聞かれてもな」

 コップに入ったメロンソーダを一口飲んでいると2人は真剣な顔になった。

 「今はそんなふざけてる場合じゃないの! 海と山どっちが好きか。それだけだよ!」

 「そうだぞ孝也。これは世界を真っ二つに分ける、永遠に議論される問題なんだぞ」

 俺からしたらその話題にそこまで熱くなれるお前たち2人の方がふざけているんじゃいないかと思うんだが。これを言ったらさらに怒られそうなので口には出さない。きのこ、たけのこ論争並にどうでもいい。

 毎年同じ質問をされている孝也はうんざりしていた。テキトーに言おうか悩んでいるとジュースを取りに行っていた星乃と松原が戻ってくる。 

 「大丈夫ですか、三河さん」

 疲れ切った顔をしている孝也を見て心配した星乃が声をかける。

 「ん? ああ、問題ない。この2人にうんざりしてただけだ。ったく毎年毎年同じこと聞きやがって……」

 「あはは、ぜんぜん大丈夫そうじゃないね」

 未だに言い争っている2人と孝也を見ながら空笑いしながら松原が呟く。

 「三河さん三河さん。昨年はどちらを先に行ったんですか?」

 チョンチョンと肩を突き、顔を向けると星乃が訪ねてきた。

 「去年は山だったな」

 「それはどうやって決めたんですか?」

 「確か晴翔から事前にお菓子をもらってな。それで山って言っただけだ」

 「賄賂じゃん……」

 話を聞いていた松原の口から本音が溢れている。

 星乃は孝也の話を聞いて何かを思いついたように手を叩いて注目を自分に集める。

 「お二人に提案があります。三河さんから聞いた話だと昨年は山を先に行ったんですよね?」

 星乃の問いに2人は頷く。

 「そうだよ。はるくんがたかちゃんを買収しちゃうから」

 「言い方でが悪いよ。作戦って言ってほしいな」

 「はるくんはずっこいんだよー」

 今度は別のことで本当に喧嘩しそうな雰囲気が漂う。そのことを察知した星乃がすぐに脱線した話を元に戻す。

 「はい、まだ私の話は終わってません。提案というのは昨年は山だったのなら今年は海に。今年が海なら来年は山、というように交互にすればいいんじゃないでしょうか?」

 星乃の提案を聞いて最初に口を開いたのは孝也だった。

 「確かにそうすればよかったな。なんで思いつかなかったんだ……」

 賛成と同時になぜ最初からそうしなかったのか心底落ち込んでいた。

 「さすがだよ〜、しずくちゃん! 私もその意見にさんせーい」

 松原が星乃の両手をぎゅっと指を絡めて握り、なぜか少し興奮しながら褒めている。

 遙が口の端を吊り上げて笑う。

 「それじゃあ今年は海からだね!」

 遙が拳を掲げて宣言する。晴翔は少し不満げだったが、仕方ないという感じだった。

 これでようやく長年に渡って孝也を苦しめた論争に終止符が打たれた。

 窓越しに空をみると空が黄昏ていた。

第77話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

金曜日に更新すると言っておきながら更新せずにすみませんでした!

実は草津温泉に行っていたました。もちろんこの恋物語に活かすための取材でもあります。

いいところでした。お酒で『ほしのしずく』というものが売っていました!! まだ買える年齢ではないので買えなかったので次回は買いに行きたいですね〜〜

それではまた次回、お会いしましょう

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