第71話 勝利宣言
土日でしっかりと休み、月曜日が来た。
朝から天気が悪く、暗澹とした空が広がっている。
憂鬱な気分になるのは人の性といっても過言ではないだろう。まるで自分の心の中を体現しているような空だ。
ここにも月曜日の気怠さを学校まで持ち運んだものがいた。教室の机に突っ伏している男、そう三河孝也だ。
休み明けの学校が怠いというのもあるが、それ以上に嫌なのはテスト返しの方だった。
いやこれだと語弊がある。テストの返却が別に嫌なわけではない。絶対に突っかかってくる奴がいる。それがわかっているのが一番面倒だった。
「なんでこんな面倒なことになったんだろうな……」
1人で呟くが答えを教えてくれる人はいない。諦めのため息を吐き、考えても答えが出ないことに気がついた孝也は朝の時間を自堕落に過ごすのであった。
※ ※ ※
「全部返ってきたね〜」
「いやー全教科赤点回避できたー!」
昼休み、全ての教科が返却され安心しきった顔をしながら2人は話しかけてきた。
自前の弁当を食べている最中だった孝也は箸を止める。
「よかったな。俺は飯食ってるから星乃に感謝しに行ってこい」
飯は静かに食べたい。そう思った孝也は2人を遠ざけるために星乃のところへと誘導した。本音を言えば、星乃が1番2人を教えていたのだ。彼女に礼を言った方がいいだろう。
「そうする! はるくん行こ!」
「あ、うん。行こっか」
惚けた顔の晴翔の手を掴み、そのまま引っ張って2人は教室を出て行った。
再び静かになり、途中だった弁当を食い進める。周りがうるさくなかった分、ゆっくりと食べ終わることができた。
しばらく、窓越しに分厚い雲のかかった空を眺めていると誰かが孝也の机を叩いた。急にされたことだったので肩を震わせて驚いてしまった。
昼の平穏を邪魔するのは誰だ? と思いながら顔を上げて邪魔した人物の顔を見る。そこには如何にも馬鹿にしたような表情の東海林が立っていた。
「なんだ? 静かにして欲しいんだが?」
「ちょっと顔かせ」
人を見下したような目で見てくる。不快だ。こんなやつに呼び出されても返答は決まっている。もちろん、NOだ。
「え、嫌ですけど」
孝也の言葉を聞いた東海林は顔を少し顰めて語気を強める。多分、脅しているつもりなのだろう。
「いいから来いよ。まあ、どうせお前の負けだろうがな」
「はあ……。わかった。行けばいいんだろ」
よく憶測だけでそこまで自信が持てるものだ。そう思いながら孝也は先行している東海林の後ろをついて行く。
連れていかれたのは反対側校舎の空き教室。中に入るとしばらく人が来ていなかったのか、机と椅子が積まれており埃っぽささえ感じた。
「それでこんな人がいないところに呼び出してなんだよ? テストの結果なら公正に人がいる場所で公開したほうがいいんじゃないか?」
「うるせぇな。お前のそのスカした顔がムカつくんだよ!」
「そんな大声出さなくてもいいだろ。発情期の動物じゃないんだから。それで何のために呼び出したんだって聞いてるんだけど?」
少々時間を無駄にしてきている。孝也も苛立ち始め、右足を揺らし始めている。
孝也の苛立ちに気付いた様子がない東海林はしたり顔をしながら言う。
「お前に勝利宣言をするためだ!」
「はあ?」
あまりにも予想外かつふざけたことを堂々と言う東海林に呆れた声が漏れてしまった。
「どうした、驚いてそんなことしか言えないか!」
「いや、なんかもうどうでもいいや。別に勝利宣言とか勝手にしてもらっていいんで。それじゃ」
孝也は頭を押さえながら教室を出て行った。後ろで東海林がなんか言っていたが、もはや聞こえてはこなかった。1度だけ肩を掴まれたが無理矢理振り解いてきた。
本当に時間の無駄だった。苛立ってしょうがないが、何かに当たるのはよくないだろう。ここは我慢我慢。
教室に戻ると晴翔と遙に松原、そしてなぜか星乃がいた。
「あ、たかちゃん。どこに行ってたの〜?」
「東海林に呼び出されてた」
無意識だったが不機嫌な口調だったらしい。言ったことと口調を聞いて4人は納得していた。
椅子を乱雑に引き、座る。
気がつけば暗澹の空にかかる分厚い雲から大粒の雫が無数に降り注いでいた。
第71話目を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
更新が遅れてしまい申し訳ございません。
今回、作者の私が言うのもなんですが、実に無駄な回です。書きながらいるか? とも思ったんですが孝也くんの苛立ちレベルを上げた状態で結果発表させたかったので一応書きました。
それではまた次回、お会いしましょう




